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ロシア科学アカデミー東洋学研究所朝鮮・モンゴル部門のアレクサンドル・ボロンツォフ部門長は、米国が再び北朝鮮を挑発していたため、こうした反応は予測できていたと述べた。
「米国では国務省のスティーブン・ビーガン北朝鮮政策特別代表による大規模な記者会見が開かれた。彼は北朝鮮との協議への米国のアプローチ見直しを発表。シンガポールでの米朝首脳会談後、米国は北朝鮮の核・ミサイル問題を段階的に解決する用意があるとしていた。だがハノイではボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)がトランプ米大統領を説き伏せ、北朝鮮へ強硬な要求を出させた。金正恩朝鮮労働委員長は実質的に最後通牒を出され、降伏を提案された。つまり、完全な非武装化だ。核計画だけでなく、化学・細菌兵器の処分だ。ハノイの首脳会談が実り無く終わった後、ビーガン氏の声明は北朝鮮にとって最後の1滴となり、米国への報復を決意したと見られる」
「北朝鮮にとってハノイの出来事が完全に予想外だったことは明白だ。金正恩氏は真剣な譲歩案と共にベトナムを訪れ、米国からの歩み寄りも期待していたからだ。トランプ氏がボルトン氏の提言に基づき出した最後通牒は、北朝鮮の代表団を驚愕させた。それでも、北朝鮮側は協議継続の可能性を維持しようと試みた。だが米国側は、北朝鮮こそが合意に違反していると公的に批判した。北朝鮮の堪忍袋の緒が切れ、現在、強硬な立場を取ると決定したのも驚きではない」
スプートニクがインタビューした専門家らは、国際社会の期待に反して第2回米朝首脳会談が不首尾に終わった理由は何よりも、米国の高い要求だという点で一致した。
ボロンツォフ氏は「米国は、リビアで核関連機器に関して起きたことが北朝鮮でも繰り返されることを渇望している。機器は現在、米テキサス州の博物館にある」と指摘した。
その上で「こうした出来事が起きた場合のみ、米国は完全に満足するだろう。だが北朝鮮でこうしたシナリオは非現実的だ。北朝鮮は超強硬派の交渉者で、他者の経験に基づき良く学習している」と続けた。
朝鮮に詳しいロシア人研究者で歴史学博士候補のコンスタンティン・アスモロフ氏は一方で、北朝鮮への譲歩は今、トランプ氏にとって不都合だという見方を示した。
実質的にこの路線に先はないとする声明を、北朝鮮側は出している。米国との協議の先行きに言及した崔外務次官は、協議中断の場合、北朝鮮はミサイル発射や核実験を行う権利を有しているとけん制した。
北韓大学院大学校の辛鍾大教授は、非核化に必要な条件がないため北朝鮮は強硬路線を取らざるを得ないとして、次のように現在の状況をまとめた。
「北朝鮮にとって、通常の国家というイメージを作るこの1年間の努力を消し去り、『力強い繁栄した』閉鎖国家という過去の状態に戻ることは容易ではない。だが形成されつつある客観的な条件は、核兵器により強くしがみつく以外、北朝鮮には何も残されていないというものだ」
「そのため、本当の問題点は北朝鮮が核軍縮を行うつもりはあるか否かではなく、非核化に不可欠な条件の有無だ。現在、こうした条件がないことは明白。そのため、北朝鮮は以前通り核兵器に固執する路線に戻らざるを得ない」
「そのため韓国と米国は深呼吸し、核兵器を保有する北朝鮮と共存する仕方を学ぶ必要がある」