沖縄の米軍基地問題

【解説】沖縄・米軍普天間基地移設問題 8日に最高裁判決 これまでの経緯を整理

沖縄県の在日米軍・普天間基地(宜野湾市)の移設をめぐり、埋め立て工事が進む名護市辺野古での新飛行場建設の根拠となる国の裁決を取り消すよう沖縄県が求めている訴訟で8日、最高裁が判決を言い渡す。中国や北朝鮮を仮想敵国とする日本は軍備拡張や米軍との一体化を進めており、沖縄の戦略的重要性がますます高まるなかで判決を迎える。そもそも普天間基地・辺野古移設問題とは何が争点となっているのか、これまでにどういった経緯があったのかまとめた。
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そもそも問題の争点は?

一連の沖縄県と国の対立、訴訟の原因となっているのは、那覇市の北東約10キロに位置する宜野湾市の米軍海兵隊・普天間基地の安全性をめぐる問題だ。普天間基地は市街地に隣接しており、米軍機が住宅街上空を飛行するため、世界で最も危険な飛行場といわれている。
米兵による事件や市街地への航空機墜落、部品落下などを受け、国は米側と協議し、基地の全面返還で「危険性の除去」を目指す方針を示している。この点については沖縄県とも一致しており、「一日も早い危険性の除去と早期閉鎖・返還は県民の強い願い」としている。
だが、「危険性の除去」の方法をめぐっては両者は対立している。国は沖縄が「安全保障上、極めて重要な位置にある」として県内の辺野古新飛行場への移設が唯一の選択肢としている。一方、沖縄県は過重な基地負担、辺野古移設に反対する民意、自然環境の保護などを理由に反対しており、県外移設を求めている。
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沖縄県と国の訴訟は12件

沖縄県によると、8日に判決言い渡しとなる訴訟の経緯はこうだ。辺野古沖の工事海域の環境保全措置に問題があることなどを理由に、2018年に沖縄県が工事承認を取り消した。だが、国が沖縄県の承認取り消しを無効とする裁決を行った。そこで沖縄県が国による「承認取り消し無効裁決」を取り消すよう求めて訴訟を起こした。
NHKによると、1審の那覇地裁、控訴審の福岡高裁判決では「裁決の取り消しについて裁判を受ける権利は私人に与えられていて、地方自治体に同じ権利があるとは言えない。県には国に訴えを起こす資格がない」などとして、判断を避ける形で沖縄県の敗訴となっている。また、最高裁でも判断を変更するために必要な弁論を開かずに判決が言い渡されることから、沖縄県の敗訴が確定する見通しだといい、工事が進む辺野古沖の現状を大きく変えることにはなりそうにない。
沖縄県と国の普天間移設、辺野古新飛行場建設をめぐる裁判はこれだけではない。これまでに12件が提訴されており、4件が沖縄県の敗訴、3件が和解、1件が沖縄県の取り下げとなっており、8日に判決が下る訴訟を含めた4件が係争中となっている。
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これまでの経緯、年表

1945年ー第二次世界大戦中に米軍が沖縄占領後、普天間に基地を建設
1972年ー沖縄の本土復帰
1995年ー小学生の少女が米兵3人に暴行される事件が発生
1996年ー橋本龍太郎首相とウォルター・モンデール米駐日大使が、普天間基地の全面返還と代替施設の建設で合意
1999年ー名護市長が使用期限を15年とすることなどの前提条件付きで代替施設受け入れを表明
2004年ー米海兵隊所属ヘリコプターが沖縄国際大学構内に墜落
2009年ー民主党代表の鳩山由紀夫氏の「最低でも県外」発言。首相就任後に断念し、撤回
2013年ー仲井眞弘多・沖縄県知事が辺野古埋立てを承認
2015年ー翁長雄志知事、仲井眞前知事が行った埋め立て承認を取り消し。第1次訴訟
2016年ー3月に両者が和解し、国は工事を一時中止。だが、12月には最高裁判決で国の主張が認められ、翁長知事の承認取り消しが無効に。国は工事を再開
2018年ー8月に沖縄県が再び埋立承認の取消し。国は沖縄県の取り消しを裁決で無効に。12月、国、辺野古沖の土砂投入工事を開始。第二次訴訟へ(8日判決の一連の訴訟)
2020年ー国が軟弱地盤の地盤改良工事を含む工事計画の変更承認申請
2021年ー玉城デニー知事は工事計画の変更申請を不承認。国は不承認を無効とする裁決で工事続行。第三次訴訟へ(係争中)
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