スプートニク日本
米国は恐怖を吹き込む一方、周囲からの敬意を失いつつあり、感情を隠すべき外交官や政治家が堂々とその大統領を笑うほどだ。国連総会で行う全ての演説は、この新たな条件下で、米同盟国をはじめとする各国首脳が何をすべきかという問いに、答える必要があるだろう。
だが、根本から革新的な要素を安倍首相の演説から見出すことは難しい。
貿易 — 自由で選択的
安倍首相は国際社会に、自由貿易の旗手として日本を提示した。環太平洋経済連携協定(TPP)の維持、東アジア自由貿易地域の創設、そしてEUとの大規模協定に投じる日本政府の努力は理解できる。日本の成長の推進力は依然として、貿易であり続けている。だが問題は、安倍氏とトランプ氏がニューヨークで合意した日米貿易協議で、安倍氏がこの原則をどれほど維持できるかだ。
米国が過去数十年間のように、日本市場の「開放」を続けるだろうことは明らかだ。だがもはや開放は、黒船に乗ったマシュー・ペリーの尽力ではなく、トランプ氏の「最大限の圧力」手法によるものだ。トランプ氏にとって、日米貿易の不均衡解消は名誉の問題だけでなく、第2期もホワイトハウスの椅子を維持する手段にもなりつつある。
国連総会での安倍演説は、日本が米国で雇用を創出していると言及した。これが示すことはおそらく、日本が自由貿易の問題でも、いつも通り非常に選択的に動き、最大の政治的パートナー国、米国を優先していくだろうことだ。
戦争か平和?
こうしたテーマのすり替えに対しては、すでにプーチン大統領が2週間前、東方経済フォーラムで答えを出している。プーチン氏は今年中、だが前提条件なしの平和条約締結に意欲を見せ、こう強調した。
「その後は、この平和条約に基づいて、友人として議論の余地がある全ての問題解決を続けよう」
ここで念頭に置いているのはおそらく、1956年に締結した日ソ共同宣言の条件に則った日本へのシコタン(色丹)島とハボマイ(歯舞)諸島の譲渡の可能性だ。そして重要なことだが、条約締結後に米国が諸島の軍事化を行う可能性があるという文脈を含めたなかでの、ほかの2島に関する協議の継続の可能性でもある。
当時、これを受けて日本政府は急ぎ、南クリル諸島(北方領土)の帰属問題解決後に平和条約という原則は変わらないと発表した。プーチン氏が提案した譲歩の明白な拒絶は、第2次安倍内閣発足後に始まった、二国間の政治問題に関する日露対話の活性化を終わらせた。国連総会の演説で平和条約に言及したことは、どちらかと言えば領土画定とそれに関する問題における日本政府の保守的なコースの確認と見られるだろう。
「最大限の圧力」政策
ロシアは中国同様、段階的な相互譲歩を提唱している。これは、イラン核問題の解決でも効果を発揮した手法だ。だがどうやら、北朝鮮問題は今、ロシアを日本からどんどん遠ざけている。そして逆に、ロシアと中国をより緊密に結びつけている。