働き方に関する動向と課題:1つ目は、多様な人材の活躍
小島氏によれば、新型コロナウイルス感染症対策により、世代を問わずテレワークの利用が増えており、多様な人材がより活躍しやすくなることが期待されている。
小島氏:「(ですので、)女性の活躍という視点においては、管理職への登用される女性が増えるよう、より責任ある仕事に担えるような施策は引き続き必要です」。
2つ目は、副業・兼業の拡充
中高年の男性の間では、キャリア意識の変化が見られる。それは副業・兼業という働き方への関心が高まっていることからもうかがえる。
加えて小島氏は、兼業・副業にはメリットが多いが、総労働時間は増えるため、長時間労働への配慮が必要となると強調する。さらに、高年齢の世代の人々は、リモートワークにおいて様々な問題に直面することが多いため、このような人々が新たな条件での働き方に順応できるよう支援することも重要だと指摘する。
3つ目は、キャリア形成支援
小島氏:「テレワークを中心として多様な働き方が広がっていく中では個々人が自身のキャリアをきちんと考えることが必要です。職場でキャリアを相談できる機会や仕組みの提供など働く全ての人に対するキャリア形成支援が重要になります」。
働く男性と女性の関心は一致するのか?
小島氏:「日本企業の問題として働く男性が多様な働き方がしづらいということが問題として挙げられます。多様な働き方をしやすい環境づくりを行うことが副業・兼業も可能としますし、家事参画をしたい男性の方は私生活の時間を増やすことにもつながりますので、それを実現していくことが問題の解決につながるのかと考えています。
実は、中高年男性の方に対して家事参画に対する現実と理想についてお尋ねしているんですけれども、その際の結果としては『もっと家事をやりたい』って言う男性の方は非常に多かったのが現状です。(ですので、)多様な働き方をしやすい環境づくりを作っていくことが色々な生き方の選択肢を増やすことに繋がるんだと言うふうに考えます」。
コロナ禍の労働市場へのインパクト
山田氏:「雇用調整助成金は雇用が維持されていることを前提とした制度ですので、雇用を失った人に対しては効果がないというのが一点目の問題です。
もう一つの問題は雇用を維持する政策ですので、産業構造を転換し、古い産業から新しい産業に移動することを妨げるという副作用があるということです」。
対応策は?
山田氏は2つの対応策があると指摘する。1つ目は、失業したにも関わらず、雇用保険を受け取ることができない人々を救うための仕組みを作り上げることに関するものである。
一方、もう1つの重要な対応策は、「シェアリング型一時就労」という仕組みだと山田氏は述べている。
山田氏:「これは、人手が過剰になった産業から人手不足にある産業や企業に人材を『レンタル』する仕組みで、これによって苦境にある産業・企業が人を解雇することなく、コロナ感染症が終わった後の事業再開に備えて人材を確保する。それから、今、職がない人についても雇用が維持されることで、生活が安定する、そういう効果が期待できます」。
その上で、山田氏は、こうした人材のレンタルは、互いに関連性のない企業間でも行えるようにすることが重要だと強調する。
山田氏:「日本には出向制度という仕組みが大企業や大企業グループの中に存在しますが、これを個別企業や企業グループをまたぐケースに適用しようという考えです。
さらにもう1つ、人材育成の仕組みを創設するためのアイデアがあるという。
山田氏:「特に農業や建設、あるいは医療、介護、それから整備・保守といった現場労働者については構造的な人手不足にありますので、今回を機会に集中的な人材育成の仕組みを作ることが必要ではないかというふうに考えています」。
最後に、コロナ禍の大きなトレンドとなったのがデジタル化である。そこで、デジタル化を利用し、すべての人々にとってより快適でより興味深い条件を作り出そうとすることが重要である。
山田氏:「COVID-19でデジタル化が進んでいます。その流れを生かし、そうしたタイプの現場労働についてもデジタル技術やロボティクスをフル活用して、人と機械の協業型の業務プロセスを創造すれば、魅力ある職場に変わっていくんではないかということを期待しています」。