楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は東京五輪開催を「自殺行為」と呼び、日本政府に対して開催中止を呼び掛けている。
東京五輪開催中止を求めるオンライン署名活動も5月20日の時点ですでに37万5000人以上がこれに賛同している。
署名活動を組織した法律家の宇都宮 健児氏は自身のツィッターに「新型コロナの感染拡大を鑑み、人々の命や暮らしを危険にさらしてまで開催を強行するべきでなく、一刻も早く開催中止を判断・要請するようIOCとIPC、国、都、組織委に求めます」と明言している。
東京都医師会の尾崎治夫会長は11日に開かれた都医師会の定例会見で、 五輪を安全に開催するには東京都の新規感染者数を100人以下しなければならないと明言した。 尾崎会長は5月19日付けのAERAからの取材に「このままの状況であれば、5月末では宣言を解除しない賢明な政府であってほしいと思います」と答えている。
Worldometersの調べでは5月19日の時点で日本の新規感染者数は5229人。NHKの報道によれば、同日の東京都の新規感染者数は766人だった。
一方、日本政府は批判の矢面に立たされながらも、IOCやWHOの支援を得て予定通りの開催を約束している。 また、コロナウイルス対策の一環として、6月末までに大会参加者のスマートフォン向けに専用アプリケーションが用意される。ユーザーは定期的に居場所を通知し、1日の体温などの重要な情報を入力しなければならない。日本政府がデータを一括管理することで、感染の拡大を防ぐという狙いだ。
世界保健機関(WHO)で緊急事態対応部門を統括するマイケル・ライアン氏は14日のブリーフィングでCOVID-19検査の陽性反応の数が減ったことに言及した上で「我々は五輪の開催を望んでいる」と表明した。ライアン氏は「大会開催都市である東京と日本政府は、リスク管理について正しい判断を下すと確信している。彼らは適切なリスクコントロールを保障しようと懸命に取り組んでいる」と発言し、観客数についてはCOVID-19感染者数を考慮して、大会直前に決めるなど、いくつかの決定に言及した。
大会会場で選手の間に感染が拡大した場合、大会が停止される恐れがあるため、IOCは選手へのワクチン接種を断固として支持しており、200の参加国・地域のうち半数以上が選手の接種を行うと見込んでいる。米国、中国、韓国では、すでに選手への接種計画を発表した。ロシアのドミトリー・チェルニーシェンコ副首相は、ロシアは選手の健康状態を最も重要とするため、大会参加の350人の選手と約300人のコーチに渡航前の段階でワクチン接種を行うことを優先すると指摘している。
スポーツ史学家のオリガ・ログリナ氏は安全な五輪開催のためには日本入りする大会参加者の大多数がワクチン接種を済ませていることが前提条件となるとして次のように述べている。
「ワクチン接種を五輪にやってくる外国人全員が済ませてくるということについては私は疑念を持っています。本来、安全な五輪開催のためには接種は前提条件なのですが。大会組織サイドは参加者の安全を最大限確保した上での開催を検討していると言っていますが、コロナ感染現状は未だに複雑で、おそらく中止が最良の案でしょう。日本の役人たちは中止の発案は自分たちが出すのではなく、例えばIOCの側から出される方を望んでいます。そのほうが2020年春の時と同様に『体面を保つ』ことができるからです。当時は五輪延期に世界からは理解が示されましたが、今、中止となれば日本の評判がよくなることはまずないでしょう。それでも開催が大きなポジティブ効果を生むこともまた、ないでしょう。」
ログリナ氏は五輪史上、開催が中止されたのは1916年、1940年、1944年の3度のみで、いずれも世界大戦が理由となったと指摘している。1940年、日本は夏季、冬季の五輪開催をそれぞれ東京、札幌で開催しようとしていた。ところがその3年前に日中戦争が勃発したため、日本政府は両方の五輪の開催を返上した。