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【視点】日本のエネルギーはアンモニア燃料に代替するか?
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日本はクリーンエネルギーへの移行を促進するため、燃料として水素だけでなくアンモニアの利用も検討している。東京で開催された第3回国際アンモニア燃料会議では、アンモニア燃料の火力発電所や船舶への利用、サプライチェーンの他、アンモニア燃料の信奉者と環境保護論者の間で論争を巻き起こしたコストとリスクについて話し合われた。 2023年10月27日, Sputnik 日本
2023-10-27T06:20+0900
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脱炭素をアンモニアで 日本の試み日本をはじめとする多くの国が2050年を達成目標としたカーボンニュートラルへ向け、急ピッチで尽力を重ねている。一般社団法人クリーン燃料アンモニア協会(CFAA)の村木茂会長は、この条件下ではアンモニア燃料は有効なソリューションだという見方を表している。大気汚染の最たる燃料である石炭は2022年、日本のエネルギー消費の27.8%を占めていた。新エネルギー計画は、2030年までに石炭の割合を19%まで減らすことを目指している。石炭を徐々にアンモニアに代替するパイロット・プロジェクトは、日本のエネルギー発電会社のJERAによって、愛知県の碧南火力発電所ですでに実施されており、現在、20%のアンモニアと石炭の混焼がテストされているが、2029年までには少なくともアンモニアの割合を50%にまで増やし、最終的には2050年までに100%のアンモニア燃焼を目指す。「グリーン」なアンモニア燃料で自給を急ぐ日本日本が「アンモニア」資源に切り替えるとすれば、2030年までに300万トン、2050年までには3000万トンのアンモニアが必要になる。ところが、日本が現在、輸入しているのは化石燃料由来のいわゆる「グレー」アンモニアで、同じく化石燃料由来だが、CO2排出の80~90%を吸収する「ブルー」アンモニアや、再生可能エネルギー源から生産されるクリーンな「グリーン」アンモニアの生産は、世界市場が必要とする量にはまだ達していない。 だが、サウジアラビア、オーストラリア、インド、チリ、南アフリカ、カナダ、ノルウェーでは、すでにクリーンなアンモニア燃料プラントの建設が始まっている。そして日本企業はすでに、アンモニアのサプライ・チェーンを構築するために、これらの国々の企業とのビジネス・パートナーシップ関係の構築を急いでいる。アンモニアの埋蔵量はほぼ無限燃料としてのアンモニアは、他の燃料を凌駕する、絶対的な利点がある。エネルギー源としてのアンモニアはリチウムイオン電池の9倍、液体水素の1.5倍のエネルギー密度を持つ。また、液体水素の貯蔵はマイナス253℃の超低温が必要だが、アンモニアはマイナス33℃で済む。アンモニアは実質的には空気中から摂取ができるため、埋蔵量は無限だ。さらに、農業、化学、繊維産業、医薬品、医療で長年にわたって使用され、経験が積まれているおかげで、アンモニア生産に必要な広範なインフラはすでにある。残る欠点だが、アンモニアには重大な欠点もある。 現在のアンモニアの生産ではかなりの量のCO2が排出されている。つまり、現段階で石炭をアンモニアに代替しても、CO2排出量全体の削減という問題は解決しない。また、アンモニアは今やエネルギーとしても需要が高くなってしまっため、世界の窒素循環を乱しかねない。窒素が増加すれば、水圏生態系の富栄養化や大気汚染、地下水汚染につながる恐れがある。アンモニアは、ガソリンやパラフィンよりは燃えにくいが、アンモニアと空気の混合物は高温に加熱すると爆発するため、一定の温度管理が必要とされる。たとえ「グリーン」アンモニアでも緩慢に不完全燃焼させると、CO2よりも強力な温室効果ガスである窒素酸化物(N2O)を放出する恐れがある。しかもアンモニアは有毒であるため、生産から消費に至るまで、厳密な貯蔵管理が必要とされる。 もし漏出した場合は、人間の健康に深刻な脅威をもたらしかねない。アンモニアの将来性は極めて高い=専門家の見解このようなデータを踏まえた場合、アンモニアには単なる肥料の原料ではなく、未来の燃料となる将来性はあるのだろうか? スプートニクは、国際水素経済コラボレーションのマネージングパートナー、ドミトリー・チュグノフ氏にこの問いをぶつけた。チュグノフ氏は、2040年から2050年の間にアンモニアが石炭に完全に置き換わると言うのは時期尚早だが、経済的に有利なグリーン・エネルギー燃料ではあるため、エネルギー部門で使用されるようになるとの見方を示している。
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【視点】日本のエネルギーはアンモニア燃料に代替するか?
