地球では地中深くの内核の性質により、常に磁場が生じており、地球全体が一つの大きな磁石のようになっている。地球の磁気は生命活動にも大きな影響を与え、進化における重要な要素となっているとされる。
ロシア科学基金が支援してモスクワ大学などが行った最新の研究では、磁気の不在がゼブラフィッシュの胚の心臓活動にどのような影響を及ぼすか調べた。受精後の数日間、あるグループのゼブラフィッシュは磁気をほとんど受けない環境下に置き、別のグループは通常の磁気を受ける状態にした。
様々な磁気や日光などの条件下で実験を進めた結果、磁気がない環境で育ったゼブラフィッシュ胚のほとんどは死ぬことが分かった。生き残った胚も心臓の鼓動が不安定など、障害を伴っていたという。
研究チームの一員で生物学者のビャチェスラフ・クリロフ氏は、次のように述べている。
「我々の周りの多くの粒子は磁気特性を持っています。もし、地磁気がゼロに近い状態になれば、磁気に依存する生体活動が中断されることになる。だからこそ、今回の実験でも多くの胚が死に、発育に問題がある個体が増えたのです」
研究チームは、長期間の宇宙飛行の際などで宇宙船内で妊娠・出産を計画する際には、「磁気の不在」による体内の活動の乱れを考慮に入れるべきだと指摘する。
この「宇宙不妊」は、遠い将来想定しうる別の惑星への人類の移住計画にも影響を及ぼす可能性がある。いくら宇宙工学が発展して数百年単位の長距離宇宙航海が可能になったとしても、目的地に到達するまでに船内人類が絶滅してしまったら意味がないのだ。
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