極の変化
「エネルギー分野の変化は各国の政策を変更させました。そしてこのことは、米国の産業が急速な伸びを見せたという職業的な羨望を呼び起こし、また技術力によって燃料の備蓄の幅を広げることになりました。以前は利益にならないとされていた備蓄が、利益を生むものになったのです。1990年代も、現在も、わたしは世界の中での生存、そして統合に賛成しています。かつて、ロシアは米国や中東にとって必要な存在であり、いくつもの協定が結ばれ、またエネルギー協力に関する大統領委員会もありました。2010年の米国の液化天然ガス(LNG)の生産量は150万トンでしたが、現在はおよそ8000万トンに上っています。欧州では、すでにロシアからガスを輸送するパイプラインが敷設されていましたが、すでに当時、米国産ガスの輸出市場の一つは欧州と決定づけられていました。世界は過酷なもので、競争というのはあらゆる種類の戦いに発展する可能性を秘めています。ロシア産エネルギーの必要性が低下した途端、ロシアは競争相手となり、その競争はたちまち対立になったのです。協力停止の客観的な理由は、米国のエネルギー分野の急速な発展です」
欧州のロシア産エネルギーからの脱却
「政治的な決定を経済的な面で説明することはできません。総じて、ロシア産ガスから脱却することは実現可能なものです。価格の動向と対ロシア規制によって生まれる資本の一部は、輸送で利益を得る者、グリーンエネルギーを謳う者にとっては有利なものです。一方、これは消費者、国民にとっての試練であり、そしてエネルギーを用いる商品の製造者にとっては不利なのです」
東方への方向転換
「パイプラインを敷設した途端に消費者に依存することになってしまうと、どうにもなりません。ロシアは1984年から欧州に対して、大規模なガスの輸出を行なってきました。そのとき以来、基本的に一度も輸出が途切れたことはありません。これ以上に安定し、信頼できる国があるでしょうか?この5年間、中国は毎年、ガスの消費を増やしています。今年は、コロナウイルスによるパンデミックとGDPの低下により、ガスの消費の伸びはやや鈍化していますが、それでも中国は、2030年までに石炭をガスに替えるという目標を立てています。欧州は、今後数年のうちに、ロシア産ガスの使用を完全に停止すると明言しています。たとえば、それをグリーン・エネルギーに代替するなどです。ロシアはガスの加工を開始し、他の地域への供給を行います。これは良いことですが、非常に大きな費用がかかることです。我々は統合の道を歩んでいたことにより、石油に関しても、ガスに関しても多くの問題が存在します。それは正しい道ではありました。しかし、現在は選択を迫られています。2月24日から7月31日までの間に、日本、台湾、韓国は55億ドル相当、中国は280億ドル相当のロシア産エネルギー資源を輸入しました。東方への輸出はかなり以前から進められており、現在の輸出増加は時期的なものですが、2023年の末には安定したものになるはずです」