ロシアから参加したのは、ロシアで影響力のあるソフトウェア開発会社約200社が加盟する業界団体「RUSSOFT」(ワレンチン・マカロフ会長)の加盟企業10社。古くから日本企業と協業する会社もあれば、ほぼ世界中にビジネスを広げているが、日本には進出できておらずパートナーを求める会社など、状況は様々だ。いずれの企業も、規模の大小に関わらず、グローバルに活躍している。
ロシア側プレゼンテーションでは、社内から生じる脅威に着目しリスクマネジメントするツールを手がける「Searchinform」、オフラインで25か国語以上の翻訳に対応するソフトを開発し、日本の大手企業にも多く採用されている「PROMT」、ビデオ会議システム「VideoMost」を手がける「SPIRIT DSP」、ITアウトソーシングサービス大手「ICLサービス」などが、自社の最先端の取り組みを紹介。日本の参加者からは、ロシアIT企業の技術レベルの高さや、プレゼンテーション能力に驚きの声が上がった。
鳥取県商工労働部・経済産業振興監の遠藤俊樹氏は、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の需要が高まる日本では、県内のIT企業がこうした需要を取り込み、成長することが期待されていると話す。その目的のために、ロシア企業の技術を取り入れて、これまで解決できなかった課題にチャレンジすることは、大きなメリットがある。
遠藤氏「今はまだ、協力の可能性を検討し始めたばかりの段階で、ロシアのIT企業がどのようなことに関心を持っていて、どれほど海外企業との連携実績があるのか、初めて認識したところです。県としては今後、ビジネスにつながる話ができる枠組みを、できるだけ用意していきたいと思います。AIを活用したシステムの共同開発、既にロシアで普及しているシステムの日本へのローカライズなど、双方にとってプラスになる連携や協業が実現すれば、と期待しています。」
今回のビジネスマッチングの運営を受託したのはベリタス・コンサルティング。同社は日本企業向けに、ロシア人材の採用サポートや、ロシアITベンチャーとの提携支援を手がけている。ベリタス・コンサルティングの坂尾晃司社長は、日露のIT企業を比較すると、会社としての構造や顧客との関係性が大きく異なっており、ロシア企業には世界進出できる要素が揃っていると指摘する。
坂尾氏「日本のIT企業はほとんどがシステムインテグレーター、つまり顧客の求めに応じて、システムの構築や運用を一括して行ないます。それぞれのお客さんに合わせて作るので、完全にその会社のためだけのものができあがります。大企業が合併すると、よくシステムの問題が出てくるのはそのためです。一方、ロシアの場合は、技術力のある会社が自社オリジナルのシステムを開発して、それを世界に販売、展開していくというスタイルです。最初から世界を相手にすることが前提なのです。個別のカスタマイズは、主に顧客側のエンジニアが行ないます。こういったロシアのスタイルのほうが、むしろ世界のスタンダードなのです。日本のIT企業にとっては、ロシアの優れた技術力はもちろんですが、ロシアIT企業がもつ事業展開への価値観、世界へマーケットを広げていこうという姿勢が良い刺激となり、協業の際に相乗効果を与えてくれると考えています。」
遠藤氏によれば、ビジネスマッチング参加者の中には、ロシアの最新技術についてより詳しく知りたいとの思いから、ロシア最大のイノベーション機関・学術研究都市である「スコルコヴォ」への経済ミッション参加に前向きな企業も出てきたという。もともとロシア沿海地方との縁も深く、ロシアとの民間交流が盛んに行なわれてきた鳥取県。将来的には、IT技術を駆使した鳥取発のユニークな日露プロジェクトが始まるかもしれない。
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