日本はクリーンエネルギーへの移行を促進するため、燃料として水素だけでなくアンモニアの利用も検討している。東京で開催された第3回国際アンモニア燃料会議では、アンモニア燃料の火力発電所や船舶への利用、サプライチェーンの他、アンモニア燃料の信奉者と環境保護論者の間で論争を巻き起こしたコストとリスクについて話し合われた。
日本をはじめとする多くの国が2050年を達成目標としたカーボンニュートラルへ向け、急ピッチで尽力を重ねている。一般社団法人クリーン燃料アンモニア協会(CFAA)の村木茂会長は、この条件下では
アンモニア燃料は有効なソリューションだという見方を表している。
大気汚染の最たる燃料である石炭は2022年、日本のエネルギー消費の27.8%を占めていた。新エネルギー計画は、2030年までに石炭の割合を19%まで減らすことを目指している。石炭を徐々にアンモニアに代替する
パイロット・プロジェクトは、日本のエネルギー発電会社のJERAによって、愛知県の碧南火力発電所ですでに実施されており、現在、20%のアンモニアと石炭の混焼がテストされているが、2029年までには少なくともアンモニアの割合を50%にまで増やし、最終的には2050年までに100%のアンモニア燃焼を目指す。
日本が「アンモニア」資源に切り替えるとすれば、2030年までに300万トン、2050年までには3000万トンの
アンモニアが必要になる。ところが、日本が現在、輸入しているのは化石燃料由来のいわゆる「グレー」アンモニアで、同じく化石燃料由来だが、CO2排出の80~90%を吸収する「ブルー」アンモニアや、再生可能エネルギー源から生産されるクリーンな「グリーン」アンモニアの生産は、世界市場が必要とする量にはまだ達していない。 だが、サウジアラビア、オーストラリア、インド、チリ、南アフリカ、カナダ、ノルウェーでは、すでにクリーンなアンモニア燃料プラントの建設が始まっている。そして日本企業はすでに、アンモニアのサプライ・チェーンを構築するために、これらの国々の企業とのビジネス・パートナーシップ関係の構築を急いでいる。
燃料としてのアンモニアは、他の燃料を凌駕する、絶対的な利点がある。エネルギー源としてのアンモニアはリチウムイオン電池の9倍、液体水素の1.5倍のエネルギー密度を持つ。また、液体水素の貯蔵はマイナス253℃の超低温が必要だが、アンモニアはマイナス33℃で済む。アンモニアは実質的には空気中から摂取ができるため、埋蔵量は無限だ。さらに、農業、化学、繊維産業、医薬品、医療で長年にわたって使用され、経験が積まれているおかげで、アンモニア生産に必要な広範なインフラはすでにある。
だが、アンモニアには重大な
欠点もある。 現在のアンモニアの生産ではかなりの量のCO2が排出されている。つまり、現段階で石炭をアンモニアに代替しても、CO2排出量全体の削減という問題は解決しない。また、アンモニアは今やエネルギーとしても需要が高くなってしまっため、世界の窒素循環を乱しかねない。窒素が増加すれば、水圏生態系の富栄養化や大気汚染、地下水汚染につながる恐れがある。
アンモニアは、ガソリンやパラフィンよりは燃えにくいが、アンモニアと空気の混合物は高温に加熱すると爆発するため、一定の温度管理が必要とされる。たとえ「グリーン」アンモニアでも緩慢に不完全燃焼させると、CO2よりも強力な温室効果ガスである窒素酸化物(N2O)を放出する恐れがある。しかもアンモニアは有毒であるため、生産から消費に至るまで、厳密な貯蔵管理が必要とされる。 もし漏出した場合は、人間の健康に深刻な脅威をもたらしかねない。
このようなデータを踏まえた場合、アンモニアには単なる肥料の原料ではなく、未来の燃料となる将来性はあるのだろうか? スプートニクは、国際水素経済コラボレーションのマネージングパートナー、ドミトリー・チュグノフ氏にこの問いをぶつけた。
「アンモニアの取り扱いの危険性は以前から知られており、危険物質の取り扱いルールも確立されている。化学産業界には毒物や爆発物など何百種類もの危険物質があり、アンモニアが特別危険だなどという話は誇張だ。安心できる輸送手段、パイプライン、アンモニア貨物を受け入れ、貯蔵するための港湾ターミナルは40〜50年前から存在している」
ドミトリー・チュグノフ
国際水素経済コラボレーションのマネージングパートナー
チュグノフ氏は、2040年から2050年の間にアンモニアが石炭に完全に置き換わると言うのは時期尚早だが、経済的に有利なグリーン・エネルギー燃料ではあるため、エネルギー部門で使用されるようになるとの見方を示している。
「石炭火力発電が水素を利用した再生可能エネルギーに取って代わられる速度はアンモニアよりも早い。しかも再生可能エネルギー導入のチャンピオンは中国で、太陽光、風力、水素、水力発電の導入率は、CO2回収システムを備えた石炭火力発電所の新設速度よりもはるかに高い。 だが、エネルギー燃料としての『グリーン』アンモニアの将来性は極めて高い。2021年に日本とアラブ首長国連邦の間で締結されたアンモニア利用に関する協力契約など、発電に利用するための多くのグリーンアンモニア契約が結ばれている。また、アンモニアは水素の理想的な貯蔵施設でもある。国際エネルギー機関(IEA)は、近い将来、水素燃料の80%がアンモニアになると予測している」
ドミトリー・チュグノフ
国際水素経済コラボレーションのマネージングパートナー