イーロン・マスクのスターリンクが日本でサービス開始 ウクライナは落胆

イーロン・マスク氏がCEO(最高責任者)を務める米宇宙開発のスペースXが提供する衛星ブロードバンドインターネット「スターリンク」が日本でサービスを開始した。アジア初となる。現時点でサービスは、へき地や山間部、またインターネット通信接続が困難な島などで提供される。また衛星回線は、自然災害や停電などに際し、地上の通信網が故障した場合のバックアップにも使うことができるものとなっている。2021年9月13日に、日本の大手電気通信事業者KDDIは、「サービス提供が困難とされていた山間部や島しょ地域に都市レベルの高速通信を提供するため」、スペースX社と業務提携することを明らかにし、光ファイバーに接続された全国1200カ所の中継塔を使い、順次導入するとした。
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これを受け、日本の総務省はKDDIに対し、実験試験局免許を交付し、「スターリンク」の通信衛星と地上のインターネット網を接続するゲートウェイ局を山口衛星通信所に構築した。その後、品質と性能を評価するため、一連の技術検証も行われた。
またこのときKDDIは年末までに正式な運用免許を取得するため尽力すると約束している。
日経アジアのデータによれば、日本にはまだ通信ネットワークが完全に整備されていない場所が残っている。およそ9900人が携帯電話網がカバーされていない地域に住んでおり、また無線でカバーされている地域でも、接続が不安定であることが多い。
イーロン・マスク氏 世界中のすべての原発をフル稼働させるように呼びかけ
最近、スターリンクとイーロン・マスク氏は、さまざまな話題で、世界のメディアに定期的に注目されている。「スプートニク」は、インターネット雑誌「ヴェストニク・グロナス」のコンスタンチン・クレイデンコ編集長とともに、現状を検証した。
「スプートニク」:スターリンクの衛星群は、現状どうなっているのでしょうか。また「スターリンク」は世界の何ヵ国をカバーしていますか?
クレイデンコ氏:「現在、3449基のスターリンクの衛星が軌道上に投入されています。そのうち3145基が運用されているか、または運用可能な状態にあります。34基は長期にわたって機能しておらず、空気抵抗によって、高度を下げており、270基は軌道から外されています。スターリンクの速度は、起動静止ステーションが保障する通信の30倍です。また静止軌道上の衛星が35000キロ上空に位置しているのに対し、衛星スターリンクは地球の高度550キロの低軌道上を飛行しています。衛星と地上局との距離が短ければ短いほど、データ通信の速度は上がります。イーロン・マスク氏自身、9月19日に、スターリンクの衛星網は、南極大陸を含むすべての大陸を網羅したと述べています。ただし、通信が可能となっているのは今のところ、36ヵ国です」。
「スプートニク」:なぜ、携帯通信がかなりしっかり整備されている日本にスターリンクが必要なのでしょうか。
クレイデンコ氏:通信というものに多すぎるということはありません。しかも日本は、地震や自然災害が非常に多い国です。このような場合に、人々に何より必要なのが通信です。そこでスターリンクは保険のような役割を担うでしょう。加えて、新型コロナウイルスによるパンデミックの間、そしてそれ以降、自宅でリモートワークをする人が増えました。スターリンクは、大都市とインターネットがあっても接続が不安定な地方との情報格差を埋めるのを助けるものです。結果、地方部に住む人々が不遇であると感じることなく、都市部の市民と同様のアクセスや情報交換の可能性を持つことができるようになります。しかも、すべての宇宙通信というものは、二重の用途を持つ技術です。つまり、日本がこれを、通信はもちろん、自国の離島の保護のために必要としている可能性も除外できません。なぜならスターリンクは、光ケーブルの敷設が不可能であったり、あるいは敷設の合目的性のない地域を含め、幅広いインターネットへの接続サービスを提供しているからです」。
「スプートニク」:サウサンプトン大学の宇宙リサーチグループを率いる宇宙ごみの専門家、ヒュー・ルイス氏によれば、スターリンクの衛星群は、低軌道上で、他の物体と衝突するリスクを生み出しているといいます。また天文学者らも、スターリンクの衛星は低軌道上の小惑星の観測の障害になっていると不満をあらわにしています。
クレイデンコ氏:人類が宇宙を開発してから、どれほどの宇宙ごみが溜まっているかを考えれば、衝突のリスクは常にあります。スペースXは自社の衛星と、他の宇宙機器やその破片の接近をモニタリングする特別なプログラムを開発し、軌道修正し、状況を常にコントロールしていることを明らかにしています。さらに、衛星を廃棄する際に、大気中で完全に燃えず、地球の表面に到達し、人間に傷を与える可能性がある要素は残らないよう、その構造を変化させています。天文学者とスペースXとの対立は、衛星の表面の光が反射する太陽光が原因で生まれました。スペースXはこの問題を解決するために多大な努力を行いました。最初はダークサットと呼ばれる平らなアンテナを覆う装置が使われました。それから、太陽光を遮断し、アンテナ表面の反射を防ぐような特別な装置も登場しました。しかし、今、スターリンクに対する不満を噴出させているのは電波天文学者です。衛星からの無線信号が宇宙で有機分子を見つけるのを難しくするのではないかと懸念しているのです」。
ドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国、ザポロジエ州、ヘルソン州のロシア連邦への編入
イーロン・マスク氏 ウクライナ東部はロシアを好むと発言
スターリンクをめぐる最近のスキャンダルは、フィナンシャル・タイムズの記事がきっかけで起こったものである。フィナンシャル・タイムズは、ウクライナの政府関係者からの言葉として、ウクライナ軍が使用しているスターリンクのシステムがロシアの特殊作戦の実施地域で故障し始めたと伝えたのだが、これはイーロン・マスク氏がロシアを助けるために、ウクライナに故意的に通信網を設置したのだと非難されたのである。
マスク氏自身は、戦地で起こっていることは極秘情報だとして、コメントを差し控えている。
またフィナンシャル・タイムズは、スターリンクの通信の保証には8千万ドルがかかっており、年末には1億ドルを超えるだろうと付け加えている。
これより前、米宇宙軍のジョン・レイモンド作戦部長は、スターリンクの衛星がウクライナ軍の兵器の誘導や諜報活動のための活動を行なっていると認める発言をしている。
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