スプートニク日本
労働力不足
国連の評価によれば、1980年代に100人当たりの労働者(25歳から64歳の成人)が扶養した65歳以上の高齢者は平均して16人だった。この状況はなんと2000年代まで続いた。しかし、2035年になると、この数値が激変する。日本の変化がとりわけ激しい。日本では100人当たりの労働者で69人の高齢者を扶養する計算となる。そのほかの国々に目を転じると、ドイツでは66人、米国では44人、中国では36人まで増加すると考えられている。ロシアも例外ではない。
社会保障費
国家予算を逼迫させているのが社会保障費(年金、生活保護、介護、医療)の増加だ。それと同時に年金生活者の大半が低賃金であっても働き続けることを望んでいる。この労働力は先進国にとって貴重なリソースである。若者の比率が少ない先進国では納税者の数もそれに応じて低化しているからだ。英国の老年学会によると、英国が65歳以上の人々に支払う年金額は、高齢者が納める税金を下回ることが分かった。その差額はなんと440億ポンド(日本円で6兆1160億円)に上る。高齢者の購買力や税収がもたらす利益はこれほど莫大な額に達するのだ。
国によっては、高齢者にパートタイムの仕事を紹介するほか、高齢者用のポストを用意することもある。その例として、オーストラリアの場合、高齢者は小学校の登下校時間に歩道で交通整備の仕事にあたることが多いそうだ。
賃金の格差
体力は認知機能よりも早い段階で低下するため、高齢を迎えても仕事ができるのはハイキャリアの労働者か、あるいは高学歴の人間に限られる。国際応用システム分析研究所のデータによれば、欧米人の大半(移民を除く)が高齢になるとこのカテゴリーに分類される。つまり、高齢を迎えても所得が減少しない見込みだ。一方、中国は真逆の状況を抱えている。中国では50歳以上の大半が初等教育しか受けておらず、将来的には所得の低下が避けられない。さらに、中国経済は自動生産体制にシフトしており、ローキャリアの仕事は年々減少している。さらに、国際的にも雇用する側が高齢化の現状に順応できておらず、年齢に対する偏見は依然として根強い。高齢の労働者は経験豊かだとしても行動力がなく、新しい技術の習得は難しいという偏見が蔓延している。
「シルバー経済」
スプートニクの取材に応じた労働・社会関係アカデミーのサフォーノフ副学長(経済学博士)は以下のように分析している。
5月20日から22日にかけて東京では老化・老年学のアジア会議が開催される。会議のテーマは「自立と共存」だ。
会議ではこれまで見てきた問題が議論されるが、果たして問題解決の糸口は見つかるのか。国際社会はいまその議論を注視している。