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イベントは障害者にも健常者にも開かれている。だが、イベントに最も活発に参加しているのは、日常の仕事で様々な程度と種類の障害を持つ人びとと関わる専門家やボランティアだ。
発達障害者の芸術の認識と芸術へのアクセスの問題は今に至るまで、論争の的となっている。いかに視覚障害者に絵画を「示し」、いかに美術館で発達遅滞児の集中力を保つか。自閉症スペクトラム障害の児童や成人は絵画の複雑な筋を理解できるのか。そもそも、高級芸術は彼らに必要なのか?美術館を訪れた健常者と障害者の関わり方も問題だ。
経験を共有するため、フェスティバルには諸専門家が招待された。英ロンドンにあるロイヤル・アカデミー・オブ・アーツをアクセスしやすい環境にするプログラムの企画者、モリー・ブレトン氏。ニューヨークのメトロポリタン美術館でインクルーシブ・教育プロジェクトを専門とするレベッカ・マクギニス氏。台湾にある国立故宮博物院からの専門家などだ。
芸術の治療的役割について、神経生物学者でプーシキン美術館の上級コンサルタント、アレクサンドル・ソロキン氏は説明する。
「芸術に触れることで、生活の質が向上する。もちろん、車椅子に乗った方が美術館を数度訪れると、立ち上がって歩き出すということではない。だが、精神障害を持つ人びと、特に発達障害を持つ子どもたちにとって、芸術に触れることは確実に生活の質を高める。これは医療記録に記載される障害の主な特性には影響しないかもしれない。だが、これは二次的性質に肯定的に影響する。これは確かで科学的に確認されている」
「そのため、こうした人びとにとって定期的に美術館を訪れることは必要不可欠だ。そして両親、保護者、そして全文化コミュニティの課題は、健康状態に関わらず、子供に芸術への愛と関心を植え付けることにある。年を取ればこれはもう、遅いかもしれない」
国際インクルーシブ祭では45のイベントを予定している。レクチャーや討論、ワークショップ、映像上映だけでなく、障害者で構成するアート集団の出演も含んでいる。例えば、視覚聴覚障害者芸術プロジェクト実現センターの芸術団によるパフォーマンス『日本のモチーフ(舞踏)』などがある。また、フェスティバル開幕に合わせ、モスクワにある「ネドスロフ」劇場の聴覚障害を持つ俳優が、ミニ演劇『ロシア手話による日本詩の傑作』を用意した。この選択は偶然ではない。美術館ではフェスティバル期間中、展覧会『江戸時代の日本の絵画の傑作』が行われている。