【解説】アジアを分断するAUKUS 原潜配備計画の詳細を明らかにした米英豪首脳

米国、英国、オーストラリア3カ国は米カリフォルニア州で会談し、3カ国による安全保障枠組み「AU KUS(オーカス)の主要原則を刷新した。
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米ワシントンポスト紙が報じるところによれば、この計画で3カ国は米国の原子力潜水艦のオーストラリアへの調達・配備を行い、また中国を3カ国が抑止すべき敵であると最終的に位置付けている。

AUKUS創設の目的

米国、英国、オーストラリアが、「太平洋における侵攻に対抗するため」結束をしたのは、今から70年以上前、日本を相手に戦ったときである。そして2021年9月、3カ国は、中国が太平洋地域における主な敵だとして、中国に対抗するための軍事同盟を積極的に形成するようになったと、記事では指摘されている。
そして、3カ国が結んだ安全保障分野における協力についての条約は、何より、オーストラリア向けに、米英の技術を用いた原子力推進機関を備えた潜水艦を建設することで広く知られることとなった。
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豪はAUKUS参加にどれほどの資金を投じたのか

ワシントンポスト紙によれば、契約の規模は670億ドル(およそ8兆9800億円)で、2032年から米バージニア級原子力潜水艦がオーストラリアに調達されることになっている。さらに英国で製造される新たな原潜SSN-AUKUSが2040年代始めにもオーストラリアに配備される。またオーストラリアも、米英の技術による原子力推進機関を用いて、SSN-AUKUSの建造を行う可能性を手にする。
AUKUSに加盟するため、オーストラリアはフランス政府系造船企業ナヴァル・グループとの間で締結していたディーゼル潜水艦開発契約を破棄した。この契約では潜水艦12隻を560億ユーロ(およそ8兆100億円)で開発することになっていた。
フランスはこのオーストラリアの契約破棄の通告を「裏切り」だとしつつも、新たな安全保障枠組みの発案者である米国を前に、露骨に不満を口にすることはなかった。
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なぜ豪州の人々はAUKUSの計画を歓迎しないのか

一方、オーストラリアの人々は自国での原子力潜水艦の配備に懸念を示している。ABCニュースは、多くのオーストラリア市民が、米国、英国とのこの契約はオーストラリアの主権を脅かす危険を孕んだものと考えていると伝えている。さらに、原潜が配備される沿岸部の港は敵からの攻撃の対象となり、貿易港は軍港へと姿を変え、さらに多くのオーストラリア市民からビジネスのチャンスを奪う。
加えて、オーストラリアは、いかにして原潜を管理するのかという問題に直面することになる。

核廃棄物、そして原潜の破棄をどうするのか

ABCニュースは、政府はこのことについてまったく言及していないことから、市民の懸念はますます深まっていると報じている。

AUKUSの計画に懸念するその他の国

予期せぬ裏切りで大規模な資金を失ったフランス以外に、アジア太平洋地域における新たな軍事同盟の創設に不満を表したのがインドネシアである。これより前にアジアニュースネットワークが報じたところによれば、インドネシア外相はオーストラリア外相に対し、オーストラリアはAUKUS内における自国の活動を透明なものにし、核不拡散条約を厳しく遵守すべきであると通告した。そうでなければ、中国と欧米の大国との競争は、明確な紛争へと発展し、地域のすべての国に影響を及ぼしかねない。
そしてロシアも、オーストラリアに原潜が配備されることにリスクを感じている。
ロシアのショイグ国防相は、米国が中距離核戦力全廃条約から離脱することについて、ロシアと中国が条約に反して長距離ミサイルの開発を行なっているとして、これに対抗する必要があるからだと説明したことを引き合いに出し、
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そして今、米国は中国海軍の増強に対抗するため、オーストラリアへの原潜配備を主張していると指摘した。
またショイグ国防相は、このような行動は、核不拡散条約の意味を失わせるものであり、新たな軍拡競争を引き起こすものだとの見解を明らかにした。

「世界的な基準から判断して、オーストラリアへの原潜の配備は、他の国々にも同じような兵器の開発を促すものとなるだろう。パンドラの箱は開かれ、世界的な核兵器開発競争が再び始まるだろう」

セルゲイ・ショイグ
ロシア国防相
この3カ国の枠組みに対して、中国が批判の声を上げているのも驚くべきことではない。中国は、このAUKUSという3カ国の協力は、中国に対抗するためのものであり、冷戦の名残であるとしている。
フォーリン・ポリシー紙は、これについて、中国政府は、オーストラリアのAUKUS加盟によって、オーストラリアは、3年にわたる貿易戦争の後、ようやく関係が改善され始めた中国との間で大きな問題を抱えることになる危険がある確信していると指摘している。
一方、中国もまた、AUKUS計画は、3カ国のさまざまな部門―情報収集や量子技術から極超音速兵器まで―の情報と技術の交換を見据えたもので、このことは地域情勢をさらに一触即発の情勢にするものであるとして警告を発している。
雑誌「国家防衛」の編集長で、「世界武器貿易分析センター」の所長であるイーゴリ・コロトチェンコ氏は、オーストラリアへの原潜の供給は、「世界最強の軍」を作るとの意向を表明している中国の抑止に向けたものであることは明らかであり、また最近中国が習近平国家主席の任期制限を撤廃する、すなわち中央軍事委員会主席としての任期も撤廃すると決定したことへの明確な対抗策であると述べている。

「このようにして、オーストラリアは韓国や日本と並んで、アジア太平洋地域における米国と英国の重要なパートナーとなります。つまり、これは中国に対する軍事作戦を行えるような完全な原潜艦隊創設への一歩なのです」。

コロトチェンコ氏
専門家
コロトチェンコ氏はまた、事実上これは、ニュージーランドなど他の国をも引き込んだアジア太平洋地域の「NATO化」であるとも述べている。一方、インドは今のところ、慎重な立場を示している。しかし、インドは中国との個別の問題を抱えており、中国との関係を悪化させることを望んではいない。

「地域における緊張が今後強まっていくかどうかを予測することはできません。というのも、オーストラリアへの原潜配備は2030年代以降に予定されているからです。しかも、これは核兵器ではなく、原子力潜水艦です。だから、オーストラリアは、2021年に普通の潜水艦の開発に関するフランスとの契約を破棄したのです。オーストラリアは、海洋進出を強める中国と太平洋を共有していることから、性能の高い潜水艦を必要としています。原子力潜水艦は、海上に数ヶ月間留まることができるため、豪州海軍にきわめて大きな戦略能力を与えることになります。さらに、オーストラリアは中国船の電子偵察を行うことができます。つまり、この計画は単なる原潜の配備ではなく、体系的な中国抑止になるのです」。

コロトチェンコ氏
専門家
コロトチェンコ氏は、しかし、決定はすでに下されており、地域の国々の反応は何の意味もなさないと指摘し、バイデン大統領とリシ・スナク英首相、アンソニー・アルバニージー豪首相による首脳会談はこの合意のための形式的な枠に過ぎないと述べている。
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