2021年2月には、2020年夏に米国、中国、アラブ首長国連邦が打ち上げた探査機が火星に到着することになる。これら3つのミッションはすべて、火星の大気、気候条件、季節の移り変わりを調査し、火星に生命があるかどうかを調べ、火星の環境が未来の移住にどれほど適しているのかを知ることを主要な目的としている。アラブ首長国連邦の探査機「アル・アマル(HOPE)」は種子島宇宙センターから7月20日に日本のロケットで打ち上げられた。
一方、日本は2021年に初の月探査機を打ち上げる予定だ。日本の月探査機「YAOKI(ヤオキ)」は米国企業United Launch Allianceのロケットで月に輸送されることになる。日本のミッションはペイロードを月面に商業輸送するプログラムCommercial Lunar Payload Services(CLPS)がスポンサーであるため、「YAOKI」はAstrobotic社の月面着陸機「Peregrine」と一緒に打ち上げられる。
また、今年は1990年から軌道上で稼働するハッブル宇宙望遠鏡の後継機となるジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWSTまたはWebb)の打ち上げも予定されている。ウェッブ宇宙望遠鏡は、軌道上で稼働する赤外線観測用望遠鏡であり、これまでよりも観測できる波長域が大きく、感度も良くなっている。これにより望遠鏡は星や惑星系が形成される場所である星間分子雲をのぞき見ることができるのだ。
2021年3月には日本のアストロスケール社の衛星がロシアのロケット「ソユーズ」で打ち上げられる予定だ。この衛星はスペースデブリ(宇宙ごみ)除去の実証実験衛星である。とはいえ、今のところ除去するのは衛星と一緒に打ち上げられる模擬デブリで、衛星は模擬デブリ回収後、大気圏に突入することになっている。ロシア機械製造研究所の評価では、2020年12月時点の静止軌道上の物体の70%はスペースデブリだという。
ロシア宇宙飛行アカデミー準会員のアンドレイ・イオニン氏はスプートニクのインタビューで次のように語った。「ISSは初めての大規模国際プロジェクトとして1998年から運営されており、技術的にも、政治的にも、そして人道的な観点からも素晴らしい成果を挙げています。ISSが稼働を始めてからこれまでの20年強、地球上でどんな激変があろうとも、国家間にどんな衝突が生じようとも、ISSは参加する14ヶ国によって稼働を続け、新たなモジュールの接続により拡張し、新たな課題を解決し、数多くの研究を遂行した新しい飛行士たちを受け入れ続けてきました。これこそがISSの成し遂げた偉大な成果だと思います。しかし、ISSのリソースはまもなく尽きようとしており、2024年あるいは、その数年後にはミッションが終了する可能性があります。今の技術はかつてよりずっと進んでおり、月や他の惑星の開発という、より野心的なプロジェクトが生まれています。」
イオニン氏によると、研究を目的とした宇宙空間への飛行はきわめて興味深いものだが、どの国にとっても膨大な資金を要するものになるという。地球上で枯渇しつつある鉱物資源や地球上にはない資源を宇宙で採掘することの現実性や有効性を示す十分な研究はひとつもないという。
このほか、現在のテクノロジーは遺伝子修正により生命体を宇宙に適応させることが可能ですが、こうした実験は倫理的観点から禁止されています。しかし、地球では危険とされていることが、放射線があふれる宇宙という環境では必要になるのです。それは、超人類を作り出すためではなく、異なる生存環境に適応するために必要なのです。宇宙空間の開発、訓練を受けた飛行士だけでなく他の専門を持つ人々も宇宙に長期滞在できるようにすること、生命体が長期滞在し繁殖できるようにすること、こうしたことはすべて人類共通の課題を解決するために必要なのです。そして、これは幅広い国が参加する国際的で透明性のあるプロジェクトとして行われるべきです。」