リスクは最小限度か?
「金は、エネルギー資源、非鉄金属、レアメタルなど、戦略的に重要な物に比べて露日貿易収支ではさほど大きな位置を占めていない。このため日本が突き付けたロシア産金の禁輸制裁はシンボリックな意味合いを持っていると言っていい。日本はロシアが外貨準備の大部分を奪われていると考えているため、金を禁輸すれば、ロシアが国家予算の追加的な収入を得るための取引の機会を奪うことができるとを期待している」
有権者の感情の「トレンド」にのる首相
「日本では7月に参議院選挙があるため、岸田首相は自分の外交政策が一定の成果を上げていることを示す必要がある。だが経済は長い間成長しておらず、有権者に『自慢』できることは何もない。つまり国内は決して順風満帆ではないが、岸田首相は対露制裁を再び強化し、ロシアを『蹴っとば』したところで何のリスクも冒さない。ウクライナの一件で国内の反ロシア感情は最高潮に達しており、日本人の90%以上が反ロシアであり、野党の反露姿勢はさらに強い。ここで岸田氏は、自分が親露的な感情を持っているとして野党が(理論的にも)自分を非難できないように、世界の首脳らと同等であることを示し、イニシアチブを握らなければならないのだ」
「われわれは歴史の岐路に立っている。ルールに基づく国際秩序を維持できるかどうかが問われている。国連の安保理などの枠組みが十分対応できていない」
露中関係に対する大きな警戒感
「今の日本の首相はもともと親米派だったため、彼にとってはまさに今、米国へのさらなる忠誠心を示すことが重要であり、その重要性は特に中国の脅威というコンテキストにおいて殊更なのだろう。極東における露中の軍事的結びつきなどに対して、特に、最近(6月)日本の沿岸をロシアと中国の船が通過したことを含め、共同パトロールや演習など、今、日本では虚偽の警戒感が大きく煽られている。もちろん、これは日本にとってさらに警戒感を呼ぶことであり、これで日米同盟の重要性は何倍にも高められている」
反露に傾かせないストッパーが吹っ飛んだ
「ついこないだの安倍首相時代までは、日本の『反露活動』の具体的な『制約』は日露平和条約の交渉プロセスという形であったが、それが消滅した今、なおさらだ。これまでは条約の交渉が日本に思い切った行動に出ることも、ロシアに対する厳しいレトリックも控えさせ、日本を自制させていた。 ところが今はこの要因が働かず、交渉は『魚雷を飛ばさない』ので日本には自制心を発揮する理由はもうない」