難民の多くは欧州経済の中心地、ドイツを目指している。欧州委員会で統計を担当するユーロスタットによると、2021年1月から9月の間だけで欧州連合では35万6000件以上の難民申請が行われ、これは前年同時期比で15%も増加した形となる。
ドイツでは1月から9月だけで約10万件の申請が行われ、前年比でなんと33%増加した。ドイツにおける難民申請の件数はEU全体の28.4%に達している。難民の多くはアフガニスタン、シリア、パキスタン、イラクの出身者が占めている。アフガニスタンとシリアだけで申請全体の3割に達している。
ドイツの次に難民申請の件数が多いのはフランスで、全体の約20%に達し、続いでスペインが11%、イタリアが8%となっている。この4カ国になんと全体の3/4が集中している。
アフガニスタンからの難民は隣国のイランにも集中している。国連によると、この1年間でイランへは約50万人が難民となって逃れたほか、難民はベラルーシにも集中した。2021年1月から8月にかけてベラルーシから隣国リトアニアに入域した難民の数は4000人に達したほか、ポーランドとの国境付近には11月末の時点で7万7000人の難民が集まっていた。ポーランドの国境警備隊は4万人の不法移民を摘発したが、これは前年比で数十倍になる。欧州域内への不法移民は合わせて16万1000件に達し、これは前年比で72%の増加となった。
シリア国内における難民の問題も指摘されている。米国をはじめとする駐留軍はシリア北部のエルホル・キャンプで5万7000人の「国内難民」を抱えており、そのうち3万人は児童とされている。シリア政府は西側の政府に対し、市民の帰還に向けた支援を要求している。
シリアには難民キャンプが数百個所も用意されており、そのうち中心的なキャンプは政府の管轄外に設置されている。
一方、ロシア政府とシリア政府は難民の帰還に向けて協力している。2015年9月以降、シリアに帰国した難民の数は230万人とされている。そのうち130万人は国内難民で、国外からの帰国者は96万3000人と報告されている。
アフリカからの難民もまた問題となった。イタリア南部のシチリアにはアフリカから到着する難民の数が急速に膨れ上がり、1月1日以降に地中海を経由して到着した移民の数は6万6500人に達している。2020年は同時期で3万4000人、2019年はわずか1万1500人だった。
欧州を目指す難民の数はこの混乱で確実に増加し、難民と欧州社会のあつれきは激しさを増すことが予想される。では、欧州社会は移民を受け入れる用意ができているのだろうか。ローマ・カトリックのフランシスコ教皇はアフリカから到着する難民の中心地、ギリシャのレスボス島を訪問し、分断した社会と教会の結束を呼び掛けた。
我々は今後、再び兄弟愛の喜びを分かち合い、 地中海については、我々を不安に陥れ、分断する海としてではなく、結束させる海として見ていきたい……仮に我々キリスト教徒が分断されているのであれば、いかにして福音書の中に説かれた和解を世界に示すことができるだろうか。仮に我々が団結せず、仲違いしているのであれば、いかにして我々は諸民族を団結させるキリストの愛を伝えていくのだろうか。
このように、困難な時代であるからこそキリスト教徒は団結する必要があると訴えた。果たして欧州と国際社会は難民との共存を耐えることができるのだろうか。欧州は2022年、多文化共生の点で極めて困難な1年を迎えることになりそうだ。