21日、サッカーイラン代表は強豪イングランドとのW杯初戦に臨んだが、6対2で大敗を喫した。ロイター通信などによると、試合前の国歌斉唱で選手らは口をつぐみ、歌わなかったという。国内で広まる反スカーフ運動に連帯を示したものとみられている。
イランでは9月、ヒジャブの被り方が適切ではなかったとの理由で警察に逮捕されたマフサ・アミニさん(22)が拘束時に死亡したことを受け、警察を非難する抗議行動や騒動が続いている。公式の情報では、アミニさんは尋問の最中に心臓発作を起こしたとされている。
こうしたなか、イスラエル軍参謀本部諜報局のアーロン・ハリバ局長は次のような見解を示している。
「イランは今、カタールのワールドカップの施設に攻め込もうと考えている。唯一行動を思いとどまらせているのは、カタールがどう反応するかという懸念だ」
また、ハリバ局長はイラン国内の抗議活動や外国からの圧力が、世界や地域におけるイランの攻撃的な反応を招く可能性があるとの考えを示した。抗議デモによる混乱や諸外国の制裁強化による国民の不満を外に向けさせるために、イラン政府が無謀な行動に出るとみているようだ。
ハリバ局長の発言のあと、先の総選挙で敗北し退任を間近に控えているガンツ国防相も、呼応するように「イランが地域の不安定化のためにW杯を攻撃しそうだ」と警告した。
そもそも、イスラエルはイランとは国交がなく、宗教的対立も背景に犬猿の仲となっている。イランはイスラエルと敵対するヒズボラやハマスを支援しているとされているほか、イスラエルもイランの核開発に猛反発するなどお互いを敵視している。イスラエルとカタールも国交はないが、今回のW杯では特別に直行便を設けているという。
一方、カタールは秋田県ほどの面積しかない小国であるものの、豊富な石油・ガス資源で経済力・軍事力が高く、アラブの春時には各国に積極的に介入した。宗教的にはスンニ派の人口が多く、アラブ連盟の加盟国であるが、シーア派の盟主イランとの関係も深めている。2017年にはイランへの過度な接近が周辺諸国の警戒感を招き、サウジアラビアやエジプトなど中東7カ国がカタールとの国交を一時断絶する事態にもなっている。
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