宇宙には、時間や平行宇宙間を瞬間的に移動するためのトンネルが存在しうるという仮説が、1935年に物理学者のアルバート・アインシュタインとネイサン・ローゼンによって提唱された。米国の物理学者ジョン・アーチボルト・ホイーラーは、後に、アインシュタインとローゼンが提唱した構造物を「ワームホール」と命名した。
これまで、多くの研究者は、そういった構造物はないという計算結果を発表してきた。しかし、最近、複数の研究チームがワームホールは存在するという研究結果を発表している。
マドリード・コンプルテンセ大学(スペイン)の研究者らは、ワームホールの内部の全電荷と全質量の比が、ブラックホールが持つ理論的限界を超えると、ワームホールが通過可能になるという研究結果を発表した。しかし、このワームホールは人間が通ることのできない微細なものであるという。
一方で、プリンストン高等研究所(IAAS)とプリンストン大学は、超ひも理論を用いてワームホールの大きさを算出した。その結果、ワームホールは人間が隣の銀河系に1秒以内で移動できるほどの大きさであることが分かったという。
米国のハーバード・スミソニアン天体物理学センターとドイツのマックス・プランク天文研究所の研究者らは2022年、観測史上地球に最も近いブラックホール「Gaia BH1」を発見したと発表した。「Gaia BH1」の大きさは太陽の約10倍で、地球から1566光年先に存在する。しかし、これがワームホールという可能性も考えられなくはないという。
ワームホールは、恒星間を移動できる唯一のもの。そのため、ワームホールをテーマにしたSFはたくさん存在する。そして、研究者らは今後もワームホールの発見に向けて研究を続けていくだろう。
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