なぜ橋本聖子氏なのか?
2019年9月、東京オリンピック・パラリンピック担当大臣に橋本聖子氏が任命された。オリンピックに7回以上出場したことのある世界でたった13人、アジアで唯一の女性である。橋本聖子氏は膨大な経験を持ち、類い稀なる運命を歩んできたスポーツ選手であり、彼女自身も、オリンピックを内側から理解していることが大きな優位性をもたらし、この仕事で大きな助けになっていると語っている。
パラリンピックのアスリート、あるいはオリンピックのアスリートというふうな違いもあるように、選手目線でしかわからないところがありまして、それは輸送の問題、あるいは食の問題。そういったものも含めて、アスリートならではの視点というのはなかなか全体にはわかりえないところがあるというふうに思いますので、そういったところというのは、やはりする人がいて、見る人、そして支える人、でこういった全体像をどの部分においても経験してきた人間しかわからないところをしっかりとやって行きたいというふうに思っています。」
橋本大臣は自分が任命されたのは運命的だと考えている。というのも、彼女は1964年のオリンピック開幕5日前に生まれ、オリンピックという大イベントにいたく感銘を受けた父親が聖火の最初の文字をとって聖子と名付けたのである。
彼女の人生に連続して起こった悲劇さえも橋本氏の天命に対する確信を変えることはなかった。その悲劇とは小学校のときに発症した深刻な腎疾患であり、その後のPTSDによる呼吸筋不全症であり、医療事故により感染したB型肝炎である。こうした苦しみにもかかわらず、橋本氏はオリンピック史上最も成功した女性スポーツ選手の一人となった。彼女のスローガンは「人間力なくして競技力向上なし」である。
今後の課題は?
橋本氏によると、今年の東京オリンピックが1964年に比べてかなり運営が難しいことは数字が最もよく表しているという。56年前のオリンピックには93の国と地域が出場し、20競技、163種目が行われたが、今年は207の国と地域が出場し、33競技、339種目が行われる予定だ。出場者の数は約2倍(前回は約5000人、今回は1万2000人以上)だ。
問題は数字だけではなく、この大きなスポーツの祭典のあらゆる側面を予め考慮しておかなくてはならないことにある。主要なものを挙げてみよう。
最近はこれに加えて、日本で新型肺炎が確認されたことでオリンピック前の追加的な衛生対策も必要となっている。
ふたつ目が輸送対策だ。橋本氏の手元の予測によると、インバウンドは7千万人になるという。目標は輸送の質と確保だけでなく、都市部の交通量の3割の削減だ。というのも、五輪が住民の日常生活に悪影響を及ぼさないことが重要だからだ。すでに混雑緩和のために休日を移動させることも決まっている。
もうひとつが暑さ対策だ。橋本氏によると「日本の暑さに慣れていない外国の方向けの熱中情報の発信や外国語で対応可能な救護体制の整備、ハード・ソフト面で取り組みが進められている」という。競歩とマラソンの会場をやむなく東京から札幌に変更したのもそのひとつだ。
そして最後に飲食の問題だ。ラグビーワールドカップではスタジアムで深刻な飲食物不足が露呈した。オリンピック・パラリンピックでは同様のことが起こらないよう努めている。
厳しい質問
これについて橋本氏は、そのような推測が語られるのにはさまざまな理由があるが、それが決して正しいわけではないと回答した。とりわけ、例えば、余分な建設コストが指摘されることがあるが、大臣によると、仮説の競技場を建設する代わりに意識的に既存の施設の活用に重点を置いたのだという。なぜなら、厳しい建築基準があるため、仮設の競技場でも結局はとても高くつくからだという。
橋本氏は次のように付け加えた。「どんどんコストがかさんでいるというふうな計算があるんではないかというふうには言われているんですけれど、実は東京大会だから整備をする、あるいは建築する以外に、必ずこれは必要であるという経費ものも、全て重なって合計金額として出されてたということがあります。何れにしても、3兆円を超えるといったことは全くありませんで、今、直接的にオリンピック・パラリンピックの大会に関係する予算ということに関して言えば、全く経費というものは増額はしていないのが現状であります。例えば、オリンピック・パラリンピックに関連するということがひとつ入っているだけで、宇宙衛星ひまわりもオリンピックの予算ではないかということでそこに組み込まれたこともあります。そういったことはオリンピックだからという予算ではないもので、日常的に必要なものの予算と変わりなくあるものですから、まったく経費がかさんでいることはありえないことです。」
「やはり、(復興は)100%ということはないというふうに思いますけれども、ただこのオリンピック・パラリンピックが決定をした6年半前では、確かに、それどころじゃないんではないかというような県民の皆さんの声はありました。ただ、それによって全くそれがマイナスになるということは考えていない人が多かったのも確かであります。反対意見は当然ありましたけれども、でもほとんどの方々は2020年という大きな目標があることによって復興するスピードを上げて行く力に変えて行くんだということは確かに力になりまして、そのために福島、あるいは宮城、岩手といった被災地を中心として復興の加速、そして持続可能な社会を作り上げて行くこと、そして夢と希望、感動、そういったものが被災地だからこそ感じ取ることができる対策、こういったものを国をあげてやってきてくることによって、特に、被災地の子供達は大変な歓迎の中で今取り組みをしていただいていることになっていると思います。」
「未だ仮設住宅で暮らしている方々もたくさんいるわけでありますけれでも、こういったことを1日も早くしっかりと解決するためにはオリンピック・パラリンピックがあるないに関わらずやっていかなければいけないことですので、これには、今、全力を尽くしているところです。
ご指摘の、特に聖火リレーがスタートするJ―VILLAGEの線量の問題についてですが、これは東北電力、あるいは環境省がしっかりと調査をした結果、軽減されておりまして、未だその問題に対しては全く問題ないということであります。ただ、ご指摘いただいたように、しっかりそういったものは日々調査が必要であると思いますので、各省庁、連携をとってこういった問題がしっかりと科学的な根拠の元に安全性が確保されるための発信をしっかりやってきたいと思って言います。」
はたして橋本大臣は野心的な計画を実現し、オリンピック実施の道に立ちはだかる困難を乗り越えることができるのか、まもなく分かるだろう。スプートニクは今後も状況を注視し、最新のニュースを読者の皆さまにお伝えしていく。