新型コロナウイルス

首相にはコロナ対策の権限がほとんどない では誰が責任を負うのか? 専門家が語る

新型コロナ対策において、日本人の多くは、菅義偉首相から、明確で分かりやすい指示が出されるのを期待している。しかし、日本国憲法では、首相はこうした問題に関してほとんど権限がないのが実情である。では、実際にこの問題を解決するのは一体誰なのか?首相の権限が強化される可能性はあるのか?より効果的なコロナ対策を実施するために菅首相は何ができるのか?竹中治堅・政策研究大学院大学教授がブリーフィング会見を開き、こうした問いに答えた。
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コロナ対策に関して決定を下す3人の主要人物

日本のコロナ対策において、決定権を持つのは首相、知事、そして保健所である。しかし驚くべきことに、この中でもっとも権限が少ないのが首相である。

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竹中氏:「これは意外に思われるかもしれませんけれども、首相は感染症に対してはほとんど権限を持っていません。では、首相は何ができるかって言うと、緊急事態を宣言することと、知事がする色んな政策に対して予算をつけてあげるということぐらいしかできません。

もう一つ重要なのは、法律的には知事と保健所は首相から独立しています。なので、首相は知事や保健所に対して直接指示を下すことができません。実際の感染症対策というのは知事と保健所がしています」。

竹中氏によれば、感染症対策において、誰がより重要な権限を持っているのかについて、以下のように説明している。

竹中氏:「知事は、まず、感染した人を入院させることができます。知事は医療体制を提供することに責任を持っています。それから休業を要請することができます。これから我々に対して外出を自粛するよう要請することもできます。

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保健所は有名になった PCR検査を受けさせる権限を持っています。それから入院先を調整する機能を持っています。それと、疫学調査を行います。疫学調査は陽性になった人がどういう経緯で感染したのかを調べるということと、その陽性になった人が誰と接触して誰を感染させた可能性が高いのかを調べています 。

こういう知事と保健所が持っているのが感染症対策にとって非常に重要な政策なわけです」。

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この3者は、効果的なコロナ対策の実施に向けた努力を結集すべきであると思われるが、2020年、必ずしもそうはならないことが明らかになった。

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たとえば、6月に新型コロナ感染拡大の第二波が襲来したとき、安倍前首相は、感染者の患者が多数発生している接待を伴う飲食店で検査を実施する必要があるとの考えを示し、東京都新宿区で、検査が実施されるようになった。しかし、その他の地域がこれに続くことはなかった。

竹中氏:「首相は新宿でやっていることに他の市長が続いてくれることを期待したんです。しかし、それに従った市長はほとんどいなく、結局、そういう検査をした保健所もあんまりないということです。保健所に対して直接指示を下す権限がないので、保健所がそれに従わなくてもどうしようもないということです」。

もう1つの例は、GoToトラベルをめぐる状況である。新内閣を率いる菅首相は、新型コロナの感染拡大でダメージを受けた経済活動の活性化を図ることを目的に据えた。しかし、時間の経過とともに、政府内では、これが感染者増加の原因の一つとなっているのではないかという疑念が広がり始めた。GoToトラベルに関する決定を下すには、政府は小池百合子知事に意見を求めた。しかし、誰も、この問題に関して決定を下す責任を取ろうとしないという矛盾した状況となったのである。

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竹中氏:「政府は知事が要請してきた場合には止めてもいいという立場を取ります。しかし、小池知事は、それは国の政策なんだから国で判断してください、という立場を取ります」。

GoToトラベル中止の決定が下されたのは、12月12日に毎日新聞が世論調査の結果を公表した後であった。この世論調査では、回答者の67%がGoToトラベルキャンペーンの継続に反対だと答え、内閣支持率は57%から40%にまで低下した。

2020年末、東京では1日あたりの感染者が1,300人を超え、1月2日、小池知事は政府に対し、緊急事態宣言の発令を求めた。

首相の権限は強化されるのか?そして制限された権限の中で、菅首相には何ができるのか?

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竹中氏は、多くの人々の反応から判断して、国民は首相が対応策を講じるべきだと期待していると指摘する。そしてこの期待は十分に理解できるものである。なぜ、首相の権限強化に関する問題は依然、解決されないままなのか。この問いに、竹中氏は次のように答えている。

竹中氏:「これは私も色々考えました。なぜかと言うと、一つ目の理由は、首相の権限を強くするということは知事の権限を弱くすることなので、日本では地方分権を支持する声が非常に強いので、すごい反発を受けるだろうなと思います。

二つ目の理由は、第一波を抑えたときに『日本モデルでうまくやりました』と誇示しちゃったわけです。 なので、体制を変えるということはこれまでの体制に不備があったということを認めることなので、そうすると前の政策の失敗を認めなければならないので、それは難しかったということです。菅さんは前の政権の官房長官だったので、そうすると、前の政権での責任を問われることになりますから」。

しかし、概して、竹中氏は首相の権限を強化する必要があるということには賛成の立場だと述べている。

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竹中氏:「この感染症というものの性質上これは最終的には『首相の権限を強化するんだから、あなたがちゃんと責任とってくださいね』という形にするほかないと思っています。

なぜかと言うと、感染症が広がるので、A県の指示が十分な感染対策を取らなかった場合、それは B 県に広がるわけです。しかし B 県の住民はA県の知事を選挙によって落選させることができないわけです。落選させるのは言い過ぎですけれど、選挙でA県の知事を責任を問うことはできないわけです。なので、国が責任を取るという形にするほかありません」。

同時に竹中氏は、権限に制限があっても、菅首相には現在の状況を改善するようなさまざまな策を講じることができるはずだと主張する。そんな方策の一つが、接客と伴う飲食店の問題を解決することだと竹中氏は言う。

竹中氏:「例えば、東京の23区の区長に全員呼びかけて、何かお困りのことありませんかと。それから先ほど言った接客を伴う飲食店が大問題ですので、それに集中することです。新宿だけを検査するだけでなく、最低、港区も検査すること。港区は東京で2番目に感染がひどい区ですから。

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しかし、色々調べてみると、この接待を伴う飲食業というのは組織化されていないんです。組織化されているサービス、ある業種というのはそのトップと話をして理解を得て協力を求めれば、相当この政策の実施は楽なんです。なので、これは本当に労力を伴う話ですけれども、組織化をするということを政府が頑張ってやってもいいかもしれない」。

そして、もう1つ重要な課題は、病院における状況を改善することである。

竹中氏:「あと、病院が何故十分にコロナ患者を受け入れてくれないのかっていうが大問題です。これは本当に原因がなかなかわからないです。国が本当に、医師会あるいは民間病院の経営者と胸筋を開いて話し合っているかといえば、どうもそうではないと思います。 だから、私は、権限を使って政策をすべきだと一つの考え方がありますけれども、首相が向こうの理解を得て、協議をして政策を実施してくということも十分に考えられるので、そういうことをこれまで政権側はしてきたのかは質問です」。

さらに、竹中氏は、現在の緊急事態宣言は前回と同様、おそらく2月7日に、1ヶ月延長されるだろうと強調する。というのも、感染状況を改善するのに、1ヶ月という期間は不十分だからである。政府が2月末までにワクチン接種を開始できるかどうか、また国民全員に接種を行うのにどれくらいの時間がかかるのかも現時点では不透明のままである。そこで、賢明なコロナ対策の実施に関する問題は、今も変わらず重要なものなのである。

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