大胆な公約
21日の記者会見で、公明党の山口那津男代表は、0歳から18歳までのすべての子どもに、1人一律10万円相当を支給することを柱とする政策などを次期衆院選公約として発表した。所得制限は設けないとしている。今のところ、給付方法については決まっていないが、現金支給のほかに、様々な場所で使用できるポイント制などの案も出ている。対象は2,000万人弱になる見通しだという。
山口代表はまた、「子育て応援トータルプラン」を策定し、子どもの権利を保障する「子ども基本法」を制定するとしている。山口氏によれば、公明党は、「日本の未来を担うすべての子どもを社会全体で応援して行く」ことに全力を注ぐとしている。しかしこの提案に不満を感じた人も多い。その理由はどこにあるのか?
多様な考え
ヤフーニュースのコメントでは、公明党は年金生活者の支援でうまくいかなかったため、子どもへの支援に方向転換したとの指摘が目立つ。
「今まで年寄り偏重が目立ちすぎたから今度は子供というわけか?子供を持ちたくても経済的理由で結婚すらできない層は切り捨てて終わりか。こういった税金のバラマキを公約する政党は退場させるべきだろう。」
また、これは子どもを持つ家庭にとってはありがたいものかもしれないが、同じように税金を払っている独身者や子どものいない家庭に対する差別であるとの声も多く聞かれる。
「立憲民主党が主張する低所得世帯、公明党が提唱する子供も同じ。子供のいない世帯や納税世帯からすれば『オレ達の払った税金だろ』となるのは当然で、国民の間に不公平感を作り出すだけ。意味ある物にするには一律支給しかない。」
また、政党が納税者から集めたお金を自由に使おうとしていることに憤慨し、実際にこの公約を守ることができるのか疑念を感じている人も多い。
「選挙前に他人から出させた税金を餌にパフォーマンスですか。最低限どの財源からばらまくのか、その補填は何で行うのか、未納税者が大半の18歳までの理由、そして本当に実行出来るのか。公約守らない政党なんていくらでも見てきましたけど。」
実際に子どものいる世帯は他の世帯よりも大変なのか?
日本大学教授で内閣府子供の貧困対策に関する有識者会議のメンバーである末富芳氏は、公明党の提案は、概して、理性的な理由に基づいたものだと指摘する。
「特に困窮子育て世帯への給付の一刻も早い実現が急がれます。コロナ禍で、子どものいる労働者(とくに女性)は子どものいない労働者に比べ高い比率で失業したことが国内統計の分析から把握されています。また、臨時休校などで、非正規労働者中心に保護者の減収もいま起きており、状況は深刻です。」
一方で末富教授は、現金でなく、ポイント制による給付は信頼性に欠くと指摘し、次のように述べている。
「現金ではなくポイント制での支給には慎重であるべきです。とくに地方を中心としたデジタル過疎地域ではポイントの使い道もないケースもあるでしょう。」
子どもへの支援
政府が子育てに関連する問題を給付金という形で解決しようとするのはこれが初めてではない。2020年、国内の出生率が10%低下したことを受け、東京都は経済的な不安から子どもを持つのをためらう夫婦への支援策として、新生児1人あたり10万円を支給すると決めた。この支援策も、現金支給ではなく、サービスや商品に交換できるポイントがカードを配布するというものとなっている。
この出産応援事業は、全国的なものではないが、その他の都道府県の自治体でも同じような支援策は行われている。たとえば、広島県庄原市、岐阜県高山市では10万円の出産祝金が給付されている。
その他の公約
衆院選を前に、多くの政党がそれぞれの公約を発表している。国民への経済支援を掲げているのは公明党だけではない。
たとえば、立憲民主党は、「給料が上がる経済」や「人づくり」を目的とした公約を打ち出し、若い人たちからの支持獲得を狙う。
立憲民主党が公約に掲げているのは、国民1人あたり一律10万円の給付、消費減税、10年間で150兆円の経済対策を行うことなどである。
長引くコロナ禍とその影響によるコロナ危機という状況下で、どうやら野党は有権者にお金を配ることしか約束できないようである。