【視点】核廃棄物を四島で処分案 塀越しに隣家にゴミ捨ても同然

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アーカイブ写真 - Sputnik 日本, 1920, 12.02.2025
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原子力発電所からの放射性廃棄物の最終処分場をクリル諸島(いわゆる北方四島)に設置する案を日本政府は断固拒否した。経済産業相はこの案を「全く配慮にかける軽率な発言」と言い、首相も発言者の傲慢さを非難した。
1月末、原子力発電環境整備機構(NUMO)は、原発からの放射性廃棄物の処分場について議論する説明会を開催した。この説明会の参加者の一人が冗談か本気か、クリル諸島に核のごみの最終処分場を建設してはどうかと発言した。これに対し、資源エネルギー庁の担当者は、これも真意は分からないが、実現すれば魅力的な提案だが現実的には難しいと述べ、さらにNUMOの幹部も計画は「一石三鳥四島だ」と発言した。
この件を受けて、北海道の鈴木直道知事は、北方領土問題に対する理解や元島民への配慮に欠けていると、遺憾の意を示した。また、武藤容治経産相とNUMOの山口晃理事長から電話で謝罪を受けたことを明らかにした。 石破首相は2月3日の衆院予算委員会で、このようなことは絶対にあってはならないと言い、「そのような発言がいかなる意図であったか分からないが、緩みとかおごりとか思い上がりとか、そういうものがあったということだと思っている。政府の責任者として深くお詫びを申し上げる」と謝罪した。
もちろん、日本側も、ましてやロシア側もこの問題を真剣に検討するつもりはない。とはいえ、スプートニクは、仮に、人口の少ないクリル諸島を高濃度の放射性廃棄物の「処分場」とすることが可能なのか否か、専門家に訊いてみた。
島の生態学的特殊性から見ても、この考えは馬鹿げている。生態学、水生生物学、持続可能な廃棄物管理の専門家でNGO「緑の文明」のドミトリー・フェドロフ代表はこうした見解を表している。
「1984年以降、クナシル島と小クリル列島は『クリル』国立自然保護区となっており、ロシアの特別保護地域の中でも特別な場所となっている。これらの島々とその海域には、独特な景観の火山や温泉、針葉樹林や熱帯特有の植生、賑やかな鳥の群、希少な海洋動物が生息している。隣の南クリル諸島は漁業保護区域に属している。クリル諸島の大陸棚と海洋経済水域は、水生生物資源において世界で最も豊かな地域のひとつだ。島々はエネルギー資源が豊富で、特に地熱エネルギーは有望だ。クリル列島の地熱資源の埋蔵量は非常に大きい。一方で、クリル諸島は都市廃棄物による汚染という独自の問題を抱えている。残念なことだが、廃棄物は頻繁に処理場以外の場所に不法投棄される。クリル諸島には地方特有の強い突風がある、だから廃棄物は島や領海のいたるところに飛ばされる。近い将来の優先課題は、島の家庭ごみ管理システムを最適化することだ」
露「アトムインフォ・センター」の責任者アレクサンドル・ウヴァロフ 氏は、日本で言及された提案は非現実的だと語っている。
「まず、核廃棄物の処分場を他国との国境に作ろうなど、倫理に反する。近隣諸国の安全を脅かし、国家間の問題を引き起こすことになる。どの国もそんなことはしないようにしている。いずれにせよ、この問題は放射線安全の専門家によって調査される必要がある。日本にはすでに最終処分地の候補地として、北海道の寿都町と神恵内村を選定済で、聞いたところによると、この2つの町村は核廃棄物貯蔵施設の誘致権を争っている。昨年2月のNUMOの報告書では、これらの地域の調査結果が分析されている。次の段階は、地質調査による具体的な場所の選定だが、このような段階は全部で3つあり、火山活動や地震活動によるリスクを分析も含まれる。高濃度の放射性廃棄物の処分となると、数百年間の安全が保証される必要がある。だからこそ、クリル諸島を放射性廃棄物の最終処分地として真剣に検討する人はいなかったのだと思う。多分、この発言は戯れ言か不適切な冗談だったのだろう」
日本の原発の放射性廃棄物をクリル諸島に埋蔵するという考えは、塀越しに隣家にゴミを投げ捨てることに等しい。放射性廃棄物安全プログラムの専門家であるアンドレイ・オジャロフスキー氏は言う。

「放射性廃棄物の埋め立ての是非は世界的にまだコンセンサスが得られていない。一時的な処分方法として、地上管理、地層処分という2 つのタイプがある。商業用原発から出る廃棄物については、ほとんどの国が技術と場所の選定段階にある。科学技術がこうした有害廃棄物に対処する新しい方法を生み出すまで、一時的に処分場で保管するという考え方もある。地層処分で最も懸念されているのは、その安全性が証明されていないこと。例えば、半減期が24000年のプルトニウムや、それよりもはるかに期間の長いの元素を保管する場合の安全性を、実際に検証することは不可能だ。つまり、実験によって安全性が確認できないのであり、書面のみの確認は原子力産業においては最も危険なこと。

クリル諸島に放射性廃棄物を埋めるという考えは、突然出てきたわけではない。日本で適地選定のプロセスが始まった数年前から、その話はあった。人口密集地、国立公園、資産価値のある土地は、選定の候補として除外されていた。この時、クリル諸島は人口の少ない土地として候補に挙がっていて、ロシアがクリル諸島を自国の領土としていることは考慮されてなかった。人口が少ないことだけが、これらの島々が適切であるか否かの唯一の基準だったから。もちろん、クリル諸島は海に囲まれ、人類の食糧源として重要な役割を果たすという点で見れば、基準には当てはまらない。さらに地震地帯でもある。だから、日本の原発からの核のゴミを埋めるためにクリル諸島を利用しようという考えは、隣家に向かって塀越しにゴミを投げ捨てようとする行為だと私は考える...」

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