スプートニク日本
突然、ロシア語で書かれたメールと動画を受け取った丹波市の担当者は驚いたが、偶然にもロシア留学経験のある友人・河津雅人さんがいたため、読むことができた。動画はただの挨拶ではなく、AKB48「恋するフォーチュンクッキー」のフラッシュモブだった。2013年当時、「恋チュン」のエキストラ参加型MVが話題となり、会社や自治体で独自バージョンを作ることが大流行した。中でも「恋チュン丹波市バージョン」のクオリティは素晴らしく、自治体の動画としては驚異的なアクセス数を誇った。フェドートフさんと露日協会のメンバーはそれを把握した上で、丹波市民に喜んでもらえるように、あえてこの曲で真冬の路上でダンスすることにしたのである。丹波市は返礼として公式Facebookに動画を掲載し、露訳つきでタンボフ市民に向けてメッセージを送った。
2018年10月にはフェドートフさんを含むタンボフからの訪問団を受け入れ、最初のイベント「丹波・タンボフ展」を開催。丹波ゆかりのアーティストの絵画やロシアの伝統工芸品、タンボフの写真家による作品などが展示され、講演会も行われた。
そして今年のゴールデンウィークに、河津さんは念願のタンボフを訪れた。ロシア訪問自体、ほぼ10年ぶりだった。最初の訪問地タンボフ国立工科大学では、ミハイル・クラスニャンスキー学長と「丹波・タンボフ交流協会」との協力協定を締結。河津さんは学生たちを前に、丹波市についてのプレゼンテーションを行なった。歓迎式典では、ロシアの民族衣装と、日本のモチーフから着想を得た手作りの衣装をまとった女性たちがファッションショーを披露してくれた。
河津さんはタンボフ市の当局者のほか、タンボフ州の地域発展・投資活動支援の担当者、タンボフ州のビジネス支援コーディネーターらとも面会し、丹波市のポテンシャルについて紹介。タンボフ州立多目的科学図書館でも来館者と対話した。河津さんは「全部で三か所でプレゼンしましたが、みなさん日本について肯定的な印象をもってくれており、興味津々といった様子で聞いてもらえました」と振り返る。
心のこもったプレゼントをたくさんもらった河津さん。チョコレート、タンボフのシンボルであるオオカミのマークが入ったウォッカ、地元産はちみつ、Tシャツ、地元の芸術家の絵などのほか、珍しい似顔絵のプレゼントもあった。タンボフに住む高校生の女の子が描いてくれたものだ。
河津さん「事前にお願いしたわけではないのに、私の行くところ全てで誰かがエスコートしてくれました。ロシア語にも、日本語で言うところのおもてなし、『ゴスチェプリイームストヴォ』という言葉がありますが、まさにそれが感じられた旅でした。タンボフだけでなくモスクワでも家に招いてもらい、パスハ(ロシア正教の復活祭)のお祝いに参加したり、シャシリク(野外で調理するロシア風串焼き)をしたりと、ロシアの方の生活感を感じながら過ごすことができ、非常に心温まる思い出になりました。」
河津さんによれば、丹波とタンボフの共通点は「人の温かさと、時間がゆっくり流れているところ」だ。河津さんは今後、丹波とタンボフの共通点をアピールし、今回の旅について丹波市にプレゼンする機会をもちたいと話す。河津さんは「今回は一人での訪問だったので、次回は丹波市役所や市議会などから公的な立場の方と一緒に訪問できれば」と、交流の幅を広げたいと望んでいる。
関連ニュース