【視点】米国はデフォルトを「金融兵器」として使用するのか、それともこの事態を平和裡に終わらせるのか

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【視点】米国はデフォルトを「金融兵器」として使用するのか、それともこの事態を平和裡に終わらせるのか - Sputnik 日本, 1920, 29.05.2023
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米国は6月1日にも、債務の支払いを履行できなくなるデフォルトに陥る「Xデー」を迎える恐れがある。5月22日、米国のジャネット・イエレン財務長官は、もし議会が債務の上限を引き上げるか適用を停止しなければ、債務を支払うための資金が枯渇すると改めて警告した。一方、米国のジョー・バイデン大統領はG7広島サミットを総括した記者会見で、デフォルトに陥る可能性はないと言明した。
米国の国債の規模は法によって制限されており、現在の上限は31兆4000億ドルである。この上限を引き上げることができるのは議会であるが、今年、この問題は共和党と民主党の取引のテーマとなった。共和党が多数を占める下院は、歳出削減を条件に、債務上限の引き上げに同意するとしている。とりわけ、電気自動車の販売や太陽光パネルの設置に対する税優遇や学生ローンの減免措置にかかる費用の削減などを求めている。民主党にとって、そのような条件は、2024年の大統領選で勝利するには受け入れ難いものである。
「スプートニク」は、「米国のデフォルトの脅威」と題された円卓会議に参加した専門家たちに、この問題についてお話を伺い、また今後どのような展開になるのか分析した。
高等経済学院の教授で政治学者のドミトリー・エフスタフィエフ氏は、デフォルトに陥るような経済的な理由はないと指摘している。

「米国の経済に、国債の上限引き上げを阻害するような理由はありません。あるのは政治的な理由です。国債の上限引き上げに関する協議における共和党と民主党の取引は、下院の大半を占める共和党がバイデン政権を影から引っ張り出すというものです。なぜなら近年、経済問題の大半が議会との協議を行うことなく、米政府がこっそり決定され、不法に下されてきたとすら言えるからです。共和党は、バイデン政権、とりわけ、財務省、国務省、国防省を米国の憲法を違反しているとして叩いているのです。

米国がデフォルトに陥る可能性は7〜8%くらいと見ていますが、完全に否定はしません。なぜなら、政治的緊張が高まるなか、デフォルトを、米国の主な競争国の金融危機を煽る金融兵器として利用することができるからです。そして現在は、それを行うための絶好の時です。戦争がすべての債務を帳消しにしたように、グローバルな軍事政治的緊張の高まりを背景に、すべての当事国が新たな地形学的、地政学的構成を作り出そうとするときよりも、これを遥かに容易に、また合法的に行うことができるのです」。

ドミトリー・エフスタフィエフ氏
政治学者
米議会 - Sputnik 日本, 1920, 28.05.2023
米下院議長、デフォルト回避に向けてホワイトハウスと原則合意と発表
一方、ロシア政府付属金融大学の経済理論学部のウラジーミル・スカルキン准教授は、理論的に米国はデフォルトを他の国々に影響を与えるために利用することができると指摘する。

「31兆4000億ドルという高い上限があるにもかかわらず、対外債務は7兆ドルしかありません。残りは国内の国内の債券保有者です。またデフォルトに陥る期限とされる6月1日がきても、すべての債務を瞬時に支払わなければならないということではありません。技術的にこのプロセスは1ヶ月かけて行われます。債務の支払い期日は11日に分散しており、債務額は合わせて1兆円で、その利息の額が136億ドルとなっています。

しかし支払いができるところとできないところがあるのです。そこで、いくつかの国はこのデフォルトの犠牲者になる可能性があります。それは米国が地政学的影響を与えたいと考えている国々です。指摘しておきたいことは、1年前に米国は初めて、凍結されていたロシア国債をデフォルトに陥らせたということです。ロシアを相手にこれを試してみて、米国は今、このデフォルトという方法を、他の国に圧力をかけるための手段として使うことができると理解したのです」。

ウラジーミル・スカルキン氏
准教授
バイデン米大統領 - Sputnik 日本, 1920, 23.05.2023
バイデン大統領の無策が米国をデフォルトに陥らせる=米下院議長
さらに、経済学者のミハイル・べリャエフ氏は、米国にとって重要なのは、米国経済の安定性に疑問を抱かせるようなことにならないようにすることだとの見解を示している。

「もしデフォルトに陥るようなことがあれば、米国は借入しにくくなります。なぜなら、投資の安定性と絶対性に疑問が出てくるからです。そうなれば、投資者は米国だけでなく、中国やアラブなど、その他の債券にも資金を投入するようになります。ですから、米国にとって重要なのは、米経済や米国債の安定性に疑問を抱かせないようにすることです。

わたしがデフォルトの可能性が低いと考える理由は、これを回避するための方法がいくらでもあるからです。まず、公的債務の効力が問われてはならないとする憲法修正第14条を発動することができます。第二に、連邦準備制度(FRB)は何の問題もなく、財政収支を倍増し、すべての対外債務を償還し、この危機に終止符を打つことができるのです」。

ミハイル・べリャエフ氏
経済学者の
日本から帰国したバイデン大統領は、5月22日、ケビン・マッカーシー下院議長と協議を実施したが、上限引き上げに関して合意することはできなかった。しかし、両者ともに依然、楽観的な見方を示している。マッカーシー議長は、合意に達するまでバイデン大統領と毎日、話し合うことになるだろうとも述べている。
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