フィギュア特集

コーチ替えで「せわしない」コストルナヤ 失われたコンディションをトゥトベリーゼ氏は回復出来るのか?

「こんな今日の後には明日なんかもうない!」アリョーナ・コストルナヤ(17)はロシア杯ファイナルのショートプログラム(SP)で大失敗した後、涙を浮かべ、コーチのエフゲニー・プルシェンコ氏にこの捨て台詞を吐いた。SPでコストルナヤは6位に転落、世界選手権への出場権を逃がした。が、おそらくはそれだけでなく、次の五輪出場への夢も捨てきれなかったのだろう。昨年、自分から出て行ったはずのエテリ・トゥトベリーゼ氏のチームへ舞い戻る決意を固めた。だたし、この「哀れな娘」をトゥトベリーゼ氏が受け入れるか否かはまだ明らかではない。
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フィギュア・ファンからはコストルナヤの背信行為を厳しく非難する声はよく聞かれるが、フィギュアスケートのコーチのアレクサンドル・ズーリン氏(57)は問題はそこにあるのではなく、疑念を呼ぶのはコストルナヤの現在のコンディションのほうだとして、次のように語っている。

「選手は結果に満足できなければ別の方向を試してみようとしますよ。コストルナヤがトゥトベリーゼ氏に戻ることを決意したのは、自分をスターにしてくれたのが他ならぬトゥトベリーゼ氏だからです。でもトゥトベリーゼ氏の元で、あの時のアリョーナ・コストルナヤを取り戻せるのかどうか、それはわかりませんけどね。」

コストルナヤがアカデミー「エンジェルズ・オブ・プルシェンコ」へと去ったのは、本人の弁ではもっと微笑んでいたかったからではなかったか。トゥトベリーゼ・チームですっかりスターとなったコストルナヤは、年下の女子らとリンクをシェアするのは不都合だった。とはいえ、自分だって年上の選手らと一緒にトレーニングをすることでトリプルアクセルをものにしたいという熱意が湧いたはずだったのだが。

フィギュア女子コストルナヤ プルシェンコ氏を去り、トゥトベリーゼ・チームへの復帰交渉中
プルシェンコ氏は欧州チャンピオンのコストルナヤに相応しい、理想的な条件を揃え、プログラムの選択では完全な自由を与えて追い立てるようなことはしなかった。世界有数の振付師のカナダのシェイ=リーン・ボーン氏と組むチャンスまでも与えていた。

ところがコストルナヤはどうやってもトリプルアクセルを取り戻すことができず、かつての軽やかさも、十八番だった滑らかなスケーティングも失くした。これを指してズーリン氏はきっぱりと断言する。

「コーチと選手というのは心温まる間柄にもなりえます。それでも、師匠たるものは選手の言いなりになってはいけないのです。コストルナヤがプルシェンコ氏のもとで1シーズンにプログラムを5つも替えたというのはもう普通ではないですし、こうなると熱に浮かされたような、せわしない動きに似ています。本当の意味で仕事に通じた師とはスケーティングに対する自分のビジョンに基づいて教え、厳しい規律を要求する資格がある。だって厳しさや注意は無関心からではなく、最高の成果を出したいという希求から出るものでしょう。」

エテリ・トゥトベリーゼ氏自身、ある時こんなことを口にしていた。「コーチが叱責しなくなったら終わり」と。プルシェンコの「温室環境」にいたコストルナヤが、あの時、トゥトベリーゼ・チームで彼女の練習の妨げとなっていた年下の女子たちに今や負けているという事実は、ちゃんと理由がある。このためコストルナヤに以前の体調を取り戻させるというのは、前のコーチ、つまりトゥトベリーゼ氏にとってはかなりの大仕事、一種のチャレンジになる。

とはいえ、ズーリン氏は、トゥトベリーゼ氏は過去5年に何人ものチャンピオンを育てあげており、その腕前はずいぶん前に万人に証明済と語っている。

「彼女がコストルナヤをまた引き受けるとすれば、何よりもまずこれは彼女に人間としての資質です。偉大なコーチであるということ以上に、素晴らしい人間でもあるということです。幼い選手の若気の至りを彼女は許すことができる。」

プルシェンコ氏は偉大な五輪金メダリストではあるが、コーチとしてのキャリアはスタートしたばかりだ。ズーリン氏は、プルシェンコ氏はまだチャンピオンを育てる独自の戦略を構築していないのではないかとして、次のように語っている。

「エフゲニー(プルシェンコ氏)は五輪で金を獲得するまで幾度も転んでいます。同じようにコーチとして歩みだして初めてのたんこぶを作っているわけで、これはいたって普通のことです。コーチとしての輝かしい未来はこれからですよ。」
コーチ替えで「せわしない」コストルナヤ 失われたコンディションをトゥトベリーゼ氏は回復出来るのか?

今週、プルシェンコ氏は自身の一番の目的と夢について、北京五輪でアレクサンドラ・トルソワ(16)に4回転ジャンプを5回跳ばせることだと語っている。異名「ロシアのロケット」のトルソワはコストルナヤとは異なり、今シーズン世界選手権への出場権を手に入れ、滑らかなスケーティングにさらに磨きがかかっている。ただしトルソワがプルシェンコ氏の元に移った理由は兎にも角にも安定した4回転ジャンプが跳べるようになるためだった。

だがトルソワのウルトラC演技は、結果としてはほとんど変わっていない。トルソワは相変わらず大会では転倒しているし、トゥトベリーゼ氏についていた時と同じように、4回転を跳ぶ回数も2回から3回どまりだ。

「あなた方は私をよくご存知ない」 世界選手権へ向かうトゥクタミシェワ
そんな一方でトゥトベリーゼ・チームの女子ジュニアたちは驚くべき成長を遂げた。マイア・フロミフ(14)は初めて2つの4回転ジャンプを完璧に跳んだ。特に最も難関の技の組み合わせで圧倒したのはカミラ・ワリエワ(14)だった。ワリエワはフリースケーティングでトリプルアクセルと3つの4回転ジャンプを見事に跳んだ。

そしてこの女子らが次のシーズンでは五輪出場権をめぐってトルソワと熾烈な闘いを展開することになる。

五輪への野心を燃やすトルソワが、コストルナヤの後に続いてトゥトベリーゼ氏のチームと復縁する可能性はあるのだろうか? これについてズーリン氏は次のように語っている。

「まぁ、しばらくしないとわからないですね。アレクサンドラ(トルソワ)が世界選手権でどんな成績を出すか、多くはこれにかかっていますから。コストルナヤとは違って、彼女の場合、コンディションは失われていないですし、今シーズンのスケーティングはかなりいいですからね。」

ズーリン氏は、トゥトベリーゼ・チームに最強の女子が5-8人と勢ぞろいしていることも成功につながりうる秘訣だと指摘している。 チーム内にこれだけ激しいライバル争いがあると選手はプロフェッショナルに成長させられるだけでなく、野心、エモーションも大きくかきたてるからだ。 このエモーションの欠如は危険な傾向だ。これが失われるとどんなスポーツも上手く成長できない。


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