「宮崎駿の世界に来たようだった」 日本の物語のイラストレーターのインタビュー

かつてレフ・トルストイが大衆化した日本の物語に対する需要が現代ロシアで高まっている。そうした物語はたくさんあるが、すべてがそうなのではなく、ロシアで最も神秘的で傑出したアーティストの一人であるキリル・チョルシキンのイラストレーションが添えられたものが大人気となっている。これらの本はすでに希少本となっている。
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『日本の物語』がロシアで人気の秘訣は?

「キリル・チョルシキンのイラストレーションが入った『日本の物語』を注文したい」「『日本の物語』の再版予定は?」「チョルシキンのイラストのポストカードを発売して!いつまで待てばいいの!?」このようなコメントがオンライン書店のウェブサイトにたくさん書き込まれている。残念! キリル・チョルシキンのイラストが添えられた『日本の物語』は、余程のラッキーでなければ手に入らない。すでに出版された書籍はすでにずっと昔にうりきれとなっており、すでに持っている人も手放そうとしない。

「宮崎駿の世界に来たようだった」 日本の物語のイラストレーターのインタビュー

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ほかでもないこの本が大人気の秘密は簡単だ。ヴェーラ・マルコワの素晴らしい翻訳とキリル・チョルシキンの真に贅沢なイラストレーションが組み合わされているからだ。この本がすぐに国際ビエンナーレに出展され、コレクターの注目の的となったのも伊達ではない。キリル・チョルシキンのイラストレーションが入った『日本の物語』の初版は1994年に10万部で出版された。当時、モスクワ建築大学の学生だった彼は、本のイラストレーション、ましてや日本の要素を含んだ本のイラストレーションを描いた実務経験はなかった。しかし、2002年に2冊目が出版される頃には、彼自身が「数多くの素材を持っており、日本の道具、武器、男性と女性の衣装、特別な時の服装と日常の服装、日本にどんな植物があるかなどを知っている」と述べるまでになっていた。 イラストレーションの背景は意識的かどうか分からないが、有名な日本の画家である歌川広重や葛飾北斎の作品を連想させる。物語に登場する鮮やかで時としてグロテスクなキャラクターは、キリル・チョルシキンの想像力の賜である。

日本でアニメの主人公になった気分だった

チョルシキンは初版本が出版されるとすぐに有名人になった。スプートニクは本人に対して「これは幸運な偶然だと思うか?」と尋ねた。

「誰でも、自分を一定の状態に導いた出来事を客観的に評価することはできません。自分の努力の成果なのだと厚かましくも思うかもしれませんが、実際には、大きな流れに偶然、巻き込まれただけかもしれません。自分の成功あるいは失敗の原因は分かりませんし、今後も決して分からないでしょう。『日本の物語』の2冊目の発行はドロファ出版社からの注文でした。それに同意したのには2つの理由があります。まず『十の夜』は有名な作品で素晴らしい素材なので、それを扱えることは大きな幸せだということ。もうひとつは、素晴らしいデザイナー、アーティスト、経験豊富な職人たちと仕事ができるまたとない機会だったということです。」

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チョルシキンが初めて日本を自分の眼で見たのは2006年のこと。チョルシキンは富山県の福野文化創造センターで、1500の人形からなる数メートルのタワーを伴ったビデオ・インスタレーション『Snow people』を開催したのだ。空気のような軽さと同時に重厚さを備えた作品は、日本人建築家の磯崎新が設計し、2019年にプリツカー賞を授賞した中国の深圳圖書館に並ぶものがある。あるときキリル・チョルシキンは、謎めいた日本の心と物事の本質に迫る能力を備えた磯崎新に大きな関心を抱いていると語っていた。

「磯崎新は歌川国芳の有名な浮世絵から飛び出したサムライのようです。彼の講演をモスクワで何度か聞いたことがあり、彼の思考のタイプに感銘を受けました。彼の話を聞いて、どのようにしてアイデアが生まれ、そのアイデアが建築物、設計、インスタレーションという形で実現されていくのかを見られました・・・」

日本に行ったときの印象について、キリル・チョルシキンはとても短く書いている。「日本の演劇の首都である富山へ行った。そこで展覧会をした。東京と戸賀にも行った・・・まるで宮崎駿の映画の中に飛び込んだようだった。アニメ『アキラ』『パプリカ』『鉄コン筋クリート』の主人公になったような気分だった。」

「宮崎駿の世界に来たようだった」 日本の物語のイラストレーターのインタビュー

イラストレーションが独り立ちする

『日本の物語』以外にも、チョルシキンのイラストレーションが入ったものでは、プーシキンの『漁師と魚の物語』、J・R・R・トールキンの『農夫ジャイルズの冒険』なども有名だ。また、チョルシキン自身が物語を書いた少女アリスが主人公の一連の本にも触れておかなければならない。2010年にChelushkin Handcraft Booksプロジェクトがスタートし、本のイラストレーションが「独り立ち」するようになった。それは、プリント画や大型絵はがきなどのコレクションであり、最高のイラストレーターの作品を細かいニュアンスまで見ることのできるものだ。スプートニクのインタビューにチョルシキン自身は次のように語っている。

「Chelushkin Handcraft Booksはアートプロジェクトです。何かの商品を作るという目的はなく、このフィールドで芸術作品を作るという課題があるだけです。ファンが何に一番興味を抱くのか、私は一度も考えたことがありませんでしたし、どうやって知ることができるのかさえ分かりません・・・」

キリル・チョルシキンの芸術は本のイラストレーションにとどまらない。彼の作品はモスクワのトレチヤコフ美術館にも、イタリアのMuseum of Modern and Contemporary Art of Bozenにも、ルートヴィヒ美術館(ドイツ)にも、石橋美術館にも収蔵されており、ロシア国内外の個人コレクションもある。『日本の物語』のイラストレーションはこちらでご覧いただける。

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