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【解説】ハマスの迷宮 イスラエル軍の悪夢となる全長500キロの地下トンネルとは
【解説】ハマスの迷宮 イスラエル軍の悪夢となる全長500キロの地下トンネルとは
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... 2023年10月20日, Sputnik 日本
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イスラエル・パレスチナの紛争激化
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市街戦はハマスに有利イスラエルが本格的な地上作戦に踏み切れない理由としては、ハマス側がイスラエル人の人質をとっていること、諸外国からの民間人犠牲に対する懸念、北部で国境を接するレバノンの武装組織ヒズボラの本格参戦を招くリスクなど、様々な政治的、戦略的要因があげられている。だが純軍事的な理由としては、ガザに密集する3万人ともいわれるハマスの戦闘員を相手に、イスラエル軍が戦場での優位性を確保できない恐れからくる軍指導部のためらいがあるとされる。すでにガザ地区ではイスラエルの空爆によって瓦礫の山となっており、待伏せや狙撃に最適な要塞と化している。米現代戦争研究所が2021年にまとめた報告書によると、市街戦では基本的に防御側が有利といわれる。言い換えれば、市街戦の条件下では、突撃銃や手榴弾、対戦車砲などの比較的軽装備のハマス側と、重装甲戦車、航空戦力、砲兵戦力などの洗練された部隊を持つイスラエル軍が均衡状態になる可能性がある。ハマス側はただ指を加えてイスラエル軍の進撃を見るわけではなく、地下や瓦礫の山に隠れて空爆や砲撃を生き延び、次の日の戦いに備えることができる。しかも、ハマス側には自分たちのホームグラウンドという利点もある。ガザの「地下鉄」ハマスは40年近くにわたり、ガザ地区各地でトンネル採掘を続けてきた。ハマスや武装組織は広大なトンネル網を使い、厳重に要塞化されたイスラエルの国境をかいくぐり、武器や物資の密輸を行ってきた。このトンネル網は戦闘員や装備の避難、移動経路として機能し、地下司令室、武器製造工場の役割も担っているとされる。トンネルの入り口は建物や木々、複雑な地形の下に隠れていることが多く、イスラエルの軍や諜報機関の情報網をもってしても、簡単には見つけられない。近年ではトンネルの長さ、強度、複雑性も増してきている。昨年、イスラエル軍の特殊部隊は、地下70メートルに位置する地下空間を発見。この深さがあれば、イスラエル軍の最も強力な爆弾による攻撃も耐えられる。また、トンネルは比較的安価かつ短期間で建設できる。イスラエル軍が2014年にまとめた報告書によると、トンネル1施設あたりの平均建設費用は約10万ドル(1500万円)と推定され、イスラエル軍の対空防衛システム・アイアンドームで使われるミサイル1発の値段と同じ程度だ。しかも、建設期間は約3ヶ月とみられている。これまでの現地報道によると、イスラエル軍は2014年の衝突時だけでも、ガザ地区の地下に全長100キロの地下通路を発見。2021年、ハマスはトンネル網が全長500キロに達したと明かしている。イスラエル軍がこれまでにまとめたハマスの地下トンネル地図をみると、北部を中心とした広範囲に地下迷宮が準備されていることが分かる。対策不可能な悪夢ハマスのトンネル作戦は、イスラエル軍の士気に多大な影響を与えることになりうる。米安全保障アナリストのブラッドリー・ボウマン氏は、米メディアABCに対し「イスラエルの突撃部隊にとっては悪夢となる」と語っている。イスラエル軍のジョナサン・コンリクス報道官も、「ハマスはガザ地区の奥や地下に潜り込んでいるため、根こそぎにするするのは簡単ではない」と認めている。さらに、今回もすでにイスラエル軍の攻撃から身を守ったり、ロケット弾を隠したりするのに地下トンネルが使われていると主張している。