伊藤氏の意見には軍事的見解より政治的要素が多い。10機の戦闘機、特にF35Bのような高性能な戦闘機による空からの艦隊支援があれば、無いよりも格段に良い。実際には、航空機を搭載した艦船は諜報、標的の指定、標的への兵器の使用などの強力な戦術的利点を軍にもたらす。さらに、海自の構造からは、護衛艦艇つきの本格的な空母打撃群を2つ構成できる。
伊藤氏は元海自隊員として、これを知らないはずがない。これとは逆にF35Bを10機搭載した「いずも」が役に立つのは訓練程度だと伊藤氏が言っているならば、これを説明できるのは、政治的理由と軍国化批判を避けたい願いだけだ。
だが「いずも」型護衛艦の空母改修は専守防衛原則の枠外に出ない。
第一に、中国海軍の軍事力の急増と空母登場を考慮する必要がある。中国海軍には空母「遼寧」が配備されており、2019年か2020年には001A型航空母艦が就役する。同艦は定期的な航海に向け完全に準備ができ、殲15(J-15)戦闘機を44機搭載する予定だ。002型航空母艦も建造中だ。
第2に、宮古海峡周辺の中国海軍と空軍の軍事活動が活発化している。航空自衛隊は2016年初頭、沖縄県の那覇基地に司令部を置く2個飛行隊編制(F−15J戦闘機が計40機)の第9航空団を編成した。現在、これは中国の軍事活動の活発化を抑え込んでいる。だが中国海軍に2隻目の空母が就役すれば、日本はこのセクターにおける航空均衡を失う。そのうえ、F−15J戦闘機はすでに新しくなく、政府は売却を計画している。このように、「いずも」型護衛艦をF−35Bで再武装することは、この状況下において必要不可欠な措置だ。さもなければ、日本の離島に対する主権は危機にさらされる。
第3に、専守防衛の原則は潜在的な敵国を撃退可能な技術的可能性に依拠している。こうした技術的可能性が無かったり、失われつつあれば、これはもはや自衛ではない。こうして、潜在的敵国が強まるにつれ、自衛手段を強める必要がある。軍事均衡は平和保証の1つだからだ。
なお記事の中で述べられている見解は、必ずしも編集部の立場とは一致していません。
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