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2017年米国商務省のデータによれば、米国の鉄鋼製品の主な輸入先はカナダ、ブラジル、韓国、メキシコ、ロシアなどだ。このうち、輸入制限措置の除外対象になるのは現在のところカナダ、メキシコのみ。日本は「同盟国である日本の鉄鋼やアルミが米国の安全保障に悪影響を与えることはない」と適用除外を求めているが、回答は得られていない。
ロシアの著名経済誌「エクスペルト」のアナリスト、アンナ・コロリョワ氏は言う。
トランプ氏の政治家らしからぬ意思決定方法は、大統領就任直後から変わっていない。杏林大学の馬田啓一名誉教授は、トランプ氏が「体に染みついた不動産ビジネスの常套手段を外交戦略に使っている」と指摘している。どんなに優良物件で条件が良くとも、まずはケチをつけ、売り手にもっと値段を下げさせるという筋書きだ。また、トランプ氏は日本で米国車が売れていないことに対して「不公平」「日本市場は閉鎖的」と常々批判してきたが、自動車輸入関税のない日本に対してその批判はあてはまらない。日本で米国車が売れない理由は単に、企業努力が足りないからである。
中国人民大学経済学院の黄衛平(Huang Weiping)教授は、米国の輸入制限政策により、世界中の国々が被害者になると考えている。
米国の事情に詳しい地政学分析者の高島康司氏は、世界経済の停滞に懸念を示している。
高島氏「トランプ政権によるこのような保護主義的な政策は、生産拠点の世界的な分散と、金融資本の発展に主導された現在のグローバリゼーションの否定です。軍産複合体は、グローバリゼーションの結果、ロシアや中国などの新興国が急速に台頭したため、アメリカの軍事的な優位が失われつつあると認識しています。アメリカの覇権を維持して安全保障上の脅威を除去するためには、グローバリゼーションの経済成長モデルを否定してでも、製造業の国内回帰を促進し、軍需産業の高度化を図らなければならないと見ています。その結果として起こるのは、保護関税の強化による貿易戦争です。これによりグローバリゼーションは減速し、世界経済は停滞するに違いありません。そうではないことを願いますが、もしこれが今回発動される鉄鋼とアルミニウムに対する高関税の実態であるとするなら、これからトランプ政権は包括的な高関税の適用へと進むのかもしれません。もちろんこれは世界経済にとっての決定的な転機になります。これからどうなるのか注視しなければなりません」
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