【解説】北朝鮮の技術革新は戦争の行方を変えるか?

© 写真 : KCNA朝鮮戦争休戦70年記念パレードでお披露目となった北朝鮮の新型ドローン
朝鮮戦争休戦70年記念パレードでお披露目となった北朝鮮の新型ドローン - Sputnik 日本, 1920, 23.08.2023
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2023年7月末に平壌で行われた朝鮮戦争休戦70周年記念パレードでは、最新の軍事装備が披露された。近年のパレードでは、ほぼ毎回サプライズがあったが、今年は、北朝鮮の軍産複合体が目覚しい発展を遂げていることが特にはっきりと見られ、「セトビョル4(Saetbyol-4)」と「セトビョル9(Saetbyol-9)」という2機の新型無人航空機と、「ヘイル2(Haeil-2)」という新型水中ドローンがお目見えした。

技術的には日本を爆撃できる

北朝鮮の無人航空機は米国のモデルをベースにしていることはすぐわかる。セトビョル4は「MQ-4(グローバルホーク)」であり、セトビョル9は「MQ-9(リーパー)」である。北朝鮮の機体は米国のプロトタイプに非常に近いことから、北朝鮮の設計者が非常に綿密に研究し、かなりの部分までコピーしたことは間違いない。
研究対象にされたサンプルはイランの戦利品であった可能性が高い。2018年11月、イスラム革命防衛隊の航空宇宙軍司令官アミール=アリ・ハジザデ准将は、イランがMQ-9リーパーを含む米国の戦利品ドローンを数機所有していることを明かしていた。無人機を米軍とその同盟国はイラク、シリア、アフガニスタン、イエメンで広範囲に使用していた。具体的にどこで鹵獲されたのかは、イラン側は明らかにしていない。
2019年2月、すぐさまイランは米国の無人機から制御とデータを傍受する方法を学んだ。そして2019年6月には、イランはホルムズ海峡上空で「MQ-4C(トライトン)」(米国側の主張ではMQ-4A)を撃墜した。この無人機は極めて希少で、MQ-4Aの製造台数はわずか4機のみ、MQ-4Cも5機しか造られていなかった。イランが墜落した機体の残骸を海から引き揚げたのは明らかだ。
© 写真 : US Air Force / Staff Sgt. Brian Ferguson

米製無人機「 RQ-9(リーパー)」

米製無人機「 RQ-9(リーパー)」 - Sputnik 日本
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米製無人機「 RQ-9(リーパー)」

© 写真 : U.S. Air Force/Bobbi Zapka

米製無人機「 RQ-4(グローバルホーク)」

米製無人機「 RQ-4(グローバルホーク)」 - Sputnik 日本
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米製無人機「 RQ-4(グローバルホーク)」

© 写真 : KCNA

こちらは北朝鮮のセトビョル9だが、米国のリーパーに酷似している

こちらは北朝鮮のセトビョル9だが、米国のリーパーに酷似している - Sputnik 日本
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こちらは北朝鮮のセトビョル9だが、米国のリーパーに酷似している

© 写真 : KCNA

グローバルホークに酷似したセトビョル4の飛行

グローバルホークに酷似したセトビョル4の飛行 - Sputnik 日本
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グローバルホークに酷似したセトビョル4の飛行

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米製無人機「 RQ-9(リーパー)」

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米製無人機「 RQ-4(グローバルホーク)」

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こちらは北朝鮮のセトビョル9だが、米国のリーパーに酷似している

