「サハリン1」への適用は日本の選択
日本の西村康稔経済産業相は25日、日本企業も参加する極東ロシアの石油ガス開発事業「サハリン2」からの石油について、「価格上限措置の対象とならない」との認識を示した。米財務省も全ての原油を日本が輸入する事を条件に適用除外を認めている。
一方で、「サハリン1」については例外を認めず、適用される見込みとなっている。この裏にはどのような背景があるのだろうか。
ベロゴリエフ氏は次のように述べている。
「米国がサハリン・プロジェクトについて適用除外を認めたのは、日本と示し合わせたからだろう。となると、『サハリン1』を適用除外しなかったのは、おそらく日本の選択ということになる。
この違いは『サハリン1』自体がそもそも危機的状況にあることが関係しているだろう。エクソンモービルによって4月から10月にかけて稼働を妨害された。日本政府はこの影響が2023年になっても残るとみているのだろう」
米エクソンモービル子会社のエクソン・ネフチガスは「サハリン1」の30パーセントの利権を持った運営会社であったが、3月に撤退を決めていた。そのため、4月から秋まで権限を使ってガスや石油の採掘を停止したほか、輸出作業も中断した。
この状況を打開するために、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は「サハリン1」の新しい運営者としての事実上の国営企業を発足させる大統領令に署名。そして、日本のサハリン石油ガス開発(SODECO)やインドのONGCは残留を決め、エクソンモービルはロシア市場から去った。
なぜ日本は残ったか
ベロゴリエフ氏は、日本もロシア産石油の購入を減らしていると指摘する。2022年1月から10月までで、約4割減少しており、6、9、10月は全く輸入していない。そして、「『サハリン2』の適用除外も2023年9月までしか有効でないということを考慮すると、日本は『サハリン1』からの供給は必要ないと判断したのは明白だ」と続ける。
一方で、現状の「サハリン1」では利益は乏しいものの、SODECOが撤退するということを意味するのではないとベロゴリエフ氏はみる。日本政府はこれまでも、日本企業ができるだけ長くサハリンに残るべきだとする方針を示してきた。
その理由は主に3つ考えられるという。
1.
サハリン・プロジェクトのライフサイクルは数十年単位のものであり、1年や2年のものではない。日本は戦略的に重要な長期的で儲かる投資と位置づけている。2.
日本のいわゆる「経済ナショナリズム」的な傾向。日本は第二次世界大戦の敗戦までサハリン島南半分を支配していた時期もあり、歴史的にサハリンとのつながりが深い。3.
日本の政治家は、日本企業が抜ければ中国に利権を取られることを恐れているそれでも、上限価格の適用が「サハリン1」自体に与える影響は、他のロシア産石油輸出プロジェクトに比べると少ないとベロゴリエフ氏は指摘したうえで、次のように締めくくっている。
「デ=カストリ港(ハバロフスク地方、サハリン島の対岸に位置し、『サハリン1』のガス輸出拠点となっている)は地理的に優位な位置にあるので、そこからの輸出が大きな被害を受けることはないとみられる」
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