今週初めには減産の観測から世界市場での石油価格は4パーセント上昇していた。
OPEC+は2020年5月、新型コロナウイルスの世界的大流行を背景とした石油需要の低下を受け、日量970万バレルを減産していた。その後、脱コロナ・経済再生に向けて各国が舵を切るなか、石油の需要が回復。ウクライナ情勢を背景とした対露制裁なども相まって世界の石油価格は高騰した。
こうして、8月には減産状態の最終段階を迎え、出口戦略をうかがう動きが広まっていた。一方でその際の増産量は日量10万バレルとほぼ現状維持となっていた。今回の更なる減産が決定したことで、日本を含むエネルギーを輸入に頼る国にとっては痛手となりそうだ。
また、今回の決定は11月に中間選挙を控える米国のバイデン大統領にとっても大きな打撃となる。米政治専門紙「The Hill」は減産決定の前、「バイデン政権はサウジアラビアとプーチンとの石油同盟に失望している」と指摘していた。
ウクライナ情勢をめぐる対露制裁を背景に、米国では燃料価格の高騰、インフレが国内問題になっている。このため、バイデン大統領は7月、サウジアラビアをはじめとする中東の産油国を歴訪し石油増産と市場価格の安定を訴えた。
ところが、今回のOPEC+による減産は一連の中東産油国との交渉が徒労に終わったことを意味する。ただでさえ指導者としての資質に疑問が呈されることの多いバイデン大統領だが、経済不況と外交的失敗が汚点として重なり、中間選挙で米民主党は苦しい戦いを迫られるだろう。
12月からは主要7カ国(G7)によるロシア産石油への価格上限が導入されるが、中国やインドなど制裁に反対する勢力もあることから、その効果が十分に発揮されるかには疑問が残る。一方、中印のようなロシア産石油の買い手としても、サウジアラビアなどの産油国としても背に腹は代えられないのだ。
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