一見、メッセンジャーに似ているテレグラムは、主婦であれ、洋服店であれ、誰もが自分の考えや最新のニュースを共有し、さまざまな商品をすすめるテキストや写真や動画を投稿し、他の国々の生活や文化を紹介し、音楽バンドのファンを集め、仮想通貨について話し、フォロワーたちとリアルタイムで交流することができるマルチプラットフォームとなった。テレグラムには、ニュースや政治チャンネルもある。
一方、2月24日にウクライナでの軍事作戦が開始されてからは、別のテレグラムの特徴が明らかになった。
分析企業「ブランド・アナリティクス」のデータによれば、ウクライナにおけるロシアの「軍事作戦」が始まってから10月1日までの間に、ソーシャルネットワークのロシアでのコンテンツを作成するユーザーの数が58%も増加した。
これはあらゆるソーシャルプラットフォームの中でも記録的な伸びである。テレグラムで毎日公開されるコンテンツの数も、この期間に24%増加した。アナリストらによれば、このような爆発的な伸びは、ロシア人と近隣諸国に住む人々の間で、今起こっていることに対し、客観的な情報を求める需要が大きく増えていることによるという。テレグラムは、発信者から直接、すぐにこうした情報を受け取ることができる主要なプラットフォームとなったのである。
驚くべきことに、新聞など報道の発信者らも、ニュースや砲撃の動画、目撃者の話などを、テレグラムチャンネルから拾ってくるようになった。
テレグラムのロシア語セグメントでは、チャンネル間の大きな争いが起きており(ウクライナにおける特別軍事作戦をテーマにしたチャンネルが20以上ある)、それぞれが前線で起こっていることをより完全な形で報道し、ウクライナ軍の民間人に対する攻撃の影響を見せ、現場の目撃者の考えを紹介する権利を競っている。
また特別作戦を支持する政治家たちのチャンネルの中で、作戦開始直後から予想外の人気を誇っているのがチェチェン共和国のラムザン・カディロフ大統領のチャンネルで、そのフォロワー数は300万人に上る。
チャンネル上では、特別軍事作戦に関するカディロフ大統領の発言が紹介され、アフマト・カディロフ名称特別任務民刑連隊に所属する兵士のウクライナからの動画が投稿されている。これは、もっとも取り上げられる回数の多いチャンネルの一つである。
しかし、ウクライナ情勢をテーマにしたチャンネルで一番人気があるのは(フォロワー数は計算に入れず)、政治家のチャンネルでも、非人道的な個人のチャンネルでもなく、絶え間ない砲撃にさらされ、自身の生命をかけてこうした報道を行っているプロフェッショナルなチャンネルである。
それは、短い映像をテレビで流すというフォーマットから、自分自身が戦場で体験したことを知らせるような友人のようなフォーマットに移行した従軍記者たちである。
ロシアの従軍記者の中でもとくに優れているのが次の3つである。
全国営ロシアラジオテレビ放送の軍事レポーター、エヴゲーニー・ポドゥブヌィ(フォロワー数94万3000人)2014年からエヴゲーニーは、テレビ局「ロシア24」の特派員として、マイダン革命、クリミアのロシア編入、そして政治危機におけるウクライナ情勢などを取材した。また撮影クルーとともに、ウクライナのさまざまな都市で活動し、2022年には、従軍記者として、ウクライナ政府の犯罪について伝えている。
スプートニク通信の従軍記者、ロスチスラフ・ジュラヴリョフ (フォロワー数2万7000人) は、ルガンスク、ドネツク、マリウポリ、リシチャンスク、ザポロジエなどの戦闘地だけでなく、ナゴルノ・カラバフやアフガニスタンの軍事紛争地帯からも戦況を伝えている。いずれのレポートも最前線から行われているものだ。ザポロジエ(ザポリージャ)原子力発電所にも足を運び、工兵の活動風景や前線のロシア兵たちの姿を紹介している。
「コムソモールスカヤ・プラウダ」の従軍記者、アレクサンドル・コッツ(フォロワー数68万6000人)は、ルポルタージュを行っているが、同僚たちと同様、自分の目で見たことを正直に分析することを恐れない。
ウクライナにおける軍事行動は、これまでのあらゆる紛争とは大きく異なっている。
初めて、戦況が、最大限にデジタルで伝えられるようになったのである。今、人々は、短く切り取られた映像の入ったニュースを聞き、遠くから今起こっていることを見ているのではない。テレグラムは、軍事行動を、生中継で、恐ろしくも真実の映像として、ノーカットで伝えているのである。