2004年、バングラデシュで、オオコウモリの分泌物が含まれたナツメヤシの樹液を飲んだ人々がこのウイルスに感染した。WHOのサイトによれば、インドの病院などでは、ヒトからヒトへの感染も確認されている。ニパウイルスの潜伏期間は4日から45日間で、無症状のまま感染し、その後、深刻な呼吸器疾患、または脳炎や脳浮腫を引き起こす可能性がある。致死率は40%から75%となっている。
これまでにニパウイルスの発生は12回確認されているが、発生場所は南アジア及び東南アジアで、これはオオコウモリが生息する地域と一致している。ガーディアン紙は、「医薬品アクセス財団」のジェイアスリー・K・アイアー代表の言葉を引用し、ニパウイルスは早い速度で感染拡大し、次第にパンデミックに発展する可能性があると伝えている。
これに関連し、ウイルス学研究所アルボウイルス部門のアレクサンドル・ブテンコ部長は、「スプートニク」からの取材に応じ、ニパウイルスが、現在の新型コロナウイルスのような状況を生み出すことになる可能性は否定できないと指摘する。
「熱帯亜熱帯地域の自然界で発生した一連のウイルスの発生は、これまでは地域内の感染に抑えられてきましたが、しかしあらゆる可能性はあります。1年前、武漢で発生した新型コロナウイルスが世界中に蔓延すると誰が予想したでしょう。人間を含むすべての生物は常に外界のウイルスの危険に晒されています。しかし、そのすべてが人間に感染するわけではなく、感染したウイルスも通常、免疫系に跳ね返されます。しかし、ワクチンによって抑えられた(天然痘、ポリオ、おたふくかぜ)、あるいは薬品によって慢性疾患に変えることができた(HIV)などのワクチンに代わって、新たなウイルスが現れています。たとえば、1994年にオーストラリアで発見されたヘンドラウイルスですが、これは馬からヒトに感染します。この場合も、ニパウイルスと同様、オオコウモリから馬に感染しました。これ以外にも、パンデミックを引き起こす可能性があるウイルスは少なくとも5種類あります。しかし、多くのことが、感染症の管理と人間の行動に左右されます」。
「感染によって獲得された免疫、ワクチン接種によって獲得された免疫は、人口の60%がいわゆる「集団免疫」を獲得するために作用します。免疫を持たない人の割合が30%になれば、感染は減少していきます。ワクチンの集団接種、これまでに確立されている治療、衛生規準の遵守、移動の制限、厳格な疫病学的管理など、現在、こうしたすべてがパンデミック対策に講じられています。早かれ遅かれ、感染は弱まっていくでしょう」。
1月14日に武漢入りしたWHOの新型コロナ発生源調査団のメンバーたちは、29日に2週間の自主隔離期間を終え、作業に着手する。調査団には、中国の研究者のほか、オーストラリア、デンマーク、ドイツ、ケニア、ロシア、日本、オランダ、カタール、スーダン、英国、米国、ベトナムの専門家が含まれている。