ウクライナ紛争の引き金は、ロシアに対する西側の30年戦争=米国のコラムニスト

ウェブマガジン「アメリカン・シンカー」のコラムニスト、ジャレッド・ピーターソン氏は、ロシアのプーチン大統領は2007年のミュンヘン安全保障会議における演説で、ロシアは隣国ウクライナが米国の兵器を詰め込まれた軍事基地になることを決して容認しないと明確に示したが、西側諸国はプーチン大統領の警告を無視したと指摘し、ウクライナ紛争は事実上、過去30年間にわたって西側諸国がロシアに対して行ってきた卑劣な戦争が引き金になったとの考えを示している。
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ピーターソン氏によると、卑劣な戦争とは、まず歴史的事実の歪曲および国際舞台におけるロシアの役割に関する偽情報の拡散を意味している。同氏はその例として、2023年1月31日付けアメリカン・シンカーに掲載されたジェイコブ・フロイデン氏の記事「ウクライナと歴史から教訓を学ばなかった者たち」を挙げた。この記事の中で筆者は、1812年のナポレオン戦争を引き起こしたのはロシア帝国だとして非難している。
一方、ピーターソン氏は、1812 年夏に「ナポレオンは65万人の軍を率いてロシアに侵攻し、ロシアはフランスの暴君から軍事的に注目された欧州で12番目の国となった。結果として、アレクサンドル1世はこの侵攻を撃退し、侵攻を繰り返していたフランスの侵略者に1回で永久にかたをつけて、ウィーン会議の英雄となった」と言及している。
また同氏は、自国の兵士の命を犠牲にしてバルカン半島をオスマンのくびきから解放したのはまさにロシアであり、ロシア人は13世紀から17世紀にかけてスウェーデン人、リトアニア人、ポーランド人、ドイツ人による絶え間ない襲来から自分たちの北と西の国境を守ることを余儀なくされてきたが、これら4か国は現在、その形成当初からロシアは侵略者だったと証明しようとしていると指摘している。
ウクライナでの露特別軍事作戦
プーチン大統領「ロシアの目的は、ロシア人がひとつになること」
ピーターソン氏はまた最近の歴史について、1991年のソ連崩壊後、ロシアは欧州の経済、政治、安全保障システムに平和的に統合されることを望んでいたと言及している。北大西洋条約機構(NATO)は東方に拡大しないという西側の約束を信じて、ロシアはワルシャワ条約機構を解体し、1994年までにその地域から自国のすべての軍を撤退させた。そして「これらすべての歴史的にユニークな譲歩に対して、ロシアは感謝と欧州への統合の代わりに、その後、無償で、ロシアの観点からすると威嚇的なNATOの東方拡大を受けとった」とピーターソン氏は指摘している。
米国のネオコン(新保守主義者)は、ロシアの目と鼻の先につくる次なる西側の軍事基地として、すでに2004年までにウクライナを検討していた。
ピーターソン氏は、1990年代のロシアは自国の国境を取り囲むNATOの包囲網に抵抗するにはあまりも弱かったが、2000年にウラジーミル・プーチン氏がロシア大統領に就任してからロシアは強くなり始めたと指摘している。2007年、プーチン大統領はミュンヘン安全保障会議で演説し、ロシアは自国の「玄関先」でウクライナに米国の現代兵器が詰め込まれ、ウクライナがNATOと軍事同盟を結ぶことを決して容認しないと明確に示した。ピーターソン氏は次のように問いかけている。

「ウラジーミル・プーチン氏が宣言したこの明確な立場は、1962年にケネディ大統領が発表したのと同じ政策をロシアが繰り返したに他ならない。それは、いかなる大国も米国の近くに脅威となる軍事的プレゼンスを確立することは許されないというものだ。米国はロシアが同じく無害なウクライナに対して持っているよりも多くの権利を、軍事的に脅威をもたらしていないキューバに対して持っているのだろうか?」

NATO拡大の歴史
ピーターソン氏は、2008年にジョージ・W・ブッシュ米大統領がウクライナとグルジア(ジョージア)にNATO加盟を約束したことに対してロシアが怒ったのは当然だとの見解を示している。同氏は「NATO加盟の展望に意気揚々となった」グルジアの大統領が同年に同国北部に住むロシアの民族的集団に対して軍事行動を起こしたとき、ロシア軍はすぐにそれに終止符を打ったと言及している。
同氏は、ウクライナで合法的な大統領が失脚させられた2014年の軍事クーデターへ米国が支援したことで、ロシアの忍耐袋の緒が切れたとの見方を示している。非合法な手段によって権力を握ったウクライナの新政権は、ロシア語の使用禁止や、その他にもドンバスのロシア語話者にとって受け入れられない措置を講じると脅した。そして、ドンバスの住民がウクライナ国内で保証された自治権を要求したとき、キエフ政権は彼らに対して戦争を始めたと、ピーターソン氏は書いている。同氏はまた、ロシア語を話すクリミアの住民が最初のチャンスを利用して急いでロシアに再統合したのは驚くべきことではないと指摘している。
2021年にバイデン氏が米大統領に就任して以来、ウクライナへの西側の兵器供与が急激に増加した。米国はウクライナをNATOの事実上の加盟国として扱い始めた。ロシアはバイデン政権との対話を繰り返し要求した。その目的は、ウクライナの中立性、ウクライナのNATO非加盟、ドンバスの住民を保護するための保証の提供を確保することだが、これらの要求は無視され、武力紛争が始まったと、ピーターソン氏は指摘している。
同氏は、自身はウクライナにおけるロシアの特殊軍事作戦の支持者ではないが、「まさに覇権主義を信奉する米国のネオコン率いる西側諸国がロシアの恐怖心をあおり、これが紛争を事実上回避できないものにした」という事実を否定することはできないと強調している。
ロシア外務省は今月1日、西側諸国はロシアとのハイブリッド戦争から本物の戦争へ移行しつつあると国際社会に警告した。
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