「私の会社が日本から買い付ける車は、直近の4〜5か月間で、3倍も増えています。これまで平均して1か月60台くらいだったところ、今では150台から180台くらいです。同業者の中にはこれまで月に100台だったのが、300台運んでいるところもあります。ウラジオストクには私たちも含めこういう会社が少なくとも100社はありますし、ロシア全土の同業者や、個人で副業として中古車売買をする人も多いことを考えると、この購買増の流れは非常に大きなものと言えるでしょう」
「3月はその通りで、1台も購入申し込みがありませんでした。それは外貨レートの急激な変動、ルーブルの一時的な暴落のせいです。運送には問題はなかったので、それよりも前に車を買った人は無事に受け取ることができていました。ただ税関には、車が運ばれてきた日のレートで手数料を払わないとならず、手数料はユーロをベースにしているので、当初予定よりもかなり多く払うことになってしまったケースがありました」
「確かにロシア中部でも、ここウラジオストクでも、町を走っている中国車は見ます。ただロシア人が中国車の品質を信じているかというと疑問です。外見は綺麗でも、短期間で壊れてしまうかもしれない。どのモデルも比較的新しく、ロシアで中国車の耐久性を調べた人はいないからです。中国車の正体を理解するためには時間がかかるでしょう。せめて1年、2年後なら、何らかの評価をすることができると思います。日本車の場合、私たちはその構造の全てを知っていると言っても過言ではありません。何か足りないところがあればどう対処すべきか分かりますし、実際に対処します。ロシアの中間層というのは、生活に必要な以外の全てのお金を集めて車を購入します。それだけに、未知すぎる中国の新車を買ってリスクを取るより、中古でも信頼がおけて定評のある日本車を選ぶのが自然です」
「我が社では韓国車も扱っていますが、お客さんがリクエストしてこない限り自分からは勧めません。私は日本イコール高品質、だと考える保守主義者なんです(笑)」
「ネットでの情報発信を増やすことで、かえって、オンラインでの大きな買い物に抵抗のある上の世代の層の信頼を獲得できているように思います。例えばYouTubeでは、社長自ら出演して、実際の車の状態などを包み隠さず話すことで、信頼を少しずつ得ています。逆に、ネットでの購入に慣れている若い人を驚かすのは難しいです。彼らにとってはプレゼン的に目を引くこと、見た目が大事ですが、私は、本当に大事なのは専門家が揃っていることだと考えます。怒涛の90年代を体験した人は、美しい「絵」の裏には何か罠があると知っていますから、コンテンツを作るときにはその中間くらいをターゲットにできるよう意識しています」
「読めなくても、そういうものを見つけるとお客さんも喜ぶんです。この車、本当にはるばる日本から来てくれたんだなって。私は2度、日本へ行ったことがあります。その時助けてくれた日本人に感謝しています。私たちのような極東で働くエンジニアや自動車産業に関わる人たちは、日本で作られた車の質に大変満足しています。そして日本人が車を大切に扱うため、受け取る車の状態にもそれがあらわれています。7割くらいの車は、たとえ走行距離があっても、昨日工場から出てきたばかりなのかな?と思うほどです。日本とは、互いに自由に行き来したり、文化を知って、いつも友人でいたい。この仕事をやっていて日本と自分の人生を結びつけることができ、本当に良かったと思っています」