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グローバルホークに酷似したセトビョル4の飛行

イランは北朝鮮と、軍事・技術開発、各種兵器や軍事装備の供給において、長い間、実りある協力関係を築いてきた。そのため、イランの指導者たちは、北朝鮮のパートナーに自分たちの戦利品をよく知ってもらうことが得策だと考えた。イラン側が交換条件として何を要求したかは伝えられていない。もしかしたら、大陸間弾道ミサイルの開発・生産支援や、ウラン濃縮用遠心分離機の製造支援かもしれない。しかし、これは後日明らかになるだろう。
このように、北朝鮮はイランの戦利品を徹底的に研究し、自分たちの装置を作ることができた。米軍需メーカーのノースロップ・グラマンの機密と最新の開発は北朝鮮に知られることとなった。
これらの機器の戦闘能力は、その特性が米国のプロトタイプに近いと仮定した場合、非常に高い。セトビョル4の航続距離は約2万2000~2万5000キロ、戦闘半径は最大12万5000キロで、最大900キロの積荷を搭載できる。このような無人機は、北朝鮮からニュージーランドやメキシコに到達し、戻ってくることができる。と言うことは、今や西太平洋全域が北朝鮮の無人航空機には到達可能なゾーンになったことになる。セトビョル4はレーダーや光学システムで偵察することもできるし、誘導爆弾や核爆弾を投下することもできる。
それに比べると、セトビョル9の能力は航続距離は1900キロ、戦闘半径は950キロと控えめだ。ただし搭載重量は1700キロともっと大きい。最大8発のAGM-114ヘルファイア・レーダー誘導ミサイルを搭載する。パレードの映像から判断すると、これらのミサイルに似たものがセトビョル9の翼の下に装備されている。元山(ウォンサン)市近郊の飛行場からこのような無人航空機が発射された場合、佐世保、広島、大阪、そして名古屋にも到達し、戻ってくることができる。このように、北朝鮮の航空局は技術的には日本の領土に命中精度の高い爆弾やミサイルを打ち込む能力を持っている。
北朝鮮はパレードでいくつかのマシーンを一挙に公開した。おそらくは、改造や装備を多様化させ、一大シリーズをつくろうとするのだろう。こうした無人機は、航空戦闘における北朝鮮の重大な弱点のかなりの部分を取り除くであろう。
魚雷 - Sputnik 日本, 1920, 03.04.2023
【視点】北朝鮮の「津波」が日米の艦隊を破壊する?

大規模水中攻撃のための装備

無人機に比べ、水中攻撃艇ヘイル2の方は、事情は一筋縄ではない。2023年3月、「ヘイル1」と称する2隻の潜水艇のテストが行われた。この実験は成功し、北朝鮮が長距離潜水艇を保有していることを示した。
ところが、写真をよく見ると、ヘイル2の側面は完全に平滑である。攻撃用魚雷には、魚雷を整備するための機器にアクセスする多数のハッチがあり、魚雷の固定部分と、ハッチの固定する多数のネジが見え、ケーブルやホースを接続するためのコネクタがある。したがって、もしヘイル2が攻撃可能な潜水艇であったなら、良質の写真では少なくとも操舵装置、エンジン、バッテリーコンパートメントにアクセスするためのハッチがはっきりと見えるはずである。
ところがヘイル2の写真にはそのようなものは何も写っていないので、公開されたのはまだ開発段階にある新兵器の実物大の模型ではないかと推測できる。この模型はおそらく曳航試験用に作られたのだろう。まず、魚雷が水中で高速でどのように動作するか、どのように安定しているか、どのように制御されているかを明らかにする必要があるが、これは今、開発段階にあるわけだ。
© 写真 : KCNA北朝鮮メディアが公開したヘイル2の実験の画像
Тестирование подводного северокорейского беспилотника Haeil-2 - Sputnik 日本, 1920, 22.08.2023
北朝鮮メディアが公開したヘイル2の実験の画像
ヘイル1がソ連の65-76魚雷(全長11.3メートル、直径0.65メートル)をベースにしたとされるのに対し、ヘイル2は明らかにサイズが大きく、全長約16メートル、直径1.3メートルもある。前者の内部容積が3.84立方メートルだったのに対し、後者は21.2立方メートルと5.5倍である。ヘイル2は大きさと排水量では、4トンの爆薬を搭載することができた、第二次世界大戦時の英国のX級小型潜水艦に近づいている。内部容積が大きいため、より強力なエンジンを搭載し、燃料備蓄を増やし、空母のような超大型艦の船底をずたずたに切り裂くことのできる弾頭を搭載することができる。
比較的小型のヘイル1が試験で約600キロを航行したとすれば、改良型のヘイル2の航続距離は2000~2500キロに達する可能性がある。もしそうなら、この潜水艇は朝鮮半島に隣接するすべての海域の敵艦を攻撃することができる。
水中ドローンは、水上艦船や潜水艦よりもはるかに安価だ。最も重要なことは、訓練に長い時間を要する乗組員を必要としないことである。したがって、朝鮮人民海軍は、戦争になった場合に敵の海軍部隊に大規模な攻撃を仕掛けるために、このような水中ドローンを最大で数百台まで生産することが想定される。日本の海上自衛隊は有事の際に、対潜水艦部隊が小型で高速の潜水艇による複数の攻撃を撃退する準備ができていないという非常に困難な状況に陥る恐れがある。このような機器は潜水艦よりも探知されにくく、破壊するのも難しい。部分的に損傷しても、目標に追いつくことができる。日本の艦船は潜水艦のほうが、北朝鮮の水中ドローンよりも前にさっさと破壊されてしまうかもしれない。
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