【解説】チャレンジャー2戦車はいかにして破壊されたか

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チャレンジャー2戦車 - Sputnik 日本, 1920, 13.09.2023
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2023年9月4日、ザポロジエの南東66キロにあるラボティーノ村付近での戦闘で、ロシア軍は英国製戦車チャレンジャー2を破壊した。これは確かな事実である。戦車が被弾した瞬間のロシアの無人偵察機によるビデオ記録があるが、明るい閃光と高い煙柱が上がる様子が映し出され、その後に、燃えた戦車の様子と、また、その間近にいる、ウクライナの兵士の姿も確認されている。
発表によれば、チャレンジャー2を破壊したのは、コルネットD1対戦車ミサイルの一撃だった。駆逐戦車は、ウクライナのチャレンジャー2が標的を探す瞬間を待ち、左旋回した砲塔の真下にミサイルを命中させた。弾薬は爆発し、乗員は死亡、戦車は炎上した。
これは、西側社会にとっては衝撃的なニュースだった。ほとんど無敵だと思われていた420万ポンド(7億7300万円)の戦車は、初めての戦闘で破壊された。
ザポロジエ州での戦闘で、露軍が別のチャレンジャー2戦車を撃墜したという報告もある。
チャレンジャー2 - Sputnik 日本, 1920, 06.09.2023
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装甲に優位性なし

ロシアの戦車兵と駆逐戦車は、独戦車レオパルド2をはじめとする多くの西側装甲車を破壊してきた結果、欧米の戦車には特に優位性はないという結論に達した。どんな戦車も攻撃で破壊することができる。
英国戦車が破壊された後、ウクライナに米国製戦車M1A1エイブラムスが与えられれば、それも破壊されるだろうという確信が生まれた。
西側の戦車は長い間、防御性が高く、ほぼ無敵だと考えられてきた。しかし、ウクライナでの戦争経験は、それが実際のことではなく宣伝であったことを示している。これらの戦車の装甲は不均一だ。最も防御力が高いのは、車体前部と砲塔だ。これらの部分は、2層の装甲鋼鉄のパッケージで保護されており、その間にファイバーグラスまたはセラミックの装甲が挿入されている。この装甲は徹甲弾や成形炸薬弾に耐えるように設計されている。比較のためにロシアの装甲を説明すると、使われている複合装甲は、異なるタイプの弾薬に対して防御力を発揮する従来の鋼鉄装甲と同等となるよう計算され、作られている。例えば、独製レオパルト2A5の装甲を例にとると、砲塔前面の貫通防御の為の装甲の厚さは徹甲弾で900ミリ、成形炸薬弾では1300ミリ、車体前面は徹甲弾に対して600ミリ、成形炸薬弾に対して700ミリだ。英国製チャレンジャー2は、砲塔前面は徹甲弾に対して800ミリ、成形炸薬弾に対して1200ミリ、車体前面は徹甲弾に対して700ミリとなっている。
しかし砲塔と車体の側面と後部は防御力が低い。西側の戦車は非常に重く、設計者は重量を減らすために装甲を減らさなければならない。チャレンジャー2の総重量は73トン、M1A1エイブラムスは66.8トン、レオパルト2は66.5トン。それに比べてロシアの戦車T-72B3の重量は41トンである。砲塔の前面は徹甲弾に対して800ミリ、成形炸薬弾に対して1200ミリ、車体の前面は徹甲弾に対して750ミリ、成形炸薬弾に対して1100ミリとなっている。
以上から、西側の戦車は防御面で大きな優位性を持っていない。加えて、装甲の薄い脆弱な箇所も十分ある。多くの戦いを経てきたロシアの戦車は、側面や車尾への砲撃に対する防御性がより高い。
英国制戦車はイラクで戦い、2度被弾している。2006年8月、イラク南部のアル・アマラの戦闘で、イラクの戦闘機が露軍のRPG‐29弾を発射し、チャレンジャー2の車体前面下部を貫通、乗員が負傷した。2007年4月、イラクのバスラでは、戦車の下面に成形炸薬弾が撃ち込まれ、乗員が負傷した。どちらの場合も戦車は破壊はされなかった。しかし、英国防省は戦車乗員に対する謝罪を迫られた。
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戦車内で大爆発

ロシアの戦車が米国、英国、ドイツの戦車と違うのは、自動装填装置を備えている点である。この機械装置は40キロの砲弾を約2秒で砲に装填することができるため、乗員は車長、運転手、砲手の3人で構成される。日本の90式戦車や10式戦車にも自動装填装置があり、乗員は3人である。
西側戦車には自動装填装置がないため、砲の装填は手動で行われている。乗員は車長、運転手、砲手、装填手の4人で構成される。このような事情から、戦車の容積は大きくなり、より多くの装甲が必要となり、戦車は重くなる。
装填手は戦車の大きな弱点である。戦闘中、乗員は火薬のガスで中毒になり、装甲への砲撃で聴覚を失う。装填手は43キロの砲弾を弾薬庫から取り出し、その砲弾を持って移動し、砲に装填しなければならない。これらはすべて、非常に迅速に行わなければならない。遅れは敵に射撃と命中のチャンスを与える。英国製チャレンジャー2は8秒で1発撃つことができるが、ロシアの戦車はその間に2発、あるいは3発撃つ。8秒というのは射撃練習場でのことだ。戦闘中に疲れ、火薬のガスに毒され、聴覚を失った装填手が銃を再装填する速度は、乗員が死に接近するスピードよりはるかに遅い。
装填手の利便性を高めるため、英国製チャレンジャー2の砲弾は砲塔後部に配置されている。約30個の砲弾が密集して積み重ねられている。砲塔のこの部分の装甲は正面部分よりもはるかに薄い。一方、コルネットD1のようなロシアの対戦車ミサイルは、正面装甲の、最高1300ミリの通常の鋼鉄装甲を貫通するようにつくられている。そのため、ウクライナのチャレンジャー2が砲塔を横向きにしたとき、ロシアの駆逐戦車は戦車の最も脆い部分に命中した。ミサイルの爆風は砲塔後部の薄い装甲を簡単に突破し、砲弾の火薬に引火した。戦車内部で300キロを超える強力な火薬が爆発し、ウクライナの戦車兵は悲鳴を上げる暇さえなかった。灰と焼けた骨の跡がほんの少し残っただけだった。
戦車「レオパルト2」 - Sputnik 日本, 1920, 14.06.2023
【視点】炎上する「レオパルト」
ある意味、チャレンジャー2は自己宣伝と特異な戦争経験の犠牲者になったといえる。英国の戦車がイラクで相手にした敵は、近代的な戦車も近代的な対戦車ミサイルも持っていなかったからだ。だが、実際、武装した敵を相手にした戦いでは、チャレンジャー2は生き残ることはできなかった。
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