現代戦争研究所のジョン・スペンサー氏も、イスラエルが地上攻撃を決行したとしても、軍を待ち受ける「地下トンネル問題」への対策はないと指摘する。強力な武器をもたないハマスだが、地下トンネルを利用することでイスラエル軍への背後からの奇襲攻撃が可能になり、大混乱をもたらすことができる。さらに、イスラエル軍がトンネルを攻略しようとしても、暗視ゴーグルや通信機器などを揃える必要があるため、一筋縄ではいかない。もちろん、イスラエル軍も無防備で突撃することはなく、トンネルの発見や破壊のために特別に訓練された軍用犬やロボットを使うと想定される。それでも、ガザ地下トンネル網はイスラエルの対処能力をはるかに超えているとみられ、結局は発見した工兵、歩兵がその都度、現場で対応するという古典的方法しかないとスペンサー氏は締めくくった。ヒズボラ戦の苦い教訓実際にイスラエル軍は2006年のレバノン戦争で、過激派組織ヒズボラのトンネル作戦に手を焼いた苦い思い出がある。わずか1000人ほどの高度に訓練されたヒズボラ戦闘員が、10~30倍の兵力のイスラエル軍を引き付けた。このときのトンネルを利用した奇襲、かく乱戦法はイスラエル軍を「驚かせた」と伝えられている。結局、イスラエル側は死者121人、負傷者1200人以上、戦車20両以上の大損害を出し、国連の仲介によるレバノン撤退を余儀なくされるという戦略的敗北を喫した。今回イスラエルと対峙するハマスは、ヒズボラとの関係も指摘されている。レバノンでの教訓が、この2週間にイスラエルの政治指導者や軍司令官の頭を悩ませる種となっていることは、想像に難くない。関連ニュース
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【解説】ハマスの迷宮 イスラエル軍の悪夢となる全長500キロの地下トンネルとは
2023年10月20日, 22:30 (更新: 2023年10月20日, 22:35) イスラエル・パレスチナ紛争の激化からはや2週間が経ったが、イスラエルは宣言していたガザ地区への本格的な地上作戦を躊躇している。この背景にはハマスが建設した「ガザ地下鉄」と呼ばれる広大なトンネル網の存在がありそうだ。スプートニクはこれまでの各国の報道、軍や研究機関の報告書などをもとに、ガザ地区の地下に広がる迷宮について分かっていることをまとめた。
イスラエルが本格的な地上作戦に踏み切れない理由としては、ハマス側がイスラエル人の人質をとっていること、諸外国からの民間人犠牲に対する懸念、北部で国境を接するレバノンの武装組織ヒズボラの本格参戦を招くリスクなど、様々な政治的、戦略的要因があげられている。
だが純軍事的な理由としては、ガザに密集する3万人ともいわれるハマスの戦闘員を相手に、イスラエル軍が戦場での優位性を確保できない恐れからくる軍指導部のためらいがあるとされる。すでにガザ地区ではイスラエルの空爆によって瓦礫の山となっており、待伏せや狙撃に最適な要塞と化している。
米現代戦争研究所が2021年にまとめた
報告書によると、市街戦では基本的に防御側が有利といわれる。
「今日の戦争では軍備で劣る勢力が、市街戦に持ち込むことで得られるメリットは大きい。建物などを遮蔽物として身を守るとともに、民間インフラや地下トンネルを利用した機動作戦も可能になる。しかも、防御側は戦時国際法で保護対象に定められた民間人の住居や建物の中に隠れることもできる。こうして、相手が持つ現代兵器や戦術の有効性を低下させる可能性がある」
言い換えれば、市街戦の条件下では、突撃銃や手榴弾、対戦車砲などの比較的軽装備のハマス側と、重装甲戦車、航空戦力、砲兵戦力などの洗練された部隊を持つイスラエル軍が均衡状態になる可能性がある。ハマス側はただ指を加えてイスラエル軍の進撃を見るわけではなく、地下や瓦礫の山に隠れて空爆や砲撃を生き延び、次の日の戦いに備えることができる。しかも、ハマス側には自分たちのホームグラウンドという利点もある。
ハマスは40年近くにわたり、ガザ地区各地でトンネル採掘を続けてきた。ハマスや武装組織は広大なトンネル網を使い、厳重に要塞化されたイスラエルの国境をかいくぐり、武器や物資の密輸を行ってきた。このトンネル網は戦闘員や装備の避難、移動経路として機能し、地下司令室、武器製造工場の役割も担っているとされる。
