ロシアの勢いと日本の正確さを持った銀行

5月末、日本企業SBIとロシア直接投資基金が、プーチン大統領と安倍首相の臨席のもと、合意書を締結した。合意書の目的は、ロシアでバイオテクノロジーとフィンテック分野のプロジェクトへの共同投資の可能性を調査すること。実際にその機能を担うのは、100%日系資本のロシア国内銀行であるSBI Bankである。この銀行の唯一の株主は金融サービスとオンラインバンキングの草分け的存在といわれるSBIホールディングスである。今後数年間の銀行の戦略について、SBI Bankのアンドレイ・カリャキン代表取締役がスプートニクの独占インタビューで語ってくれた。
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スプートニク:フィンテックとバイオテクノロジーにはどのようなつながりがあるのですか?

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アンドレイ・カリャキン:「このアイデアは我が社の株主であるSBIの戦略方針のひとつなのです。SBIは銀行ビジネスだけでなく、バイオテクノロジー分野でも活動する屈指の金融ホールディングスなのです。我が国では、バイオテクノロジーが勢いよく発展しており、それに弾みをつけたもののひとつが、プーチン大統領が発表したがん対策プログラムです。バイオテクノロジーはこの対策の中で重要な役割を担っており、SBIホールディングスにはこの分野での経験が蓄積されており、プロジェクト実績も技術もあります。フィンテックに関しては、SBIホールディングスは日本でフィンテックに積極的に投資しており、私たちはこのアプローチをロシアで再現しようと考えています。つまり、SBIのプラットフォームに組み込むことで競争力をもたらすような先進的なサービスを持った若いスタートアップを含め、面白いフィンテックを探して選抜しようということです。SBIホールディングスにはスタートアップに関する膨大なノウハウがあり、ロシアは今、フィンテックが急激に成長し、市場も活気と競争に溢れています。私たちの銀行の戦略はデジタルテクノロジーを重視していますので、こうしたスタートアップの試運転の場所として当行の環境を提供するのは至極妥当だと考えています。」

アンドレイ・カリャキン

スプートニク:SBI Bankは、中小企業にアクセントを置いて、ロ日ビジネス関係の強化に貢献するつもりですね。どうしてこの分野を選択されたのですか?

アンドレイ・カリャキン:「私たちはロシア初の日本の銀行ではありません。ずっと以前から大プロジェクトを扱ってきた銀行もあります。日本でメガバンクと呼ばれている銀行です。メガバンクの業務には超大口顧客への融資があります。そうした企業は当行では手に負えないような金額のファイナンスを求めています。ですから、私たちは自社の戦略として中小企業に狙いを定めたのです。中小企業の中には、既に意志決定はしたけれど市場にはまだ進出していないという企業もあれば、大きな関心を持ってロシアビジネスを見つめている企業もあります。しかし、彼らにとってロシアはいまだに「閉鎖された」国なのです。彼らはここでどうやってビジネスをすればいいのか、何から始めればいいのか、ゲームのルールはどうなっているのか、誰を頼ればいいのかが分からないでいます。これは大問題で、日本の中小企業にとって、ロシアの情報はゼロに等しいのです。そうした企業のために、私たちはロシア市場への橋渡しをしたいと思っています。私たちは情報を持っており、必要なパートナーを選定することが可能です。また、既にロシアに進出し、パートナーとの関係が出来上がっている企業には、業務をひとつの銀行にまとめることを提案できます。その方がコストも安く済みますし、利便性もスピードもアップします。」

SBI Bankの本気度を示しているのが、極東投資誘致輸出支援庁とのパートナー契約である。同銀行は、今年1年で、SBI Bankの極東での成長のベクトルを定め、極東での地理的プレゼンスを拡大するような、有望なプロジェクトを見定める。

アンドレイ・カリャキン:「日本人がまず最初に見ているのは、日本から最も近い極東地域です。極東には私たちも関心があります。今、私たちはプロジェクトのポートフォリオ全体を検討している段階で、近いうちに、当行の戦略に合い、リスクと回収率とプロジェクト実現スピードの観点から受け入れ可能なプロジェクトを10~15に絞る予定です。そうしたプロジェクトは既にあり、今、私たちはそれらの具体的な評価を行っています。今年か来年には極東にもうひとつオフィスを開設しますが、私たちのデジタルを発展させるというベクトルは変わりません。この地域はとても魅力的で、成長率も高く、先進発展区もウラジオストク自由港もあり、これらすべてが様々なビジネスプロジェクトの活性化を促しています。当行の強みは、私たちのバックにはしっかりとしたビジネス思想とオープンな体制を持ち、日本的な信頼性と予測可能性を持った株主がいるということです。」

スプートニク:一連のロシア企業や企業家に対して発動されている制裁が日本企業をひるませていると聞きました。実際そうなのでしょうか?SBI Bankの活動に制裁の影響はありますか?

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アンドレイ・カリャキン:「怖くてひるむのは知らないからです。ビジネスルールについての情報不足、ロシアビジネス界の全体像や最も有望な分野についての理解がないということです。知らないということが壁なのであって、制裁ではありません。日本のカウンターパートから制裁についての発言など聞いたことがありません。制裁は当行が発展するる上では、何の問題にもなっていません。それどころか、私たちはかなり独立した行動を許されています。SBIホールディングスは、日本企業は保守的だとか、すべてのレベルで調整が必要で、意志決定に時間がかかり、決定したときにはチャンスは過ぎ去っているというような、日本企業の固定概念からは外れた企業です。SBIホールディングスは私たちの意見に注意深く耳を傾け、新しい可能性に興味を持ってくれます。そういう意味で、SBIホールディングスはとても仕事がしやすい相手です。」

SBI Bankのスローガンは、「ロシアらしく勢いよく、日本らしく正確に働く」である。銀行の社内政策が掲げる課題は、「ファミリーバンク」のコンセプトをベースに、5年で30万人以上の新規顧客を獲得することである。そのために、最新のデジタル技術が使用される。

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