コロナ対策に関して決定を下す3人の主要人物
日本のコロナ対策において、決定権を持つのは首相、知事、そして保健所である。しかし驚くべきことに、この中でもっとも権限が少ないのが首相である。
もう一つ重要なのは、法律的には知事と保健所は首相から独立しています。なので、首相は知事や保健所に対して直接指示を下すことができません。実際の感染症対策というのは知事と保健所がしています」。
竹中氏によれば、感染症対策において、誰がより重要な権限を持っているのかについて、以下のように説明している。
竹中氏:「知事は、まず、感染した人を入院させることができます。知事は医療体制を提供することに責任を持っています。それから休業を要請することができます。これから我々に対して外出を自粛するよう要請することもできます。
こういう知事と保健所が持っているのが感染症対策にとって非常に重要な政策なわけです」。
コロナ対策における基準統一の問題
この3者は、効果的なコロナ対策の実施に向けた努力を結集すべきであると思われるが、2020年、必ずしもそうはならないことが明らかになった。
竹中氏:「首相は新宿でやっていることに他の市長が続いてくれることを期待したんです。しかし、それに従った市長はほとんどいなく、結局、そういう検査をした保健所もあんまりないということです。保健所に対して直接指示を下す権限がないので、保健所がそれに従わなくてもどうしようもないということです」。
もう1つの例は、GoToトラベルをめぐる状況である。新内閣を率いる菅首相は、新型コロナの感染拡大でダメージを受けた経済活動の活性化を図ることを目的に据えた。しかし、時間の経過とともに、政府内では、これが感染者増加の原因の一つとなっているのではないかという疑念が広がり始めた。GoToトラベルに関する決定を下すには、政府は小池百合子知事に意見を求めた。しかし、誰も、この問題に関して決定を下す責任を取ろうとしないという矛盾した状況となったのである。
GoToトラベル中止の決定が下されたのは、12月12日に毎日新聞が世論調査の結果を公表した後であった。この世論調査では、回答者の67%がGoToトラベルキャンペーンの継続に反対だと答え、内閣支持率は57%から40%にまで低下した。
2020年末、東京では1日あたりの感染者が1,300人を超え、1月2日、小池知事は政府に対し、緊急事態宣言の発令を求めた。
首相の権限は強化されるのか?そして制限された権限の中で、菅首相には何ができるのか?
竹中氏:「これは私も色々考えました。なぜかと言うと、一つ目の理由は、首相の権限を強くするということは知事の権限を弱くすることなので、日本では地方分権を支持する声が非常に強いので、すごい反発を受けるだろうなと思います。
二つ目の理由は、第一波を抑えたときに『日本モデルでうまくやりました』と誇示しちゃったわけです。 なので、体制を変えるということはこれまでの体制に不備があったということを認めることなので、そうすると前の政策の失敗を認めなければならないので、それは難しかったということです。菅さんは前の政権の官房長官だったので、そうすると、前の政権での責任を問われることになりますから」。
しかし、概して、竹中氏は首相の権限を強化する必要があるということには賛成の立場だと述べている。
なぜかと言うと、感染症が広がるので、A県の指示が十分な感染対策を取らなかった場合、それは B 県に広がるわけです。しかし B 県の住民はA県の知事を選挙によって落選させることができないわけです。落選させるのは言い過ぎですけれど、選挙でA県の知事を責任を問うことはできないわけです。なので、国が責任を取るという形にするほかありません」。
同時に竹中氏は、権限に制限があっても、菅首相には現在の状況を改善するようなさまざまな策を講じることができるはずだと主張する。そんな方策の一つが、接客と伴う飲食店の問題を解決することだと竹中氏は言う。
竹中氏:「例えば、東京の23区の区長に全員呼びかけて、何かお困りのことありませんかと。それから先ほど言った接客を伴う飲食店が大問題ですので、それに集中することです。新宿だけを検査するだけでなく、最低、港区も検査すること。港区は東京で2番目に感染がひどい区ですから。
そして、もう1つ重要な課題は、病院における状況を改善することである。
竹中氏:「あと、病院が何故十分にコロナ患者を受け入れてくれないのかっていうが大問題です。これは本当に原因がなかなかわからないです。国が本当に、医師会あるいは民間病院の経営者と胸筋を開いて話し合っているかといえば、どうもそうではないと思います。 だから、私は、権限を使って政策をすべきだと一つの考え方がありますけれども、首相が向こうの理解を得て、協議をして政策を実施してくということも十分に考えられるので、そういうことをこれまで政権側はしてきたのかは質問です」。
さらに、竹中氏は、現在の緊急事態宣言は前回と同様、おそらく2月7日に、1ヶ月延長されるだろうと強調する。というのも、感染状況を改善するのに、1ヶ月という期間は不十分だからである。政府が2月末までにワクチン接種を開始できるかどうか、また国民全員に接種を行うのにどれくらいの時間がかかるのかも現時点では不透明のままである。そこで、賢明なコロナ対策の実施に関する問題は、今も変わらず重要なものなのである。