トンネルの入り口は建物や木々、複雑な地形の下に隠れていることが多く、イスラエルの軍や諜報機関の情報網をもってしても、簡単には見つけられない。近年ではトンネルの長さ、強度、複雑性も増してきている。昨年、イスラエル軍の特殊部隊は、
地下70メートルに位置する地下空間を発見。この深さがあれば、イスラエル軍の最も強力な爆弾による攻撃も耐えられる。
また、トンネルは比較的安価かつ短期間で建設できる。イスラエル軍が2014年にまとめた
報告書によると、トンネル1施設あたりの平均建設費用は約10万ドル(1500万円)と推定され、イスラエル軍の対空防衛システム・アイアンドームで使われるミサイル1発の値段と同じ程度だ。しかも、建設期間は約3ヶ月とみられている。
これまでの現地報道によると、イスラエル軍は2014年の衝突時だけでも、ガザ地区の地下に
全長100キロの地下通路を発見。2021年、ハマスはトンネル網が
全長500キロに達したと明かしている。イスラエル軍がこれまでにまとめたハマスの地下トンネル地図をみると、北部を中心とした広範囲に地下迷宮が準備されていることが分かる。
ハマスのトンネル作戦は、イスラエル軍の士気に多大な影響を与えることになりうる。米安全保障アナリストのブラッドリー・ボウマン氏は、米メディアABCに対し「イスラエルの突撃部隊にとっては
悪夢となる」と語っている。
「戦地に入って都市郊外を前進していると、それまで何もなかった自分たちの後ろに突如敵兵が現れる。市街地のブロックから次のブロック、建物から別の建物に移動する際、いつでも白兵戦になるリスクがある。これは非常に残酷なものとなる」
イスラエル軍のジョナサン・コンリクス報道官も、「ハマスはガザ地区の奥や地下に潜り込んでいるため、根こそぎにするするのは簡単ではない」と認めている。さらに、今回もすでにイスラエル軍の攻撃から身を守ったり、ロケット弾を隠したりするのに地下トンネルが使われていると主張している。
現代戦争研究所のジョン・スペンサー氏も、イスラエルが地上攻撃を決行したとしても、軍を待ち受ける
「地下トンネル問題」への対策はないと指摘する。
「ハマスはすでにイスラエル軍の地上作戦に備えて、すでに政治指導部、戦闘員、司令部、通信、武器、弾薬、水、食料などの物資をトンネル内に配置しているだろう。これにより、イスラエルが大規模爆撃を行った後でも、ハマスの兵力は安全かつ自由に移動ができる。地下施設内には発電施設、水道管、換気扇など設備も整っており、包囲戦になったとしても対応できる。いざとなれば、ハマス指導者らや戦闘員はトンネルを使って戦闘区域外に退避することもできる」
強力な武器をもたないハマスだが、地下トンネルを利用することでイスラエル軍への背後からの奇襲攻撃が可能になり、大混乱をもたらすことができる。さらに、イスラエル軍がトンネルを攻略しようとしても、暗視ゴーグルや通信機器などを揃える必要があるため、一筋縄ではいかない。
もちろん、イスラエル軍も無防備で突撃することはなく、トンネルの発見や破壊のために特別に訓練された軍用犬やロボットを使うと想定される。それでも、ガザ地下トンネル網はイスラエルの対処能力をはるかに超えているとみられ、結局は発見した工兵、歩兵がその都度、現場で対応するという古典的方法しかないとスペンサー氏は締めくくった。
実際にイスラエル軍は2006年のレバノン戦争で、過激派組織ヒズボラのトンネル作戦に手を焼いた苦い思い出がある。わずか1000人ほどの高度に訓練されたヒズボラ戦闘員が、10~30倍の兵力のイスラエル軍を引き付けた。
このときのトンネルを利用した奇襲、かく乱戦法はイスラエル軍を
「驚かせた」と伝えられている。結局、イスラエル側は死者121人、負傷者1200人以上、戦車20両以上の大損害を出し、国連の仲介によるレバノン撤退を余儀なくされるという戦略的敗北を喫した。
今回イスラエルと対峙するハマスは、ヒズボラとの関係も指摘されている。レバノンでの教訓が、この2週間にイスラエルの政治指導者や軍司令官の頭を悩ませる種となっていることは、想像に難くない。