『日本の物語』がロシアで人気の秘訣は?
「キリル・チョルシキンのイラストレーションが入った『日本の物語』を注文したい」「『日本の物語』の再版予定は?」「チョルシキンのイラストのポストカードを発売して!いつまで待てばいいの!?」このようなコメントがオンライン書店のウェブサイトにたくさん書き込まれている。残念! キリル・チョルシキンのイラストが添えられた『日本の物語』は、余程のラッキーでなければ手に入らない。すでに出版された書籍はすでにずっと昔にうりきれとなっており、すでに持っている人も手放そうとしない。
日本でアニメの主人公になった気分だった
チョルシキンは初版本が出版されるとすぐに有名人になった。スプートニクは本人に対して「これは幸運な偶然だと思うか?」と尋ねた。
「誰でも、自分を一定の状態に導いた出来事を客観的に評価することはできません。自分の努力の成果なのだと厚かましくも思うかもしれませんが、実際には、大きな流れに偶然、巻き込まれただけかもしれません。自分の成功あるいは失敗の原因は分かりませんし、今後も決して分からないでしょう。『日本の物語』の2冊目の発行はドロファ出版社からの注文でした。それに同意したのには2つの理由があります。まず『十の夜』は有名な作品で素晴らしい素材なので、それを扱えることは大きな幸せだということ。もうひとつは、素晴らしいデザイナー、アーティスト、経験豊富な職人たちと仕事ができるまたとない機会だったということです。」
「磯崎新は歌川国芳の有名な浮世絵から飛び出したサムライのようです。彼の講演をモスクワで何度か聞いたことがあり、彼の思考のタイプに感銘を受けました。彼の話を聞いて、どのようにしてアイデアが生まれ、そのアイデアが建築物、設計、インスタレーションという形で実現されていくのかを見られました・・・」
日本に行ったときの印象について、キリル・チョルシキンはとても短く書いている。「日本の演劇の首都である富山へ行った。そこで展覧会をした。東京と戸賀にも行った・・・まるで宮崎駿の映画の中に飛び込んだようだった。アニメ『アキラ』『パプリカ』『鉄コン筋クリート』の主人公になったような気分だった。」
イラストレーションが独り立ちする
『日本の物語』以外にも、チョルシキンのイラストレーションが入ったものでは、プーシキンの『漁師と魚の物語』、J・R・R・トールキンの『農夫ジャイルズの冒険』なども有名だ。また、チョルシキン自身が物語を書いた少女アリスが主人公の一連の本にも触れておかなければならない。2010年にChelushkin Handcraft Booksプロジェクトがスタートし、本のイラストレーションが「独り立ち」するようになった。それは、プリント画や大型絵はがきなどのコレクションであり、最高のイラストレーターの作品を細かいニュアンスまで見ることのできるものだ。スプートニクのインタビューにチョルシキン自身は次のように語っている。
「Chelushkin Handcraft Booksはアートプロジェクトです。何かの商品を作るという目的はなく、このフィールドで芸術作品を作るという課題があるだけです。ファンが何に一番興味を抱くのか、私は一度も考えたことがありませんでしたし、どうやって知ることができるのかさえ分かりません・・・」
キリル・チョルシキンの芸術は本のイラストレーションにとどまらない。彼の作品はモスクワのトレチヤコフ美術館にも、イタリアのMuseum of Modern and Contemporary Art of Bozenにも、ルートヴィヒ美術館(ドイツ)にも、石橋美術館にも収蔵されており、ロシア国内外の個人コレクションもある。『日本の物語』のイラストレーションはこちらでご覧いただける。