【ルポ】モスクワで祝われた日本の「文化の日」:日本文化と触れ合える日を心待ちにしていた観客たち

露日の政治的な関係がいかに険しい道にあっても、ロシア人の間で、日本文化に対する熱い思いはけして消えることはない。現在、露日の文化交流は少なくなっており、日本からロシアにやってくる文化人もほとんどいない。しかし、この空白を埋めているのが日本の芸術に高い関心を持つロシア人たちである。11月3日、モスクワのデジタルアートセンター「アートプレイ・メディア」で開かれたマルチメディア展「日本の芸術:北斎から現代まで」の会場では、日本の祝日である文化の日に合わせた和太鼓グループ「タイコ・イン・スピレーション」の公演が行われた。
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広い展覧会場には、あふれんばかりの観客の姿があった。展覧会には果てしない数の観客が押し寄せたのである。
「スプートニク」ですでにお伝えしたように、この展覧会では、世界的に有名な葛飾北斎だけでなく、ロシアの観客にはあまり知られていない月岡芳年や今尾景年の作品なども展示された
出展された浮世絵は、長年にわたって日本で暮らしたエカテリーナ・プガチョワさんが提供したものである。浮世絵はスキャンされた状態で展示され、その絵にふさわしい音楽が流され、またアートプレイ・メディアの専門家が前もって用意したシナリオに沿って、3Dグラフィックが作られた。デジタル技術を駆使したこのプロジェクトでは、展覧会場全体が、古代と現代の日本の風景や景色を描いた生き生きとした日本人画家の作品に包まれた。
2021年11月に開幕したこの展覧会、実は2022年4月に閉幕することになっていた。しかし、この開催期間について、アートプレイ・メディアのデジタル・ディレクターのナタリヤ・ルビナ氏は、「スプートニク」の取材に対し、次のように述べている。
「わたしたちの予想に反して、限りない数の観客が展覧会に来てくれました。それで、早期に展覧会を閉幕するというのはそうした人々に対し、尊敬を表していないことになると考えました。このような展覧会はわたしたちにとって、『試験的』なものだったのですが、それが人々に大きな関心を呼ぶこととなり、わたしたちは現在、日本に関係のある同じようなプロジェクトをもう一つ準備しようと考えています。もしかするといけばなに関するもの、日本の着物、刀などのテーマでのビデオインスタレーションのようなものになるかもしれません。ロシアにはそうしたものを収集するコレクターがいるのです。観客の皆さんは、こうした展覧会は啓蒙的であるだけでなく、癒し効果があると打ち明けてくれています」

文化に境界線はない

和太鼓グループ「タイコ・イン・スピレーション」については、「スプートニク」でも以前取り上げた
和太鼓グループ「タイコ・イン・スピレーション」
女性メンバーだけで構成されたこのグループは、日本の和太鼓のファンたちのイニシアチヴによって、2011年に結成された。メンバーたちは、太鼓の演奏芸術を、YouTubeのビデオ教材で学んだというが、その後、世界でも最高峰の1人である和太鼓奏者の谷口卓也さんがグループの指導的役割を担っている。谷口氏の指導の下、グループは10年以上にわたり、ロシアで日本文化を推し進めている。この間、「タイコ・イン・スピレーション」は、小集団から大規模なショー集団へと姿を変え、今では、ロシア全土にあるユニクロのオープニングで演奏したり、日本の有名なブランド店や武術の大会のオープニングなどで演奏を行なっている。
またユニークな太鼓ショー「青い森の海」は、グループの活動の大きな成果の一つとなった。これは、日本の民話をモチーフにした音楽劇である。「スプートニク」からのインタビューに対し、リーダーのアレクサンドラ・サモヒナさんは次のように語っている。
「わたしたちはアートプレイ・メディアの熱心な人々と共に、日本の文化に敬意を示し、この公演を日本の祝日である『文化の日』に合わせることにしました。文化に境界線は引かれるべきではないと思います。わたしたちは、自分たちの太鼓の演奏で、観客に自分の心を開き、同時に、日本のもっとも面白い音楽文化の一つに触れてもらいたいと思っています。まさにこの展覧会では、日本文化との触れ合いは、ビジュアルと音楽という感覚を通して行われています」
観客たちの歓喜は言葉では表せない。公演には、日本大使館の代表も足を運んだ。
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