今までに様々な核兵器不拡散条約が調印されてきた。だが国連が尽力し、一連の二国間、多国間条約が締結されても、2019年の時点で世界には1万4千発を超える核兵器が存在し、その90%が米国とロシアに集中している。確かに1945年から今まで核兵器が実戦で使用されることはなかったが、科学者らは再度使用される恐れは否定できないと警鐘を鳴らしている。
今年5月、国連軍縮研究所 (UNIDIR) のレナタ・ドワン所長は、核戦争のリスクが現在、第2次世界大戦後で最も高くなっていると指摘した。この状態は米国が当時のソ連(ロシアが継承)と調印した中距離核戦力全廃条約(INF)を離脱した後、さらに先鋭化した。
米露間に核戦争が勃発した場合を想定し、米国大気研究センターとコロラド大学の研究者が作成したシナリオが米「ジャーナル・オブ・ジオフィジカル・リサーチ」誌に掲載された。このシナリオでは米露が核戦争を起こした場合、その影響は地球全体に波及し、10年間にわたる核の冬が始まる。核の冬の原因は火災と大気へ放出される大量の煤だ。
9月初めにプリンストン大学の学者らがYouTube上に「プランA」と題された動画を発表した。「プランA」は米露が互いに核攻撃を行った場合、最初の数時間で何が起きるかをシュミレーションしたもので、この予想では死者が3100万人以上、負傷者も5700万人を超えるが、実際は放射能やその他の要因による死亡はさらに多くなると指摘されている。
こうした警告はすべて、科学者が核大国の政治家らに対し、核戦争が起きる場合の結果を想定し、核兵器削減のための措置を策定する必要性を促すために行われている。
軍備管理協会( Arms Control Assoсiation)の調べによれば、現在の核保有国は9か国。保有核弾頭数はロシアが6490、米国が6185、仏が300、中国が290、ブラジルが200、パキスタンが160、インドが140、イスラエルが90、朝鮮が30。ただし同協会はこれらの数値はあくまで評価にすぎず、実際の数値は各国が情報を隠蔽しているために不明と断っている。