【視点】ウクライナへの対空防衛ミサイル「パトリオット」供給 専門家「奇跡の兵器とはなりえず」

米国がウクライナへの供給を検討していると取り沙汰される高性能の米製防空システム「パトリオット」。現段階では米政府の公式見解では計画を認めていないものの、ロシア側は実際に供給されれば正当な軍事目標になるとしている。ロシアの専門家からは「事態のエスカレーションにつながる」と危惧する声があがる一方、「奇跡の兵器とはなりえない」とする見解もある。
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これまでに米一部メディアは、米国がウクライナに「パトリオット」を供与する計画を準備していると報じていた。この計画について、ペンタゴン(米国防総省)は「現時点ではなにも発表することはない」と肯定も否定もせず、明言を避けている。
また、ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は「まだ報道ベースなのでコメントはしない。公式発表を待つ」と述べるに留めた。一方、国家安全保障会議副議長を務めるドミトリー・メドベージェフ元大統領は、実際に供給されればロシア軍の正当な軍事目標になるとの見解を示している。
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「パトリオット」供給の可能性をめぐっては、軍事・国際政治の専門家からも様々な声があがる。
世界兵器貿易分析センターのイーゴリ・コロトチェンコ所長は「これは米側によるエスカレーションを招く一歩だ。ゼレンスキー政権を延命するだけでなく、ロシア軍の航空攻撃に障害を与えようとするものだ」と述べ、今から供給実現時に備えて対策を取るべきだと主張する。
一方、ロシア高等経済学院国際政治学部のウラジーミル・バチュク教授は、「パトリオット」が非常に複雑なシステムを持った兵器だとしたうえで、運用する兵士の訓練や戦闘の準備を整える必要があると指摘。少なくとも近々戦況に影響を与えることはないとして、次のように述べている。

「『奇跡の兵器』のように崇拝することはない。たとえ『パトリオット』が万全の戦闘態勢でウクライナ軍に現れたとしても、何か実際に変えることにはならないだろう」

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また、政治・戦略分析機関「StratPol」の創設者のクサビエ・モロ氏は、1発20万ドルかかるとされる「パトリオット」用のミサイルを、1万~2万ドルの無人攻撃機(ドローン)の撃墜に使用するのは考えにくいと指摘。たとえ「パトリオット」が1基供給されたからといって、大量のミサイルがなければゲームチェンジャーになることはないとの見解を示した。
「パトリオット」は20~30キロの範囲をカバーする対空防衛ミサイルシステム。日本の航空自衛隊も対北朝鮮のミサイル防衛を念頭に配備している。敵のミサイル、戦闘機迎撃などに使う「守り」の装備で、米国としては長射程の攻撃兵器と比べれば供与のハードルが低い。一方、「パトリオット」は米軍の機密性の高いシステムと連動しており、運用には地上での米軍による操作が必要になるとする分析もあり、一定の「供給しにくさ」も指摘されている。
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