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日本人歓迎のイベントにはモスクワ市内だけでなく近郊の町からもたくさんの子どもたちが集まり、歌やダンスを披露した。熱気あふれるパフォーマンス、テーブルからはみ出すピロシキ、プレゼントの山など「ロシア式おもてなし」に最初は戸惑っていた生徒たちも、時間とともにダンスに加わるなど積極的に交流した。
「トモにロシアへ」プロジェクトを主催するのは、サッカー日本代表を応援する団体「Smile for Nipponちょんまげ支援隊」だ。代表のちょんまげ隊長ツンさんこと、角田寛和さんは、サッカー応援だけでなく、東日本大震災のボランティアに献身的に取り組み、震災後の現状を正しく理解してもらうため情報発信を行なってきた。角田さんは今回、W杯という機会を生かし、辛かったときに手を差し伸べてくれたロシアへ感謝を伝え、福島の今を知ってもらおうと考えている。角田さんの意図に賛同した仲間たちもロシアにかけつけ、プロジェクトを支えている。
ロシア政府は、東日本大震災の直後、非常事態省の救援チームを二度にわたり日本に派遣。隊員156名が捜索活動を行ったほか、国営原子力関連企業ロスアトムを通じて、個人の被ばく量を測定する個人線量計400個と、マスク5000個を提供した。ロシアのセキュリティソフト企業「Kaspersky Lab」は、日本法人カスペルスキー株式会社を通じ、義援金の提供、日本赤十字社への寄付などに加え、ガイガーカウンター(放射線測定器)を5000台寄付した。「トモにロシアへ」プロジェクトも、ロシア連邦在新潟総領事館や統一ロシアなど、様々な団体の協力によって実現した。
ロシアの支援に対し感謝を述べる角田さん
© Tokuyama Asuka
ロシア文化を体験した後は、国際交流基金モスクワ日本文化センターにて映画「MARCH」の上映会を行なった。この映画は角田さんが中心となって制作したもので、南相馬市の小学校でマーチングバンドに取り組む子どもたちが、いったん離れ離れになりながらも再起する姿や、親や先生などの生の声を伝えて、音楽を通した絆について描いている。ロシア語字幕をつけたのは、かつて日本に住んでいた高校生のアジザ・アブドラシドワさんだ。昨年、モスクワ日本文化センターに遊びに来ていたアブドラシドワさんは偶然角田さんと知り合いになり、角田さんが作ろうとしている映画の内容を知り、自ら手伝いを申し出た。
角田さんと中学生3人、その仲間たちは、19日にサランスクで行なわれる日本対コロンビア戦を観戦する。サランスクでは、被災した子どもたちが復興支援感謝の気持ちをこめて手作りした鉢巻きを配布する予定だ。3人は「今日は感謝の気持ちをたくさん伝えることができました。これからも現地の皆さんとの交流があるので、今日以上に頑張って、伝え切れなかった部分の感謝を伝えたい」と話している。