東京五輪延期、新首相誕生、宇宙開発分野の進歩・・・ 日本のこの1年を振り返る

2020年は間違いなく、喜ばしくない出来事の多い1年であった。中でもその筆頭に挙げられるのは、100万人以上の生命を奪った新型コロナウイルスの感染拡大に伴うものである。しかし、そんなコロナ禍の1年の中にも驚愕の事件、明るい出来事、画期的な進歩も見られた。年末に向けて、スプートニクでは2020年の特筆すべき出来事をまとめた記事を、シリーズでお届けする。第一回目は、日本で起きたもっとも大きな事件をピックアップしてお伝えしたい。
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① ゴーン元会長の逃亡劇

2020年の新年を前に起きた衝撃的な大事件は、会社法違反(特別背任)などで起訴された日産自動車のカルロス・ゴーン前会長が、保釈中に、楽器ケースに隠れて海外に逃亡した事件である。ゴーン被告の罪は懲役10年に相当するとされていた。しかし、日本政府は保釈金により、ゴーン前会長を保釈し、再逮捕した後、再び保釈していた。海外に逃亡したゴーン前会長は、1月7日にレバノンのベイルートで記者会見を開き、「日本で死ぬか、逃亡するか」という選択に迫られていたと述べた。

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日本政府の要請により、国際刑事警察機構(ICPO、インターポール)は国際逮捕手配書に相当する赤手配(レッド・ノーティス)を発行した。しかし11月末、国連人権理事会作業部会は、ゴーン前会長の逮捕について、「恣意的な拘禁」にあたるとする意見書を公表、日本政府に対し救済策を求め、日本を驚かせた。日本側はこれを事実誤認だとし、到底受け入れることはできないと反論している。


② 新型コロナウイルス―新たな脅威と新たな現実

新型コロナウイルスの感染拡大との戦いは、日本社会の強さと弱さの両方を露呈した。日本で確認された第1例目の新型コロナ患者は、1月6日に中国から入国した日本人であった。しかしこの日本人が病院に収容されたのは10日後のことであった。

1ヶ月後、横浜港でクルーズ船「ダイアモンド・プリンセス」号で検疫が実施された際には、毎日、新規感染者が確認され、世界に衝撃を与えた。2月26日時点で、4,061人の乗員乗客のうち、陽性反応が出た人の数は705人にも上った。

3月11日、世界保健機関(WHO)は感染が拡大する新型コロナウイルスについて、「世界的な大流行」を意味する「パンデミック」であると宣言したが、日本での感染者の増加はかなり緩やかなものであった。もっとも、多くの日本人は、こうした状況となったのは、自粛、規制が成功したからではなく、国内で実施されていたPCR検査の数が少なかったからだと認識している。日本政府は、4月16日になってようやく緊急事態宣言を発令。娯楽施設、その他、人が大勢集まる場所はほぼすべて閉鎖された。多くの企業が営業を停止したり、人員削減を決めたり、または在宅勤務(リモートワーク)体制に切り替えた。さらに4月には、国会議員の今後1年の歳費を20%削減するとの決定が下された

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国民や中小企業に対する支援を行う緊急経済対策には、日本の国民総生産(GDP)の20%に相当する総額およそ108兆円が拠出され、功を奏した。こうした措置には批判もあったが、コロナ感染予防対策をしっかり取りながら、経済の損失を最小限に抑えるというバランス点を見出すのはきわめて困難な課題であった。

コロナウイルスの感染拡大は、国内での「非接触型の技術」を劇的に発展させるきっかけとなった。とりわけロボットは、銀行からレストランに至るあらゆる分野で、広く導入されるようになった。一方、オンライン授業への移行を余儀なくされた学校教育は、教育現場でデジタル技術を活用するための準備が整っていないことが判明した。2019年12月に公表されたPISA(Programme for International Student Assessment=国際学力調査)のデータによれば、日本は、家庭におけるパソコン利用率において、経済協力開発機構(OECD)の中で最下位であった。


