モスクワ国際関係大学の東洋学部長のドミトリー・ストレリツォフ教授(国際関係、日本研究)は、現行のNSSではロシアの軍事的脅威については触れられていないと指摘したうえで、次のように述べている。
「(編注:ロシアを安全保障上の脅威として位置づけることを)公然化する機は熟しており、ずいぶん前から議論されている。日本は米国の同盟国であるだけでなく、主要7カ国(G7)のメンバーでもあり、もう長い間反ロシア的な立場を取っている」
この上で、「日本との平和条約締結の交渉が止まってから久しい。将来、再開するような肯定的な動きも見えない」とし、日本側の動きは平和条約締結の展望を遠のかせるものだと指摘した。
一方、1996年~2003年まで駐日ロシア大使を務めたアレクサンドル・パノフ氏は、NSSの改定で自動的にロシアが日本の敵とされることはないとしつつもの、急激な関係悪化は免れないとみる。
「すべてはここに向かっていたのだ。以前首相が述べていたように日本は厳しい対露政策に転換した。ロシアはまだ敵国の地位を受けたわけではないが、これは次に来る一歩となるだろう」
現行のNSSでは「安全保障及びエネルギー分野を始めあらゆる分野でロシアとの協力を進め、日露関係を全体として高めていく」と記されている。だが、NSS改定の骨子案は、ロシアについて「インド太平洋地域におけるロシアの対外的活動、軍事動向等は、中国との戦略的連携強化の動きもあいまっている」などとし、ロシア・中国両軍が日本周辺の海域や空域での活動を活発化させるなど接近していることへの警戒感を示すものとなっている。
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