南京大虐殺 85年を経た今も日中関係発展の躓きの石

12月13日は中国のとっては第2次世界大戦中に起きた南京大虐殺の犠牲者を慰霊する日だ。1937年、今から85年前のこの日に起きた、日本の中国占領時代で最も血塗られた事件は、未だに日中関係におけるもっともデリケートな問題でありつづけている。
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南京大虐殺は「世界記憶遺産」に登録 日本はユネスコを非難

国際的な調査では、日本が「南京事件」と呼ぶ南京大虐殺の40日間に日本帝国軍によって殺戮された中国の民間人の数は約20万人に及ぶとされている。中国の発表ではその数は30万人を超える。一方で日本政府は、民間人殺害の事実は原則的には否定しないが、死者数は何倍も誇張されており、確かに日本軍が殺害したことを示す具体的な証拠はないと主張している。
日本人兵士に銃殺された中国人の死体が溢れかえる川岸、1937年 【アーカイブ写真】
このため、2015年10月、中国の発案で南京大虐殺に関する資料を含む公文書がユネスコの世界記憶遺産に登録された際、日本は公式的はこれに遺憾の意を表明し、遺産登録は一方的で偏った判断に基づく行為と非難した。翌年2016年10月、日本はユネスコへの資金提供を停止。2017年12月、政治的緊張を生む問題は今後、回避するというユネスコ指導部の意向を好評価し、ようやく再開した。

ユネスコ世界記憶遺産に登録された南京大虐殺の証言が語るもの

1993年、日本は中国に対し、占領下で行った行為と現地女性を使った慰安所を設けていたことについて正式に謝罪し、その2年後の1995年には、村山富市首相が戦後50年の節目に日本の占領政策について謝罪した。それでも、1937年の南京の悲劇については日本国内の評価は一様ではない。歴史家や政治家の中には、南京大虐殺は中国当局が日本に圧力をかけるために行った捏造だとまで発言する者が存在する。だが、ユネスコに登録された、虐殺を生き延びた南京市民の証言や、南京に1937年11月から12月にいた外国特派員らの撮影した写真は紛れもなく信憑性に値する。
南京にて、南京大虐殺の犠牲者のメモリアル
米国人宣教師ジョン・マジックが写真に収めた南京大虐殺の様子には、残虐に殺されたお年寄りや女性、子どもたちが写されている。日本人軍人らが市民を拷問し、ためらいもなく残忍な行為に及んでいたことは、文書として残されている南京大虐殺の生存者の証言も明らかにしている。これらの人々の近親者らは切り刻まれ、生きたまま焼かれ、銃剣で突かれ、放たれた犬に追い回され、氷の張った水の中に追いやられ、服を脱がされたまま、寒い外に放置された。女性や子どもは年齢を問わず集団で強姦され、妊婦が殺害された。関東軍が南京で行った残虐行為はこうしてすべてが明確に記録された。ドイツ人実業家ジョン・ラーベ氏が筆頭となり、当時、南京にいた外国人らは南京に国際安全地帯の防御委員会を組織した。毎日命がけで、何万人もの人命を救い続けた彼らの証言は、ユネスコに渡された中国の公文書にも含められた。

正義のために

南京大虐殺で生き残ったシャ・シュツィンさんは、1937年当時8歳だった。日本兵に殴られたシャさんは気を失った後、意識を取り戻した。血まみれになって家に戻ったシャさんを待っていたのは4歳の妹以外の家族全員が殺されていた光景だった。 「亡くなった人たちのために正義を貫きたい。たとえ、生き残りが私一人となっても日本に罪を認めさせるために私は闘う。それが叶って平和を手にするまで、私は口を閉じることができない」シャさんはこう繰り返し続けている。当時の恐怖を知る人は今、50余人。この人たちは皆、シャさんのように、このような残虐行為や非人道的な犯罪が今後、決して繰り返されることのないために、日本が懺悔する時を切実に待ち望んでいる。
年配の女性、南京大虐殺で殺されたイスラム教徒のハ一家の死体のそばに立ち尽くす、1937年 【アーカイブ写真】
南京大虐殺で生き埋めにされる中国人捕虜たち、1937年 【アーカイブ写真】
しかし、日本のSNSを見れば反省の言葉どころか、「80年以上も経つのに、中国人はいつまでこの記念行事を続けるつもりか!  事件の目撃者は10年後には絶滅している!」とか、「南京事件など存在しない。あれは中国の内戦で共産党による残虐行為だった」という文言が踊っている。

隣りは選べない

南京事件をどう評価するかという問題は、日中関係の発展を阻む障害としては唯一のものではない。だが、隣人と良い関係を築く意思があるならば、対話は必要だ。それだけに、タイのAPECサミットのフィールドで実施された3年ぶりの日中首脳会談は両国で大きな注目を浴びた。
「見せかけの正常性」日中国交正常化50周年を前に、日中関係は実際はどうなるのか=日本の専門家の見解
両首脳は二国間関係の安定と発展についてコンセンサスに達したという声明を出し、日中関係の重要性は昔も今後も変わることはなく、両国は協力のパートナーであり、互いに脅威を与えないという政治的コンセンサスに従わねばならないと明言している。
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