③ コロナにより東京五輪の費用が膨張

3月24日、五輪開催まで4ヶ月となった時点で、日本政府は、国際オリンピック委員会(I OC)との協議の結果、2020年の東京五輪を来年に延期すると発表した。聖火はそのまま日本に残し、「東京五輪2020」という大会名称も維持されることが決定した。

大多数の選手たちがこれが最良の方法だとして、政府の決定に同意するとの立場を表した。また11月にはI OCのトーマス・バッハ会長が日本を訪問し、予定通り2021年に東京五輪を開催すると明言。しかし、観客数については削減する可能性があるとした。一方、12月4日、東京五輪の延期による追加費用とコロナ対策費用の合計は2,940億円、大会経費は現時点で総額1兆6,440億円に達する見通しであることが明らかとなった。

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④ 令和時代の宇宙戦争

5月1日、日本では新しい天皇即位から1年が祝われた。徳仁皇太子の新天皇即位に伴い、日本では元号が「平成」から「令和」へと変わった。しかし新型コロナウイルスの感染拡大により、即位1年を祝う行事は行われなかった。5月18日、自衛隊に初めて、宇宙専門部隊となる「宇宙作戦隊」が創設された。公式には、外国による日本の人工衛星への攻撃や、宇宙ごみ(スペースデブリ)などの監視などの任務を担う。


⑤ 原爆投下から75年

8月6日と9日、広島と長崎では、原爆投下から75年という節目に当たる「原爆の日」に平和記念式典が執り行われた。しかしこちらもコロナウイルスのため、参加者の数は制限されることとなった。スプートニクでは、特派員による現地取材をまとめた記事を掲載した。

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⑥ 安倍首相辞任

8月28日、2012年から首相を務めた安倍晋三氏が健康上の理由から辞任を表明した。国際社会は、この自発的な辞任を然るべきことと受け止めた。

しかし、辞任を表明する直前、安倍前首相の支持率は、在任中、最低レベルにまで低下していたことから、専門家の間では、これが辞任のきっかけとなったのではないかとの見方も出ていた。ロシア科学アカデミー東洋学研究所日本研究センターのウラジーミル・ネリドフ研究員は、「戦後の歴史上、日本では、有権者からの信頼を失ったときに首相が任期満了を待たずに辞任するという状況はなんども繰り返されてきました。自民党は、新たな首相を据えることで信頼を回復させるという手法で、数十年もの間、権力を維持してきたのです」と述べている。

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9月16日、菅義偉氏が新首相に就任。デフレからの脱却、経済刺激といった方向性において、安倍前首相の政策を継続していくと表明した。


⑦ 新貿易協定 

10月23日、日本と英国は「日英包括的経済連携協定(EPA)に署名した。ロシアの経済研究センター「開かれた経済」のコンスタンチン・キセリョフ所長は、この新協定の署名は、両国の間に激しい対立や問題がなく、双方に発展した市場と合致する利益があることから実現したと指摘する。「ブレグジット(英国の欧州連合からの離脱)以降、それまで英国が日本と結んでいた貿易協定は2021年1月1日に期限切れとなるものでした。もし新たな協定に署名しなければ、両国の貿易関係は追加関税が検討されている世界貿易機関(WTO)の規定によって調整されることになるのです。そこで普通は数年かかる新協定への署名が、今回は短期間で行われました」。

11月15日、日本と中国を含むアジア太平洋地域の15カ国は、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に合意、署名した。20億人以上の消費者を持つ、国内総生産(GDP)28兆ドル規模の世界最大級の自由貿易圏となる。


⑧ はやぶさのミッション

12月5日、小惑星探査機「はやぶさ2」が6年間の旅を終え、採取した惑星リュウグウの試料が入ったカプセルを地球に投下した。12月8日、オーストラリアで回収されたカプセルは、神奈川県相模原市にある宇宙航空研究開発機構(JAXA)の研究所へと運ばれた。カプセル内の試料は、地球上の生命誕生と太陽系の進化に関する今後の研究を前進させるものと期待されている。

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