隔離撤廃で日本便の検索が急増
中国最大の旅行会社「Ctrip」によると、中国人観光客らの人気の渡航先はシンガポール、韓国、香港、日本、タイなどとなっている。航空券の照会が最も増加したのはシンガポール便で6倍、日本などの他の4カ国・地域も約4倍に増えた。
中国のシルクロード国際観光文化遺産大学のゾウ・トンチェン(邹統钎)副学長は、スプートニクの取材に対し、「隔離措置の撤廃は中国からの海外旅行需要を刺激する」と指摘する。一方で、中国人訪日客の第一波はそこまで大きくはならないという。
「この決定(隔離措置の撤廃)はいうまでもなく、外国旅行への大きな刺激を与えるだろう。海外旅行業界にとっては重大な突破口になる。
だが、爆発的な増大を期待できるかは分からない。コロナ禍の間に人々の収入は一定程度減ったほか、感染拡大はまだ終わっておらず旅行先で感染した場合十分な医療が受けられるか心配する人もいる。また、一定の国では中国人観光客に対して制限措置を取っている。だから中国人は海外旅行の決定に慎重になっているのだ」
ゾウ副学長は中国からの観光客の波は、1月下旬の 中国の長期休暇・春節(旧正月)のほか、感染状況が落ち着くとみられる3~4月にピークを迎えるとみる。それでも、コロナ前の水準に戻るには「1年程度はかかるだろう」としている。
日本に行きたいけど様子見
日本では10月に新型コロナ関連の水際対策が緩和され、11月には前月の約2倍となる93万人超の外国人観光客が訪れた。だが、コロナ禍以前に年間の訪日客が900万人を超えていた中国からは、未だに新型コロナ関連の厳しい出国規制、帰国時の行動の規制などが響き、2万1000人にとどまっている。
一般の中国人の間では海外旅行解禁への期待と、依然続くコロナ禍への不安が交錯している。
日本に旅行できる日を心待ちにしていたという北京在住のチェンさんは、日本の文化や食事、化粧品のほか、にぎやかな東京、落ち着いた京都の街並みが大好きだと語る。だが、年明けの春節の訪日は考えていないという。
「2020年の旅行は感染拡大で取り消しになって、3年も待ったけれども、もう少し様子を見ようと思います。夏の高温はウイルス感染を抑えるということも考慮して、来年の夏にでも日本に行こうと計画しています」
新型コロナの活動が夏に沈静化するか否かについては様々な見解があるものの、少なくともチェンさんがコロナ感染を懸念してすぐには日本旅行に踏み切れないでいるといえるだろう。
日本政府の対応は
一方、日本政府は中国の決定を受け、春節に大挙して訪れるであろう中国人訪日客へ対応するため、水際対策の強化を急いでいる。
往来の再開は長らく停滞していた日中間のビジネスや国内観光業にとっては明るいニュースである一方、昨今のゼロコロナ対策の緩和で感染が急拡大している中国からの訪日客の増加には不安も残る。共同通信によると、12月27日に日本で報告された新型コロナウイルス感染による死者の数は過去最悪の438人に上るなど、国内でも依然厳しい感染状況となっている。
岸田首相はこの措置について、国際的な人の往来を止めないよう配慮する一方、中国で感染が急拡大するなか、国内への流入の急増を避けるためと説明。日本や中国での感染状況に十分注意しながら柔軟に対応していくとしている。