「貨物船の多くはウクライナから小麦ではなく、トウモロコシや豆、ひまわりといった家畜用のエサを輸出している。63隻中、小麦を積んでいたのはわずか13隻だ」
ほかの50隻が運んだ農作物は、家畜のエサのほかバイオ燃料の原料として使われる。ウクライナは2021年秋から備蓄が多く残っているトウモロコシの輸出を優先させ、小麦などの輸出に消極的だという。
もちろん、家畜のエサとして穀物を利用しても世界の食糧危機の改善に貢献するのは間違いない。一方で、農業専門家の西尾道徳氏によると、「人間の食べられる作物を人間が直接食べずに,餌として家畜に与えてから畜産物として食べるのは非効率的で、飼料の熱量のうち畜産物に保持される比率は平均すると約10%にすぎない」という。食糧不足が喫緊の課題となっている最貧国の需要を迅速に満たすには、小麦を優先的に輸出した方がはるかに効率がいいのだ。
穀物合意が始まって以降、これまでに150万トンの穀物や植物性油が輸出された。9月2日にはイスタンブールの穀物輸出に関する共同管理センターの職員が、ウクライナから出てきた貨物船8隻を臨検。計158000トンの食糧製品が、中国やブルガリアなどに輸出されるという。
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