両国の独立の承認書は、駐ロシア北朝鮮大使・申紅哲(シン・ホンチョル)氏から駐ロシア・ドネツク人民共和国大使のオリガ・マケエワ氏に直接手渡された。この文書では、「外交関係樹立のための今後の動きについて」合意したことが示されている。また、申氏とルガンスク人民共和国大使のロジオン・ミロシニク氏の会談も近々行われる予定である。北朝鮮の金星(キム・ソン)国連大使は、北朝鮮は「ドネツクとルガンスクに関する立場を全面的に支持する」用意があり、ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国の国連代表問題に関して追加の措置を講じるとの考えを示した。
ドネツク人民共和国を率いるデニス・プシーリン氏は、北朝鮮政府の決定はドネツク人民共和国の「外交におけるもう一つの新たな勝利」であるとし、ドネツク人民共和国の国際的地位と国家としての地位が引き続き強化されていると指摘した。さらに同氏は、両国が経済関係を発展していくことなどにも言及している。ルガンスク人民共和国のトップであるレオニード・パセチニク氏は、これは地政学的な現状において「大胆な政治的な一歩」であると述べ、北朝鮮との二国間パートナーシップが「長く、実り多いもの」になるとの自信を示した。 独立承認は、防衛を含む国家間の協力に道を開くものであり、この承認により、ある国がその国に軍事支援を要請し、実際に支援を受けることもある。
ウクライナ外務省は、このような非友好的な行為に対して北朝鮮との国交を断絶すると発表した。ウクライナと北朝鮮との政治的・経済的な接触は、国際的な制裁によりすでに停止している。それと同時に、ウクライナ政府は独立承認を「無効」とし、この承認は法的な影響はなく、国際的に認識されているウクライナを変えることはないと強調した。
ロシア科学アカデミー極東研究所・朝鮮研究センターのコンスタンチン・アスモロフ・センター長は、スプートニクの取材に対し、「北朝鮮のこの動きは極めて論理的なもので、ロシア連邦の特別軍事作戦を支援するという北朝鮮の姿勢に続くものだ」と語っている。
「この作戦が始まった最初の頃から、北朝鮮のメディアはロシアを支持し、米国の侵略と偽善を糾弾している。しかし、これまでのところ、北朝鮮はこの動きに対する恩恵にあずかっていない。ロシアは北朝鮮に対する制裁を解除する意向を示しておらず、北朝鮮政府がロシアからの人道支援を期待できるかどうかもまだわからない。北朝鮮への人道支援は、国際的な制裁や新型コロナウイルスのパンデミックで同国の貿易がほとんどできなくなっている状態では、とても必要なものなのだ。防衛面での協力はもちろんのこと、ドネツク人民共和国やルガンスク人民共和国との政治・経済関係については、少なくとも現段階では非現実的だ。 つまり、現時点では、ロシアの忠誠心を改めて示すと同時に、自分たちのことを世界に思い出させるための象徴的なジェスチャーということになる…」
また、CIS研究所の上海協力機構発展・ユーラシア統合部のウラジーミル・エフセーエフ部長は、「北朝鮮側の利他主義は排除されており、自国の利益にならないことはしない」とみている。
「北朝鮮は、これらの共和国を承認することで、独自の利益を得ている。第一に、この承認は北朝鮮を何ら拘束するものではない。 第二に、米国と「仲良く」していない人とは誰でも「友達」なのだ。 米国は彼らにとって主要な敵だ。トランプ(前)大統領の下、米国は何とか北朝鮮政府と交渉しようとした。バイデン大統領では、対話を行う気配さえない。そして今、米国と世界の人々の関心が北朝鮮からそれているという意味で、北朝鮮にとって「非常に良いタイミング」なのである。だから、ミサイル開発や、核実験の準備をしたりと好き放題にできるのだ。もうひとつの側面がある。現在、ドネツク州には、西側の近代兵器が大量に集まっている。 北朝鮮は、例えば軍備を充実させる目的で、高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」を手に入れるといいと思うのだが......」
現在のところ、ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国の独立は、北朝鮮に加え、ロシア(2022年2月21日)、シリア(2022年6月29日)、アブハジアと南オセチアが承認している。アブハジアと南オセチアについては、世界の多くの国々は独立国として承認していないが、一部の国々は認めている。7月12日、駐ロシア・ドネツク人民共和国大使館が、モスクワのグロホリスキー通り13番地 に開設された。日本大使館の住所はこの通りの27番地で、ドネツク人民共和国大使館の近くに位置している。