日本製鉄はUSスチールを買収できるか?

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日本製鉄はUSスチールを買収できるか? - Sputnik 日本, 1920, 09.10.2024
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日本製鉄の今井正社長は米鉄鋼大手USスチールの買収について、年内に完結する意思を再び示した。一方で今井氏からは、楽観的な姿勢は感じられなかった。

USスチールがなぜ日本に必要なのか

さかのぼること2023年の夏、かつては世界最大の鋼鉄メーカーであったUSスチール。この会社が経営難に陥り、バイヤーを探しているという事実が明るみになった。買収の意図を持つ企業は少なくなかったが、同年12月、日本製鉄が141億ドルで買収し、加えてUSスチールの滞納税7億4200万ドルも支払うと名乗り出た。交渉で日本製鉄側は、買収後も米国人労働者の雇用を維持し、経営陣も大半を米国籍者とすることを約束した。
とはいえ、このニュースは米国内でさまざまな反応を引き起こした。USスチールの経営陣は、新日鉄への吸収は米国の鉄鋼業界とサプライチェーンを強化し、競争力を高めると判断している。それに対して、吸収の反対者は、これは米国鉄鋼業界に損失を、国家安全保障にリスクをもたらすと唱えている。なぜならばエネルギー、造船、自動車、計測機器、その他の産業に製品を提供する、米国の産業力の主な象徴に係る話だからだというのだ。
対米外国投資委員会(CFIUS)は、この取引に関する国家安全保障上の審査を90日間延長した。そしておそらく、この審査は米大統領選挙が終わるまで続くだろう。しかし、バイデン氏もトランプ、ハリス両候補らもこの取引を支持していない。
交渉の行方はまだ見えないが、交渉の結果で双方にどんなメリットとリスクが生じるのか、考察してみよう。ロシア科学アカデミー経済研究所、国際経済政治研究部のボリス・シメリョフ部長はこれについて、次のような見解を表している。
「USスチールは米国で高品質の鋼鉄メーカーでは最古参かつ最大の企業に数えられる。これが外国人の手に渡るとなると、国側からのコントロールは難しくなる。いくら日本が米国の政治同盟国、経済パートナーといっても、米政権はこうした要となる企業が外国人の手に渡らないよう、注視している。しかも、こうした企業は国の経済、国防能力、したがって国家安全保障において戦略的な役割を演じていることを考えると、なおさらだ。これこそが、米政権が日本製鉄に同企業を手渡したくない最たる理由だと思う。USスチールはすでに1991年の時点で米国の最重要企業を示す、ダウ平均株価の銘柄から脱落していたし、2022年の収益はわずか210億ドルだった。米政権はUSスチールを米国の司法管轄下に置き、コントロールを保持することを望んでいる」
シメリョフ氏は、万一、買収がうまくいかない場合も日本製鉄には一切リスクは生じないと指摘している。
「むろん、日本製鉄としては腹立たしいだろうが、これによって日米関係が大きく複雑化することはないだろう。買収が成立した場合は日本製鉄が得をすることははっきりしている。世界のメーカーにとっては強力なライバルとなり、国際市場でのポジションを強化し、米国市場への直接的なアクセスポイントを得ることになる。
日本にとっては米国市場の内部にポジションを強化するのは極めて重要だ。なぜならばこれは多くの金属を消費する巨大市場で、ここに参入するのは困難だからだ。USスチールにとってもメリットは明確だ。この買収で財政状態を立て直し、新技術と技術的アップグレードのための投資にアクセルが得られる。米国市場はここ数年、安価な中国製スチールの流入に直面している。だが、これに非常に高い関税をかけても、米国製スチールとの溝は埋まらない」
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