コロナ禍の科学技術。2020年の主なできごと

2020年は人類の記憶に永く刻まれることになるだろう。しかし、科学技術の偉大な成果によって記憶されるのではない。年初以来、かつてないほどのリソースがコロナウイルス・ワクチンの開発に注ぎ込まれてきた。ワクチンが複数の国々(ロシア、アメリカ、中国、イギリスなど)で誕生したことは、今年の科学界における最も価値ある成果だったことは間違いない。しかし、その他の分野でも科学は前進を続けていた。2020年に私たちが感謝すべきコロナウイルス以外の科学技術の成果をスプートニクがお伝えする。
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はやぶさ2

2020年12月6日、探査機「はやぶさ2」が地球から3億4000万キロメートル離れた小惑星リュウグウから土壌サンプルの入ったカプセルを地球に持ち帰った。オーストラリアに無事に着地したカプセルには予想量の50倍の土壌が入っていた。これによりすべてのオペレーションは大成功となった。

的中それとも外れ? 2020年に関する予測はどうなったか
JAXAはカプセル内に黒い砂とガスが発見されたと発表した。砂粒はかなり大きく、ものによっては0.1グラムに達するものもある。探査機「はやぶさ2」はミッション中にサンプル採取のために小惑星への着陸を2回成功させた。「はやぶさ2」は衝突装置を使って小惑星リュウグウの表面を「射撃」し、世界で初めて小惑星の表面に人工のクレーターを作ることに成功した。これにより天体表面より深いところで飛散した塵や土壌を採取することができたのだ。研究者らによると、小惑星の地層サンプルには太陽系誕生時の物質の特性が保たれており、これこそが太陽系出現と生命誕生の解明に人類を近づけるものだという。

中国の月探査機

中国の探査機「嫦娥5号」のおかげで40年以上ぶりに月の石が地球にもたらされた。

探査機は11月24日に打ち上げられ、12月1日に月の表側の予定地点に着陸。その後、2日間、着陸モジュールに装備されたドリルやロボットアームを使って月の土壌を採取し、採取したサンプルを離陸モジュールの専用空間に収納した。ミッション期間は23日。中国はアメリカ、ソ連に次いで、同様のミッションを完遂した3番目の国となった。

地球に持ち帰った月の土壌は合計1700グラム。

イーロン・マスクによるチップ埋込み

オンラインで過ごした年 2020年に起きた印象的な出来事
晩夏、イーロン・マスク氏がニューラリンク(Neuralink)プロジェクトを発表した。このプロジェクトは人間の脳とコンピューターを頭蓋に埋め込んだチップを使って繋ぐというものだ。

マスク氏は、チップを人間に埋め込むのにかかる時間は1時間未満で、開発中の特殊ロボットが埋込手術を行うと語った。チップは頭の外側からは全く目立たず、埋め込んだ後に小さな傷が残る程度だという。

マスク氏はこのチップを使って、世界中に患者の多い神経疾患を解決しようと考えている。そうした疾患には記憶喪失、聴力や視力の喪失、麻痺、うつ、不眠症、重度の疼痛、失神、不安、依存症、脳卒中、脳損傷などがある。マスク氏はガートルードという名前のブタにチップを埋め込み、このチップの可能性を紹介。ガートルードがくしゃみをしたり食事をしたりすると、コンピューターが脳の強いシグナルを検知し、それが画面上に伝送された。

今後はニューラリンクのチップを人間でテストするとマスク氏は約束した。そのために必要な許認可取得の作業はすでに行われている。

クルードラゴン

春、イーロン・マスク氏が創業したスペースX(Space X)社の宇宙船「クルードラゴン」が初めて国際宇宙ステーションへの有人飛行を行った。民間企業による史上初のミッションである。

これはスペースシャトル・プログラムが終了した2011年以来、アメリカにとって初めての自国宇宙船による有人飛行である。「クルードラゴン」はNASAが国際宇宙ステーションへの人の輸送をロシアの「ソユーズ」に頼らず実施するために必要だ。「ソユーズ」は2011年のスペースシャトル・プログラム終了以降、国際宇宙ステーションに到達するための唯一の手段だった。2019年、宇宙飛行士1人を「ソユーズ」で打ち上げるための料金は、NASAの監察官によると、8600万ドルだった。

新たなアングルから見た太陽

7月、NASAと欧州宇宙機関(ESA)は観測史上最も近距離となる7700キロメートルの距離から撮影した太陽の映像を公開した。公開された映像は、今年2月に打ち上げられた探査機「ソーラー・オービター」から地球に送られたものである。この太陽探査機は太陽と太陽圏を複合的に調査するためのもので、データ取得には探査機に装備された10種のさまざまな観測機器を使用する。

2020年1月には、地球から撮影された最も精細な太陽の映像が公開された。この映像はハワイにあるアメリカのダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡で撮影されたものである。映像には沸騰するプラズマなど、太陽表面で起こっているすべてのプロセスが詳細に映っている。拡大映像には地球の陸地全体よりも少し大きい面積の光球の微細構造が示されている。得られたデータは、研究者が太陽フレアの形成を予測し、太陽の活動全体を研究する助けとなる。

北極

10月、ロシアが世界最強の砕氷船「アルクチカ」の運用を開始した。「アルクチカ」は厚さ3メートルの氷を割って進むことができ、北極圏で船舶を先導するために使用される。北極海だけでなく、北極圏の河川の河口も航行できる構造をもっている。砕氷船「アルクチカ」は全長173.3メートル、全幅34メートル、排水量3万3500トン。

現在、ロシアは原子力砕氷船団を有する唯一の国である。

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